見出し画像

隠れ家の不良美少女 175 方向性

俺と新くん、そして友里香さんはマサキの会議室へ残った。
「友里香さんのご提案通りキナコちゃんとの年間CM契約をお願いしようと思うのですが、そうなると今後もしっかり続けていかなくてはなりません」新くんは重い口調で言った。
「ですよね、ファミリーマーケットさんともより連携を強め売上が伸びる方向を目指さなくてはいけないと思います」友里香さんは頷いた。

俺は少し考える。
「待ってください、あまり売上に特化してしまうと配信の魅力が薄くなるのでは…………」
「う〜ん、確かにそれもあると思うな」新くんも頷いた。

「ではファミリーマーケットさんにご協力いただき、月に一度はお弁当を企画して頂くのはどうでしょう?」友里香さんが提案する。
「それは良いかもしれませんね」
「やはり配信を見ている人が楽しくないと意味がない気がします」俺は補足した。

「配信だけに頼らず、キナコちゃんでCMを作りグッズなども企画して頂くと良いかもしれませんね」友里香さんも考えてくれているようだ。
「そうだね、マサキでもキナコちゃんでCMを作らせていただきたいと思ってます」
「ではそう言う方向で進めましょう」友里香さんはニッコリ微笑んだ。

友里香さんは新幹線で帰ったので俺は児玉へ戻ってくる。
「お帰りなさい友希さ〜ん」ゆるい笑顔が迎えてくれた。
「ただいま」俺は希和の頭を撫でる。
「ねえ、ギター随分弾けるようになったの、見て?」
「ああ、いいよ」二人でピアノのある部屋へ向かう。

希美子さんからライブのために立って練習するように言われている。
希和はギターを弾き出す。
コードを弾きながら歌えるようになっていた。
『ジャラ〜ン♪・・・♪』
「いいねえ、上手くなったなあ」俺は嬉しくなってくる。
そこへ希美子さんが帰ってきた。
「希和、上手くなったけどカッコ悪いよ」首をかしげる。
「えっ、そうなの?」
「ギターに持たれている感じ……かな……」

「どうしたらいいの?」
「もっとギターを下げたら良いんじゃない?」
「えっ、弾き難いよ」
「じゃあ自分が弾いてるとこを窓に映して見てみなさいよ」
「わかった、見てみる」
希和は窓に映る自分の姿を確認する。
「そうだね、いまいちカッコ良くないね」少し笑った。

「海外でも有名なギタリストはギターを下げて弾くんだよね」俺も思い出した。
「じゃあやってみる」希和はストラップを調整しギターを下げて持ってみる。
「これくらいが見た目は良いけど、すごく弾き難い」眉を寄せた。
「でも、ライブで見せるんだったら、やはりカッコ良くないとね」希美子さんは頷く。
「わかった、これでまた練習する」希和は下げたギターを弾き始める。
希美子さんはニッコリした。
さすがにプロ意識が高い、俺は改めて希美子さんの大きな存在感に頷いた。

希和は練習が終わるとお酒を用意してくれた。
希美子さんと乾杯する。
「希和も曲作りに挑戦してみたら」希美子さんがポツリと呟く。
「私曲作りとかやったことないし、わかんないよ」
希和はお菓子を食べながら明後日の方を見ている。
「そうだ、明日のレッスンの時千草さんに聞いてみたら?」俺は希和に提案してみる。
「そっか、千草さんに聞いてみる」希和は頷いた。

寝る前、希和はいつものように抱きついてくると「私もお父さんみたいに曲が作れたら良いなあ」そう漏らした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?