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隠れ家の不良美少女 75 歩き出したキナコ

SONEレコードの会議室へ希和と奏太くんも一緒に来ている。
「初めまして、相沢希和子です」緊張しながら挨拶した。
「初めまして、担当させていただく長谷川です」優しく微笑んでくれた。
「あのう……父や母をご存知なんですか?」
「はい、私はロブスターズの担当でしたからね」
「そうですか……」
「確かに希美子さんの若い頃に似てますね、それに歌う時の表情は和也君にも似ているなあ」長谷川さんは頷く。
「そうなんですか?」希和は少し不思議そうな表情だ。
「これからよろしくお願いしますね」長谷川さんは希和と握手する。
「はい、よろしくお願いします」希和はペコリと頭を下げ微笑んだ。

「早速ですが、キナコさんの『ラプソディを君に』を新しいアレンジで録音させていただき、SONEレコードから配信させて頂こうと思うのですが」
長谷川さんは仕事の顔になる。
「はい、それは賛成です、前の録音はやはり素人ですから、しっかりとしたものが良いと思います」俺も頷く。
「私のブレーンに良いアレンジャーがおりますので、任せていただいてもよろしいですか?」
「是非よろしくお願いします」
「同時にあのMDに残っていた曲もアレンジしましょう」
MDの2曲をデータにして先に送っていたので、長谷川さんも聞いてくれていた。
「実に良い曲ですね、出来上がりが楽しみです」
「そうですね、今和也さんが作ってくれている曲も合わせると4曲になりますので、それと写真集を合わせてパッケージという事に考えているんですが、いかがでしょうか?」俺は提案してみる。
「良いと思います、『ラプソディを君に』の配信を始めるときに、是非ミニアルバムの告知をしたいですね」長谷川さんは直ぐにプランを考えてくれた。
「友人にカメラマンの山岸さんがいます、彼に写真をお願いしようと思うのですが」
「では、写真集は一瀬さんが手配して頂けるという事で宜しいですね」
「はい、どんな感じのプランになるかは、撮影の前に長谷川さんに確認します」
「そうして頂けると助かります」

「それから、配信が始まったら各地のコスプレイベントで宣伝しようと思うんですが、いかがでしょうか?」
「はい、願ったり叶ったりで助かります」長谷川さんは何度も頷く。
「ではこれからよろしくお願いします」
3人はSONEレコードを後にした。

そのまま小宮さんのオフィスへ立ち寄る。
「お疲れ様です小宮さん」
「お疲れ様」にっこり迎えてくれる。
「すみません、たっぷり休ませていただいて」俺は頭をかく。
「キナコちゃんが可愛いから許しちゃうよ」笑っている。
未来ちゃんがコーヒーをいれてくれた。
「友希さんはもう売れっ子プロデューサーだから、忙しいんですよね」皮肉を言って笑っている。
「ドームのイベントは当分先だから、しばらくはキナコちゃんの方を頑張ってよ」
「有難うございます、すみませんワガママを通していただいて」恐縮して頭をさげる。

「奏太さん、今日はこの後時間は無いんですか?」未来ちゃんが突然聞いてくる。
奏太くんは俺を見た、少し目が泳いでいる。
「ん……?」
「二人でデートですか?」希和が聞く。
「だって、友希さんにはキナコちゃんがいるから……」口を尖らせる。
「友希さん振られちゃった」希和が笑った。
「希和、俺たちは邪魔みたいだから帰るか」
「うん」
希和と二人所沢へ向かった。

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