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隠れ家の不良美少女 53 水の妖精

翌日は水の生まれる場所で撮影した。
明くんと優斗くんはレフ板を持ってサポートしている。
俺は音楽プレイヤーできのう録音したキナコの歌を流す。
奏太くんは一眼レフカメラで動画を撮っている。
美奈さんや詩織さんもメイクの道具を持ってサポートしてくれた。
新くんはニコニコと見守っている。

希和はイベントで着たレースのマントを羽織っている。
今回の撮影用にキラキラと光るビーズなどが散りばめてあり、とても綺麗だ。
「さすが希美子さん」俺は独り言を漏らす。
曲が間奏になると、キナコは水の中に入って行く。
そしてカメラの方を向くと、最後のサビを両手を広げ歌いきった。
そしてアウトロでは開いた手を胸の辺りで組んで、祈るようなポーズになり目を閉じる。
取り囲んだ樹々の隙間から陽の光が差し込みキナコを照らす。
衣装はキラキラと輝き、まるで水の妖精が現れたような錯覚を起こした。

「キター!!!奏太くんはあまりの映像の美しさに思わず声を漏らす。
俺も奇跡が起きたように感じた。
『キナコ』は何か強いものを持っている様な気がする。

撮影は無事終了して、天空カフェに集まる。
「いやあ〜最高の絵が撮れましたよ」奏太くんは嬉しそうだ。
「希和ちゃん可愛かったねえ」新くんも喜んでいる。
希和は「自分にご褒美」と言ってデザートを食べている。
みんなでコーヒーを飲んで解散した。
奏太くんは「早速編集に取り掛かります」そう言って帰って行った。

希和とガレージハウスに戻って来る。
「希和よく頑張ったな、とっても可愛かった、水の妖精に見えたぞ」
「本当?嬉しい、私は思いが友希さんに届く様にって歌ったの」ニッコリした。
「そうなのか?」
「うん、届いた?」
「………………」
「友希さん、ずっとそばにいてね」
「……ああ」

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