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隠れ家の不良美少女 52 プロデューサー

夜は天空カフェからちまきを買ってきてみんなで食べた。
その後は結局飲み会になってしまう。
「友希さん、実は相談が有るんです」美奈さんが少し眉を寄せ俺をみる。
「俺でできる事なら……」
「実は、サークルの会員が三十人程になってしまったんです、勿論キナコちゃんに会いたいだけみたいな人は除いて、しっかりした子だけ入れたんですけど……」
「そうなんですか、運営は大変になって来ますね」
「そうなんです、今は優斗くんがメールなどの対応とかやってくれるので助かってはいますが、雑誌やイベントの対応で大変なんです、もしこれにキナコちゃんの歌に関する事までマネージメントするとなると難しいですよね」唇に力が入っている。
「そうですか……」俺は少し考えた。
「一瀬さん、いや友希さん!」奏太くんが身を乗り出して来る。
「何?どうしたの?」
「歌に関してのマネージメントは俺にやらせて下さい!」
「ああ、なるほど……」俺は頷く。
「コスプレはこれまで通りで、歌については俺の会社ウイングで、そして総合プロデューサーは友希さんという事でどうですか?」
「えっ?俺がプロデューサー?」俺は少し苦笑いする。
「だって、友希さんはプリンちゃんやキナコちゃんを人気者にしたセンスの持ち主ですよ」奏太くんが真剣な目で見てくる。
「そうよね、友希さんはイベントプロデューサーだしね」美奈さんも納得している。
突然未来ちゃんが身を乗り出して来た。
「先輩!大学の卒論は、『イベントにおける人の心理と効果』でしたよね、だから人がどう思うかがわかるんですよね」
「「「そうなんだ」」」みんな納得している。
「何で知ってるんだよ」
「小宮さんから聞きました」
「…………」
「希和はどう思うんだ?」
「私は新さんから友希さんがプロデューサーだって言われてたから、初めからそう思って来たけど」ちまきを食べながら言った。
「じゃあ、決まりですね」奏太くんは嬉しそうにキナコと握手して「よろしく」と言った。
希和は「えへへ、よろしくお願いします」ペコリと頭を下げた。
「兄貴!プロデューサーとかカッコいいですね」不良くんは嬉しそうにしている。
「だから、兄貴はやめろって……」
「兄貴こそ、もう不良くんはやめて下さいよ、俺には明って名前が有るんですから」口をへの字にしている。
「えっ?アキラって言うんだ」俺は瞬きする。
「明、ほらプロデューサーさんにビールを勧めてよ」詩織さんに怒られている。
「はい!兄貴どうぞ」缶ビールを差し出す。
「だから……兄貴って……」

じゃあまた明日よろしくお願いします、奏太くんと未来ちゃんは帰って行く。
美奈さん達も「また明日」そう言って帰って行った。

「希和は帰らないのか?」
「だって土曜はお泊まりだもん」いつものゆるい笑顔だ。

さっさとパジャマに着替えて寄り添ってきた。
「ねえ友希さん、希和が水着になるのを反対したのは結果や効果を考えたの?」
「ああ、水着になったら一瞬はファンが増えるかもしれないが、その後もっと刺激的な事を望むようになってしまうだろう?」
「そうかも……」
「そうしたら、キナコのイメージが安っぽくなってしまう、つまり後に来る仕事の質が落ちてくるのさ」
「そうなんだ……でも新さんは水着は可愛いかもって言ってたよ?」
「新くんが本気で言ってると思ってるのか?」
「違うの?」
「彼は動物行動学を勉強した人で、俺よりさらに人の行動が分かる人だぞ」
「そうなんだ……」
「初めに希和を何とかしてあげようと言ったのも新くんだし、お母さんと話せるようにってコスプレを進めてくれたのも新くんだよ」
「そうだね、感謝してるよ」
「彼は俺より器が大きいのさ」
「だから綾乃さんが好きになったのね」
「そうかもな……」
「人には、見えなくても大切な事があるんだよ」
「希和は分かんないから友希さんから離れないよ」少し笑った。
「そうだな……しばらくはその方が安全かもな……」
「希和はちっちゃいから友希さんの器が小さくても中に入れるよ」また笑った。
「意味わかんない」俺は苦笑いした。

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