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隠れ家の不良美少女 56 しゃぶしゃぶ

レッスンが終わってガレージハウスへ戻って来た。
「希和、お母さんに電話しな」
「うん、なんて言ったらいいの?」
「明日一緒にご飯が食べたいから時間が取れないかって」
「うん、分かった」

「もしもし、お母さん、友希さんが明日一緒にご飯を食べようって」
「うん……」
「うん……」
「うん言っとく」
「じゃあね」

「夕方から大丈夫だから一緒にしゃぶしゃぶに行こうって」
「しゃぶしゃぶ?」
「うん、お母さんとたまの贅沢はしゃぶしゃぶなの、安いお店だけどね」笑った。
俺は母と娘で慎ましく暮らして来た事を感じて少し目が潤んだ。

希和は高卒認定の勉強を始める。
俺はマイペースな希和が少し可笑しくなって息を漏らした。
「どうしたの友希さん?」
「今、動画で話題になってるキナコが、地味に高卒認定の勉強をやってると思ったら少し可笑しくなっただけさ」
「だって(仮)を外してくれないから……」口を尖らせる。
「ああ、外してやるもんか」俺は笑った。
心の中ではとっくに外れているが、当分言わない事にしようと思う。

ソファーベッドの横に布団を敷いて寝ている希和は「お父さん……」小さな寝言を漏らす。顔を見ると涙が見える。
俺は抱きしめたい衝動を堪えた。

翌日レストランに来ていた。
希和と希美子さんは嬉しそうにしている。
「友希さん、ここは食べ放題だから頑張ってね」希和はニッコリした。
「そんなに沢山は食べれないぞ」
「だって希和とお母さんじゃあ食べ放題って言っても男の人一人分くらいしか食べられないから、いつも悔しいねって言ってたの」
「そうね、お店の人から『もう良いんですか?』ってよく言われたわね」希美子さんも笑った。
その話を聞いた俺は胸が痛くなってしまう、これじゃあ余計に食べれなくなってしまう。

「友希さん、本当にありがとうございます」
「えっ?」
「希和がコスプレを始めたことで、仕事が増えたし希和から衣装代も受け取りました」
「だってお母さんが作ってくれたんだから当然じゃん」
「まだ衣装代が安過ぎるくらいですよ」
「ありがとう、それにコスプレサークルの子達が洋裁教室にも来てくれてとても忙しいんです」嬉しそうだ。
「そうなんですか」
「今教室は詩織ちゃんが手伝ってくれてるんですよ」
「えっ?そうなのお母さん」
「あら、言ってなかったっけ?」
「うん、聞いてないよ」
「それにまた関東衣装からも仕事の依頼があって、サークルの優秀な子達に手伝って貰ってるの」
「そうなんだ、希和も少しは役に立ったんだね」嬉しそうに笑った。
「そうですか」俺も嬉しくなった。

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