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Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第68話 これって?

 そいとげの喫茶コーナーは水曜と木曜が休みになったので、水木は茉白ちゃんが図書館へ来てくれる。奈津美ちゃんと伊里亜ちゃんもすっかり打ち解けて名前で呼び合うようになっている。二人は水木以外頑張って作業をこなし、茉白ちゃんがくるとニヤニヤしながら早めに帰っていく。僕は少し居心地が悪くなっている。

今日は水曜だが、茉白ちゃんは用事があるみたいで「ごめんね」そう言って帰って行く。しばらくすると赤松部長がニコニコと入って来た。

「どうかねヤホー君、図書館の運営は?」

 起立して頭を下げる。

「おかげさまで何とか無事に運営できてます」

「そうか、それは何よりだ」

 僕はずっと気になっていた事を聞いてみた。

「あのう………茉白ちゃんの誕生日ってご存知ですか?」

「勿論だよ………てか聞いてなかったんだ、やっぱり」

「はい………なんか………」

「茉白に教えたのって聞いたら、なんか催促してるみたいで言いづらいって言ってたけど、やっぱりか」

「そうなんですか………」

「しっかりしなよヤホー!」

「すみません、頼りなくて」

「茉白の誕生日は8月2日、ハニーって覚えたら良いよ」

「そんな覚え方じゃなくても忘れませんよ」少し笑ってしまった。

「そうだ、8月1日2日は予定を空けといてね、茉白の誕生パーティするから」

「えっ………2日間ですか?」

「ん………2日じゃ短いって?」

「は………」

「しっかり空けといてよ!」佳さんは部長にならずいそいそと帰って行った。

 帰り道で考えた、8月2日か………どんなプレゼントだったら喜んでくれるかなあ………。

 木曜日図書館で作業をしていたが、奈津美ちゃんと伊里亜ちゃんはまたニヤニヤと帰って行った。

「なんか気を使われているみたいで居心地悪いなあ………」

「もしかして、佳ちゃんが何か言ったのかしら」

「赤松部長は茉白ちゃんを転勤させて申し訳ないって言ってたから、気をつかってるかも知れないなあ」

「そんな事言ってたの?一年生とか巻き込んじゃいけないのに………」眉を細めった。

「そうだね………」

 二人でメンテ室へ入り軽くキスを交わす。茉白ちゃんはメンテの道具が並んでる棚にホコリがあるのを気がついて掃除を始めた。僕も水回りを掃除することにして雑巾で拭き始める。

「え………」茉白ちゃんは何か見つけたようだが、後ろに隠して僕を見た。

「星七君………気分悪くしないで聞いて………」

「ん………何を?」

「もしかして………もしかしてだけど………やっぱり無理だ………」俯いた。

「何?どうしたの茉白ちゃん、そんなのメチャメチャ気になるじゃん、言ってよ!」

「怒らないで聞いてくれる?」

「うん、絶対に怒らない、大丈夫だから」

茉白ちゃんはボソボソと言葉を漏らす。

「もしかして………我慢してるの?」

「ん………何を?」

「え………え………Hなこと………」頬があからんでいる。

「へ………」僕は茉白ちゃんから出た言葉だと思えず、返事が出来ない。

「だって………これ………」茉白ちゃんは後ろに隠していた物をそっと差し出した。

「何それ?」僕はじっと見て分かった、避妊具が入った小さな箱だ。

「後ろの棚に隠してあったから………ごめんね見つけちゃって」

「ふふふ………ふっふっふっ………」僕は必死に笑いを堪えた。

「何で笑うの?」茉白ちゃんは不思議そうな顔で僕を見ている。

「それは僕が置いたんじゃないよ」笑いが収まらない。

「じゃあ誰が置いたの?」瞬きしている。

僕も不思議になって笑いがスッと消えた。

「そうだね、誰が置いたんだろう?」

二人で顔を見合わせて考えた。

「雪村先輩かなあ………でもそれは考えにくいなあ」

「そうだよねえ、凄く真面目な人だし」

しばらく考えたが答えは出そうになかった。

「なんか、気持ち悪いし捨てるよ?」

「うん」

「佳ちゃんが言ってたけど………男の人って我慢できないんでしょう?」

「そんな男ばっかりじゃないよ」

「そうなの?」

「茉白ちゃんは可愛いし、胸も豊かだし、Hしたくないわけじゃない、いや本当はしたいと思ってるけど、今はこの状態でとっても幸せだから………」

「佳ちゃんが言ってた、Hな事が好きな女の子もいるから星七君を取られないようにって………」

「茉白ちゃん、そんな心配はいらないよ、安心して」

「うん」やっといつもの茉白ちゃんに戻った。

「赤松部長は爛れた関係が好きだからなあ………」

「佳ちゃんは冗談で私の胸を触って『こうしてほしいんだろう?』って言うよ」

「えっ!赤松部長はセクハラもしてたのか………ちょっと羨ましいけど………」

二人は顔を見合わせて少し笑った。

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