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隠れ家の不良美少女 21 希和の母

「初めまして、希和の母です」深々とお辞儀をされた。
「初めまして、一瀬です」俺も頭を下げる。
「希和を助けて頂いて心から感謝しています、お陰で不良にならずに済みそうです」少し微笑む。
「えっ?母さん、私が高校を辞めた理由を知ってるの?」
「この前優斗くんが謝りに来て話してくれたわ」
「うそ!…………」
「不良の子も真面目になったらしいわよ」
「一瀬さん、希和も高卒認定を受けようとしていますし、前を向いてくれて嬉しく思ってます」
「いえ、俺は大した事はしていません」頭をポリポリとかく。
「嵐の夜もご迷惑をおかけしました」
「いえ、当然のことをしただけですから」
「希和はまだ世間も何も知りません、失礼も多々あったと思います、本当に有難うございました」

「あのう……天空カフェに新君という俺と同じ九州出身の友達がいるんです、彼が希和ちゃんのことをすごく心配してたんです、だから彼の力が大きいです」
「そうなんですか、二人の九州の人に助けられたんですね…………」感慨深げな表情だ。

「せめてお茶でも……」そう言ってお茶を出してくれた。
「お母さん、友希さんが剣と盾を作ってくれるんだって」嬉しそうに話している。
「そうですか、助かります、衣装はどうにかなりますが……小道具の方は私には無理ですので」
「母さん、これ見て」希和は俺の描いたサイズの入ったメモを見せた。
「あら………サイズ感までしっかり考えて頂いてるんですね」じっくりと見ている。
「今からアクリル板やアルミなどの材料を買いに行ってきます」
「すみません、費用は請求してくださいね」
「大丈夫だよ、天空カフェのバイト代から私が出すから」
「大丈夫です、俺も楽しみでやってますから」
「お世話になります」申し訳なさそうに微笑んだ。
「じゃあお母さん行ってくるね」
「有難うございます」希和のお母さんはまた深々と頭を下げた。

「いいお母さんだな」
「うん、最近お母さんの凄いところが分かって嬉しい」
「新くんのおかげだな」
「うん、新さんと綾乃さん、そして友希さんが希和を守ってくれたからだよ」
「お母さんを大事にするんだぞ」
「うん、分かってるって」

「お前、九州と何か関係があるのか?」
「別に……何も無いと思うけど……」
「お前んちで流れていたBGMは聞き覚えがあるんだけどな」
「そうなの?、お母さんはアバとロブスターズが好きなんだ」
「えっ……ロブスターズ?」
「うん、メンバーと写った写真がうちにあるけど……そうか!ただファンなのかと思ってたけど、きっと衣装を作ったんだ」
「そうかも知れないな…………」

ホームセンターで必要な物を買って天空カフェへ戻る。
希和の家で流れていた「ラプソディを君に」を思い出して涙がポトリと落ちた。
ある人のことがふっと思い出された。
「あれ?友希さんどうしたの?涙が………」
「コンタクトにゴミが入ったみたいでな」俺は涙を拭いた。
「そうなの?大丈夫?」心配そうに希和が見つめる。
「大丈夫さ……」

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