見出し画像

ドローンの本来の意味

「ドローン」という名称の由来は諸説ある。

ドローン=オスバチから、マルチコプターの出すブンブン音に似ているからという説。また、かつて女王バチと名付けられた攻撃機と対照的に、役立たたず標的機がオスバチと名付けられた説、などなど。

ただ、これらは後付けの名称であり表層に過ぎないと考えている。

マルチコプターの登場以前にも、ドローンという言葉は使われていた。スタートレックシリーズでは、機械と肉体が融合した生命体であるボーグの個体がドローンと呼ばれている。30年以上も前からだ。ボーグのドローンは肉体と機械が融合した形をしている。

また、約半世紀も前に書かれたジェームス・ホーガンのSF小説の中では、ドローン=人工知能のリアル世界におけるアバターという表現がされている。「未来の二つの顔」という代表作を読んでみて欲しい。この小説中では人工知能がコントロールするコーヒーポットですらドローンと呼ばれている。

実は、ブンブンと空をとぶあのマルチコプターは、ドローンという存在とその大いなる可能性の表層しか表していない。思えば、どれだけ矮小化され、その可能性は表層だけで見られてしまっているのだろうか。

アイ・ロボティクスの社内で話すときのドローンは、むしろスタートレックやJ.ホーガンの意味でしか話されていない。つまり、人工知能のサイバー世界とリアルなフィジカル世界の界面に存在し両世界をつなぐ存在、我々は徹頭徹尾これをドローンと呼んできた。

アイ・ロボティクスはドローンを扱う会社である。ただ、そのドローンは、メディアのいうドローンとは意味が違うという点をうまく説明できていなかったと反省しているし、もしかすると目指す世界観も理解もされてこなかったのだと反省中。

アイ・ロボティクスが目指すのはサイバー・フィジカルな世界だ。こんなことを言うとちょっと前までは白い目をされた。本当に。でも今、人々の意識が変わっているのを感じる。だから改めて声を大にして言うべき時なのだろう。

現実世界の産業基盤はサイバー世界に再現され、ダイナミックなデータをリアルタイムで取得し、サイバー世界でシミュレーションして、現実世界にフィードバックして干渉する。その干渉するためのツールも含めてドローンなのだ。

今のドローンはダイナミックなデータを取得するには最適なツールだし、優秀なツールだ。現実世界をモニターしてそれをサイバー世界に再現するには絶対に必要な要素。だが、それは全体の一部としてピースの欠片を埋めるに過ぎない。

サイバー世界をより完璧なものにするためには、スマホやドローンや固定型カメラや自動車や衛星などの現実世界にあるあらゆるデバイスを駆使する必要がある。そして、そこに搭載されたカメラやセンサーから上がってくるデータ、これをダイナミックにサイバー世界に反映させていかなければいけない。

アイ・ロボティクスはドローンを扱うがドローンだけを開発する会社でも運用する会社ではない。ドローンの運用そのものにもあまり興味がない。なぜなら、我々の目的はサイバーとフィジカルが融合することでありドローンはそのツールの一つに過ぎない。

一方で、ドローンは新しいモノであるがゆえに現場のプロセスに入り込むために使うのには一番有効だ。将来にわたって、それ以上の可能性があるかというと、我々の目指す世界はドローン単体では到底なしえない。だから我々はそこには固執もしないだろう。

そして、サイバー世界は現実世界にフィードバックされなければいけない。サイバー世界の影響により、我々は今までとは違う「進化のスピード」を手にすることになる。この進化は人類を次のステージへと押し上げる。それができる時代が視野に入ってきた。

ところで、サイバー世界とフィジカル世界の界面にいるドローンができるようにならなければいけないことがある。それは人工知能の指令を受けて、物理的な世界に影響を及ぼすこと。三次元の物理世界に対して、自由自在に移動し物を動かし作業をする。これが出来なくてはアイ・ロボティクスの世界観は実現しない。

だから、アイ・ロボティクスとしては、ドローンに限らず三次元空間で動けるロボットは一様にターゲットとなる。それが空を飛ぶモノであれ、3Dプリンターであれ、ロボットアームであれ、自在に動き、人間と共同する。そのような複合世界を作ることが我々の目標だ。

我々は三次元空間での物理作業に固執してる。ドローンで撮影を行うだけではだめ。ちゃんと現実の世界に影響を与えることができるロボットになることを目指して開発を続ける。じゃないと我々の世界観が実現できない。

ドローン・ファンドをはじめ一部の人たちは「ドローン前提社会」を掲げる。これには100%賛同する一方で、裏側でとらえているニュアンスは人によって大きく違う可能性があると思い至った。

ドローンがぶんぶん飛び回っている世界、これはアイ・ロボティクスがコミットしているサイバー・フィジカルな世界、人工知能前提社会にとっては一部分でしかないし、自然と訪れる社会でしかない。私はドローンが飛んでる社会を実現するんじゃなくて、サイバー・フィジカルな世界をいち早く実現したい。

世界は加速している。アイ・ロボティクスはこのサイバー・フィジカルな世界ができるのを待つこととはせず、自分たちで加速させると決めた。シンギュラリティを起こすのは人類自身だからこそ、その時に中心に居たいと思う人間がここにはいる。

だから、アイ・ロボティクスの「アイ」には非常に複合的な意味がある。アイロボは表面的なドローンのサービス会社ではないし、そのためのツールを作る会社でもない。もっと本質的な未来に照準を合わせていると言える。

その過程は今までも紆余曲折だったし実のところまだ全然よくわからない。だが、我々の北極星は1ミリも動いてない。

ポイントは、今がすごいのではなく、これから世界が加速し、技術はコンバージェンスしていくという現実。これを見失わずに突き進む。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?