負け方の流儀、勝ち方の流儀

勝負事に携わる大半の人間にとって、敗北は避けがたいものです。

めざましい快進撃を継続中の藤井聡太棋聖も今期既に3敗を記録、勝率は.850です。
シーズン24勝0敗1Sを記録した2013年の田中将大投手ですら、日本シリーズでは1敗を喫しています。

圧倒的な実力を有していても、負け知らずという訳にはなかなかいきません。
平凡な実力に留まる僕のような人間は言わずもがな。
勝負の半分は常に敗北で出来ているのです。

人生に待ち構えるあらゆる勝負を快適に戦うためには、敗北と勝利に対する心構えが必須となります。
我々は常に勝者にも敗者にもなり得るのですから、どちらの立場に立っても相手を不快にさせない事は当然のマナーですし、両者の性質を理解する試みこそが勝負への真摯さを生みます。

負け方の流儀

はじめに例外の話をしましょう。

本項の内容は全ての敗北に適用されるものではありません。
「合意の下で、競技性があり、リベンジ可能」な勝負についての話ですので「強制的で、結果ありきで、取り返しのつかない」ものは除外されます。

世間では勘違いされている例が多いですが、そんなものは本来勝負ではありません。
端的に言えば「彼女を寝とった男は殺していい」ということですね。

上記の条件に該当する勝負で負けた場合、意識すべきことはたった一つ。

前提条件を覆さない

ちゃぶ台返しする奴とは飯を食いたくない。
単純な話ですね。

しかしこれを完全に遵守するのは結構大変。
拗ねたりキレたりして「合意状態」を解消するのは勿論論外としても、「敗北濃厚な状況でも最後まで勝利を目指す」「敗北の原因を自責的に分析する」等の姿勢を取らなければ競技性を損ないます。
運要素の大きい勝負で逐一自分を責める必要はないですが、反省点を見つけるに越した事はありません。

だからと言って「感情を押し殺す」のも良くありません。敗北が悔しいのは真剣勝負の証ですから、むしろ存分に悔しがるべきです。

ただ感情の表現方法はよく気をつけるべきでしょうね。
「悔しいなあ」と「腹立つなあ」と「ムカつくなあ」ではそれぞれ受け取られ方が全く違いますので。
ここも自責的思考が要求されるところです。

特に、勝負そのものよりコミュニケーションツールとしての役割が大きいゲーム等では、感情表現を上手く行うことこそが肝になると思います。

時には「運だけで勝ちやがったなこの野郎!」ぐらい言った方がいい場合すらあります。
結局は人と人とのやり取りなので、勝負の過程や結果を蔑ろにさえしなければ後はその場の空気感ありきです。

何にしても最も大事なのは「終始真剣に戦い、結果を受け入れる」ことです。
多少荒っぽい反応でも、この精神が伝わっていれば咎める人はそういないと思います。

勝ち方の流儀

勝者の振る舞いは非常に簡単。

勝利を喜ぶことです。

変に斜に構えたり、或いは敗者ありきの反応をしたりせず、素直に勝った事実のみを喜ぶべきです。

無理に謙遜することはあまり望ましくありません。
勝者が謙遜することは敗者の立場を更に低下させる行為です。
「お前も凄かった、その凄いお前に勝った俺はもっと凄かった!」
というのが理想的姿勢ですね。

時にはどう考えても運だけで舞い込んだ勝利もあるので、そういう時くらいは謙遜しても良いかもしれませんが、「運も実力のうちだからな」ぐらい言っても反感は買わないと思います。

絶対やってはいけないのは「敗者に気を遣う」行為。
無理に褒めたり慰めたりしても、敗者からすれば腹立たしいだけです。
素直に感心した点は褒めれば良いですが、勝者が勝ち敗者が負けた事実は何をしても変わりません。
勝者は勝者で、相手に敗北を押し付けた負い目を受け入れるべきなのです。

ただし長々と勝者自慢をしてもそれはそれで鬱陶しいので、喜ぶのも良い塩梅で切り上げるべきでしょう。
感想戦も敗者が望んだ時のみ行い、その際も極力客観的視点で語るようにしましょう。


勝負に真摯であることとは、勝負に没入することです。
勝利だけを見据えていれば邪な発想が生まれる余地などありません。
偉そうに色々書きましたが、真剣かつ楽しくやっていれば大体正しい反応になるはずです。

あなたと一戦交える日を心待ちにしています。

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