北海道一周秘境駅めぐり② 糠南駅
こちらの記事の続きです。
宗谷北線を進む
抜海駅訪問から一夜明け、8月10日。この日は稚内駅から旅をスタートしました。
稚内から出る始発列車には、思ったより多くの人が乗り込んでいました。
時期から言って、ほとんどが同業者だったのでしょう。車内は得もいわれぬ熱気に包まれていました。
車内の異様な熱気をよそに、列車は荒涼とした原野を駆け抜けていきます。
このあたりは米はおろか野菜も育ちにくく、農業がほとんどできません。
そのため土地が空いていたとて田畑にすることができないため、原野が原野のまま残されているのです。
世に秘境路線は数あれど、車窓に広がっているのが田畑でも森林でもなく原野ばかりなのは、ここ宗谷北線だけでしょう。
糠南駅
さて、稚内から1時間ほど乗車し、列車は糠南駅に到着しました。
原野の只中に小さな板張りホームがあり、駅舎としてヨド物置が置かれている。ただそれだけの駅です。
しかし、なんて開放的な駅でしょうか。小幌駅や小和田駅、男鹿高原駅などハイレベルな秘境駅に多数訪問してきましたが、大抵は深い山の中にあります。こんな爽やかな秘境駅には降りたことがない。
この駅で降りたのは2名。自分と、昨日抜海駅で会ったお兄さんです。
静かに過ごしたいのはお互い暗黙のうちに理解しているため「何かあったらよろしくお願いします」とだけ挨拶を交わし、自分は駅の横を通る砂利道を歩き始めました。
駅周辺を歩く
少し歩くと土手に出ました。流れている川は上ヌカナン川といい、すでに住所表記からはなくなっている「ヌカナン」の名前を残しています。
アザミが本当にきれいに咲いていました。
足元のカタツムリに注意しながらアザミ畑を歩いていくと、道が右に分かれている部分を見付けました。Googleマップには載っていない道ですが、どうやらここから駅前に戻れそうな雰囲気です。
道があるとはいえ、夏の北海道で行き先の分からない林を進むのははっきり言って危険なのですが、好奇心が勝ってしまいました。
もともと付けていた熊鈴に加えてラジオを流しながら、ぬかるんだ小道を進んでいきます。手入れなどされているわけがなく、オオハンゴンソウが生え放題になっていました。
雑木林の中をしばらく進むと、少し開けた場所にでました。
なんとそこには廃牧場と家屋が。
家屋は現住建造物のようで、現役で使われていそうな自動車が停めてありました。
糠南駅に生活利用者がいるとすればここに住んでいる方以外にはありえないのですが、まあこのクルマが生活の足なのでしょう。
だとすれば糠南駅は役割を終えているので、とっくに廃止になっていてもおかしくありません。しかし、立地がここまでトガっていると逆に魅力が生まれてしまい、旅人がやってくるので残っているのが面白いところです。
こんな秘境に誰もが安いお金で簡単に来られるのは、鉄道ならではでしょうね。
さて、道を歩き続けるとやはり駅前に到着しました。
先ほど一緒に降りたお兄さんはどこかに行ってしまっていました。糠南駅を独り占めです。
板張りのホームに腰掛け、風を感じながらゆっくりと駅ノートを記入します。この静かな時間こそが秘境駅の醍醐味なのです。
糠南クリパの置き土産
駅ノートを取り出すために物置駅舎の扉を開けてみると、サンタ帽が安置してあってニヤリとしました。
なぜサンタ帽があるかといえば、この糠南駅で毎年クリスマスパーティが開催されているからなのです。
クリスマスの道北・時間は早朝・そして遮蔽物が一切ないこの駅、ということで凄まじい寒さであるのは想像に難くないのですが、毎年数十人規模が集まる隠れた名物イベントになっているのです。
秘境駅を巡る同好の士が大量に集まるイベントなんて他にないので、自分もいつかは参加してみたいです。しかし、クリスマスの時期に家を離れるのは難しいだろうなあ。
クリパには参加できないので、一人でささやかなパーティ(?)をしました。セコマ名物、ようかんツイスト。これ美味い。
さよなら糠南駅
腹ごしらえが済んだところで、そろそろ糠南駅を去ることにしました。
周辺をぐるりと一回りし、物置駅舎をじっくり観察し、駅を独り占めして美味しいものを食べ……満喫しました。
次の列車まであと1時間あるので、隣の駅も見に行くことにしたのです。
踏切をわたり、問寒別方面を目指して歩き始めました。
糠南駅、本当に良い秘境駅でした。もしかしたら、これまで訪問した中で一番好きかもしれない。
名残惜しくて歩きながら何度か振り返りましたが、小さな駅なのですぐに見えなくなってしまいました。
抜海駅と違ってこの駅はまだ廃止にはならないので、また来ますかね。
次は問寒別駅を経由して、雄信内駅を目指します。
(追記)続きです。