惑星HD 183579 bの発見

太陽系外惑星惑星HD 183579 bの存在を確認したという研究がarXivに掲載されている(https://arxiv.org/abs/2101.12137)。この天体は、NASAの系外惑星観測衛星「TESS」の観測で惑星候補天体「TOI-1055.01」として既に検出されていたが、惑星かどうかは未確認だった。

今回の研究は、TESSが検出した惑星候補のうち18個をターゲットとし、新規観測を行わず、過去の観測記録のみを使用して惑星の存在を確認するというコンセプトで行われた。18個のターゲットのうち、HD 183579 b でのみ信頼に足り得る結果が得られ、確認(validate)された惑星候補として公表された。

惑星 HD 183579 b(別名:TOI-1055b)は、主恒星HD 183579の周囲を半径0.133天文単位(※1天文単位=地球と太陽の距離)の円軌道で17.47日周期で公転している。惑星のサイズ(半径)は地球の3.6倍、質量は20倍だ。このサイズと半径は太陽系で言えば海王星に近い。平均密度が地球の約半分と低いため、岩石惑星ではなく、水素・ヘリウムなどの低密度の物質を含んでいるとみられる。

主恒星の HD 183579 はソーラーツイン(=太陽と特に類似性の高い恒星)の1つとして以前から知られている。質量は太陽の1.03倍、半径は0.99倍、有効温度は5790ケルビン(太陽は5780ケルビン)で、元素組成も太陽とほぼ同じと考えられている。太陽と大きく異なる点として唯一分かっているのは、8.8日という短い周期で自転していることだ(太陽は25~30日周期)。自転が速いことはこの星が太比較的若い天体であることを示唆している。

また、分析によると HD 183579 b の外側の軌道に、さらに別の惑星が存在する可能性が高いという。ただし現時点ではこの第2の惑星について詳しく知るにはデータが不足している。

18個の惑星候補を検証するために使われたアーカイブデータは、ハワイ・マウナケア天文台群ケック天文台の分光器「HIRES」と、チリのラ・シヤ天文台ESO3.6m望遠鏡が備える分光器「HARPS」の運用チームがそれぞれ公開しているもの。なお、HD 183579 b の場合はHIRESの観測データは存在せず、HARPSのデータのみ使用された。他の惑星候補の検証にはHIRESのデータも用いられたが、それらは惑星だとの確認には至っていない。

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