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グルームブリッジ1830と太陽の比較

そもそもグルームブリッジ1830とはどのような天体なのでしょうか?端的に言えば「太陽に似ているけど二回りぐらい小さい恒星」です。グルームブリッジ1830のサイズ・温度・質量などを推定した研究は数多くあります。2020年のKarovicova氏らの研究はその中でも最新のもののひとつです。この研究では干渉法を用いて恒星のサイズを直接測定し、次のような値を得ています。

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太陽と比べると、温度が低く、質量・半径・光度の全てが小さいことが分かります。基本的に恒星は質量が小さいほど温度が低く半径・光度も小さくなるため、この点では特に不思議はありません。

(余談:ウィキペディアの値と同じじゃないかと思われるかもしれませんが、ウィキペディアも同じ研究を出典として参照しているためです。)

サイズは太陽の6割とかなり小さめです。有効温度が500℃ほど低いためわずかにオレンジ色がかった光を放射しています。温度の低さゆえに表面積あたりの明るさは太陽の約64%です。そのため幾分かは「眩しくない」星として見えることになります。ただ面積当たりの明るさが64%に落ちたぐらいでは人間の視覚にとって焼け石に水であり、太陽と同様、直視し続ければ目を傷めるでしょう。

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金属量の低さは特徴的です。金属量とは、恒星の元素組成のうちヘリウムより重い元素、つまり原子番号が3以上の元素が占める割合のことです。太陽ではこの割合は質量比でおよそ1.3~2.0%とされています。絶対値については最も身近な恒星である太陽ですら曖昧な値しか知られていないのですが、太陽を基準とした相対値であれば比較的高い精度で測定することができます。金属量の代表的な指標である [Fe/H] は鉄(Fe)の水素(H)に対する存在比を太陽と比べて常用対数をとったものであり、[Fe/H] が-1であれば太陽の10分の1(絶対値としては0.13~0.2%程度)、-2であれば100分の1(絶対値としては0.013~0.02%程度)の割合でしか「金属」が含まれていないことを意味します。

太陽系近傍にあるほとんどの恒星は [Fe/H] が-0.5から+0.3ぐらいの値をとります。-1.0を下回るグルームブリッジ1830の金属量は特異なものです。例えば2017年のLuck氏の研究では太陽系近傍にある1041個の恒星の金属量を調べています。ここで測定されたグルームブリッジ1830の金属量[Fe/H]は-1.24で、1041個のうち下から数えて11番目に低い値でした。下の図はこの研究で測定された [Fe/H] のヒストグラムです。

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