ぼくが急に幸せになった理由
幸せは自分の中にあった。そう気づかせてくれた人がいる。
藤井風さんだ。
芭蕉は、向井去来に辞世の句を問われて、こう答えた。
「旅に病んでの句は、辞世のつもりではないが、辞世でないこともない。
昨日の発句は今日の辞世、今日の発句は明日の辞世だ。近ごろ詠み捨てた句は、どれも辞世だと思ってもらいたい」
ぼくはこの話を『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』という本で知った。きっと有名な話なんだろうけど、不勉強で知らなかったから心に残った。
有名な話と言えば、ふいにこんな話を思い出す。
話し手はスティーブ・ジョブズ。この1年前にがんを宣告された、誰もが知る世界を変えた男だ。
毎日が最後。
そう思うのはなかなか難しい。
それこそ大病を宣告されないと実感しない。
人間誰しもいつかは、と分かっていても明日は当たり前にやってくると思うものだ。
なのに。
なのに人は今日を疎かにし、過去を振り返って、未来を憂う。
今が過去と未来につながっているのは間違いないけれど、ジョブズのように点と点をつなげようとはしないのだ。
少なくともぼくはそうだった。
思えば長い年月を怠惰に過ごした(とまた振り返っている)
4年ほど前、ぼくは何とかして自分を変えたいと思った。願った。
それまで暇つぶしにしかYouTubeを見ていなかったけど、メンタリストのDaiGoさん、イケハヤさん、マナブさん、マコなり社長など。きらりと輝いている人の動画を見まくっていた。
共通するのは、今すぐ行動すること。
ぼくはそう学んだ。
意識ばかりが高い自分が心底イヤだった。
何の結果も出ていないのは当たり前だ。
だって何もしていないのだから。
本は好きでずっと読んでいたから、人生がうまく行っている人の話はわりと知っている。
でも、それはあくまで人の成功例だ。
木下勝寿さんの『時間最短化、成果最大化の法則』によると、世の中には3種類の人間がいる。
成功する人、成功しない人。
そして、成功しそうだけれどしない人だ。
「成功しそうだけれどしない人」は、話す内容は「成功する人」と同じだが、行動は「成功しない人」と同じ。
まさにぼくだった。
人の成功結果に酔いしれて、その人がなぜ成功したのかを考えて実行に移さなかったのだ。
だからぼくは行動することにした。
画面の向こうの人達が、とにかくYouTubeをしてみなさいと言っていたからやってみた。
どうしたらできるかは分からなかったけど、とりあえずPS4に録画機能がついていることを思い出し、マイクをつなげてゲームの実況をしてみた。
iPadに画面収録機能があることを知り、試してみた。
スマホ越しの自分は思った以上に暗かった。自分の中ではもっと明るく饒舌に話しているつもりだったのに、現実はまるで赤の他人だった。
マコなり社長が個性を出すには掛け算だと言っていた。
藤原和博さんの本にも同じようなことが書いてあった。
自分にしかできないことをいろいろ掛け合わせれば他のチャンネルよりも目立つことができる、と。
ぼくにしか無いものって何なん?
ぼくは本が好きだ。
当時人気だった書籍紹介をやってみた。
登録者は100人位で落ち着いた。
反応は、特にない。
10分の動画に3日かけても他のチャンネルには及ばない。
動画を作るために入ったサブスクの使用料金は年払いで10万円。
わずか数ヶ月で作らなくなってしまった。
赤字だったけど、例の世界中を揺るがす状況で支給金が出て、損失は補填された(と思うことにした)
ただ変わったこともある。
とにかく自分がいいと思ったことはすぐに試すようになった。
試していくと、いろいろ改善点が見つかった。
声の出し方、マイクの選択、動画編集、etc.
読む本も変わった。
行動経済学、心理学、脳科学、テクノロジー、中国の古典、それまで小説中心だった本棚は見たこともない本にさし変わり、大きな本屋さんの様々な本棚を散策するのが趣味になった。
こんなに多くの人が本にしてまで伝えたいことがあり、ぼくは一生かけても読みきれない。そう思うとめまいすら覚えた。
活字を読むのに抵抗が無いのは子どもの頃から本を読んでいたおかげだけど、推理小説が好きだったのでずっと抜け出せずにいた。
息抜きに読む本ばかりで飽きていたから、何だか読書家っぽいなと思えた。
いや、どんな本にも学びや気づきはあるのだから読み方しだいなんだけど。
それくらい心にゆとりが無かったのだ。
いろいろ考えるようにはなったけど、相変わらずどうしていいかは分からなかった。
休日はゲームをして過ごしていた。
どうせゲームをしているのだから、ゲーム実況をしてみたいなと思って試行錯誤してみた。
単なるゲーム実況ならもう山ほど人気チャンネルがある。いわゆるレッドオーシャンだ。個性を出そうとまた掛け算を考える。
関西弁でしゃべったら面白そうに聞こえるかな?
他の人が取り上げていないゲームをやれば注目されるかも?
ゲームと書籍紹介を掛け合わせてみたらどうかな?
じわじわと登録者は370人くらいまで増えた。
だけど。
だけど、一時的に視聴回数が上がるものはあっても、それはあくまで人があまりプレイしていないゲーム。たまたま見てもらえたものだ。
ボツにした動画もあるけど、500本くらいアップしても手応えは無かった。
ああ、このまま趣味として終わってしまうのだなぁ。
もうええわ。
疲れていた。
でもまぁ、自分が好きなゲームをしているだけだし仕方がないねと素直に受け止めよう。
そんなある日、運命の日がやって来た。
運命というのは後から思うものだから、もちろんその日もいつもと変わらない日だった。
藤井風さんの『花』という曲がどうしても気になってiTunesで購入し、あまりに気に入ったので、雑談のつもりで動画にあげた。
ゲーム実況のチャンネルだから誰も見てくれることもないだろう。でも、この曲が好きだという気持ちを話したい。
アヒルのおもちゃを眺めるゲームを背景に語った動画は意外なことにどんどん再生された。今の時点で4000回を超えている。
何が起きたのか、さっぱり分からなかった。
そもそもぼくは藤井風さんという人をよく知らない。興味を持ってYouTubeに過去の動画があったので見た程度だ。
すごい人だと思った。小学生でクラシックピアノをマスターし、高校を卒業した頃には洋楽をカバーして歌っていた。
純粋にファンになった。
そこからぼくはまた藤井風さんの感想動画を作ってみた。そして、ハマっていった。調べていけばいくほどその優しい人柄にひかれた。
やがて、コメント欄は風民と言われるファンの人達の言葉であふれ、無料の公式アプリや他にもこんな動画がありますよと勧めてくれたり、ファンになってくれてありがとうと言った優しさで満ちてゆくことになる。
そして、そこから3週間ほどで一気に登録者が1000人を超えるようになってしまった。もちろんこれはこれまでのゲームチャンネルの登録者が下地にあってのことだけど、その勢いにぼくは本当にびっくりしてしまった。
どうせ感想を語るのなら、ぼくなりにと思って本を引用してみたら、どうやらそれが珍しかったらしい。
人生何が起こるか分からないとはよく言うけれど、それはしょせん他人事だった。まさか自分に起きるなんて。
この勢いがいつまで続くかは分からない。
でもぼくは、今とても温かい気持ちに包まれている。風さんに関連した話題に限られるとはいえ、好きな本の話ができているし、中にはその話が面白いと褒めてくださる方までいる。
今を大切にしたい。
毎日が愛しきまつりのようで、感謝のコメントに返信しながら、こんなのお金じゃ絶対に買えないよ!!って体験を繰り返している。
風さんは言う。
あなたの中にある幸せに気づいて。目を向けて。
知足。
この人はこんなに若いのにすでに学んで実践している。
笑顔で人を幸せにしていく。
努力に努力を重ねて、でもそんな事は微塵も見せずに演じきる。さらなる高みへ理想の自分を置き、多くの人を笑顔に導いていく。
幸せは自分を楽しませるものではなく、誰かを楽しませるものにあった。
その気づきを僕はまた動画にする。
ぼくの心にかけめぐったものは、風だった。
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YouTubeを始めて気づいたこと。
ど素人の僕がYouTubeを始めて気づいた事をまとめてます。
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