運動と脳機能の研究~大学院生奮闘記 博士課程編⑪~

もう一つの夢を叶えに

研究の世界では、一歩外に出たら世界につながっている。論文は英語で執筆し、国際学会では英語で発表する。英語という言語を用いて、自分の興味ある分野で世界中とつながれる。そんな世界で、叶えたい夢があった。それは、海外の研究機関や大学で研究を実施することだ。

英語を勉強したときから、海外に出たいという夢が高まっていった。国際学会に参加したり、ワークショップに参加するなかで、世界中の研究者と出会い刺激をもらった。まだ自分が見たことのない世界がこの世にあると思うとワクワクした。

学内では、博士課程の学生が海外で研究支援する奨学金みたいなものの応募が始まっていた。当初、原書論文執筆や次の研究に関する研究計画を練らなければならなかったので、今いくべきじゃないなと諦めていた。だが、締切日が迫ってくるなかで、やはり海外に出てみたいということで指導教官の先生に相談し、申請することを決めた。

面接を受け、結果発表のメールが届いた。約3か月間の渡航の補助がでることが認められた。当初6ヶ月間の渡航申請をしていたが、3カ月となってしまった。おそらく面接の印象が良くなかったかもしれない。まあ何はともあれ、海外の大学で研究できる機会を得た。場所は、ドイツのケルン体育大学という場所だ。

なぜドイツの大学に行くことに決めたかというと、たまたまこのドイツの大学から先生が来校されて面識があり、受け入れ先を相談できたためだ。加えて、以前、子どもの脳機能に運動が与える影響について総説論文を執筆した際に、来校してた先生の論文を総説に引用したこともあって、話が円滑に進んだ。短い期間だが、ドイツで研究できる機会を得た。この機会を得られたのも相変わらずの向う見ずの挑戦心で、今やりたいこと思ったことに挑戦する性格のおかげだ。とりあえず、行動するという力は着々とこのころから育っていた。

原書論文は、アンダーレビュー状態(審査されている最中)。おそらく、ドイツ滞在中に、結果の通知がありそうだ。論文の修正(リビジョン)はドイツで行うことになりそうだった。ドイツ語なんて知らない。ドイツについてはほぼ何の知識もない。あると言えば、ビールとソーセージくらいだ。とりあえず、行ってみればなんとかなる精神でドイツに飛び立った。博士3年の夏が終わろうとしていた。