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2020年プロ野球Weekly Review(2020/07/03)~頑張れ負けるな荒木貴裕~

0.はじめに

今季から東京ヤクルトスワローズの荒木貴裕選手に関するデータを拾っては眺めていくことを開始しようと考え、ここに筆を取ろうと思う。なんで荒木かというと、筆者がその美しい旋律の応援歌に魅かれてプレーをみたら「ユーティリティ・パンチ力あり・代打の切り札・近大で俊介(阪神)と同期」という推しメンの要素を全て兼ね備えており一瞬で好きになってしまったからである。神宮で描く滞空時間の長い綺麗なアーチは、筆者にとってまさに夢への架け橋である。

1.昨年度の荒木データ

   今回、2020年の荒木貴裕選手を分析するにあたり、2019年度の荒木選手の傾向について、ざっとさらっておく。
両リーグ最多61回の代打起用に応えた昨季は、全140打席(全124打数)だったことから約半分が代打起用と、守備におけるユーティリティ性だけでなく打撃面でも非常に使い勝手の良い選手だったことがうかがえる。また、全124打数のうち実に63打数がランナー無し時の起用であり、比較的チャンスメークを期待しての起用も多かったと推測される。
満塁では7打数5安打10打点と特筆すべき勝負強さを持っており、得点圏打率は.348・OPSも.828を記録するなど、ここ一番の代打やスタメン起用も可能な実にベンチに一人はいてほしい成績を残していた。因みに昨年の代打は荒木のほかには引退したG阿部を除くと、F杉谷・C磯村・Bs小島などなかなかに渋い面子が揃っていた、筆者の好みばかりです。

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(データ・図表出典元:データで楽しむプロ野球 https://baseballdata.jp/

・カウント別成績
次にカウント別成績をまとめる。0ストライク時には苦手なカウント無し、ハイアベレージな傾向にある。一方で2ストライク時にはフルカウント以外ものすごく苦手な傾向があり、打数としてはボリュームゾーンである追い込まれてからの対応には課題を残したシーズンであった。

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(データ・図表出典元:データで楽しむプロ野球 https://baseballdata.jp/

・コース別打率(図表は投手から見た目線)

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(データ・図表出典元:データで楽しむプロ野球 https://baseballdata.jp/
 右投手には.179(56-10) OPS.470、左には.309(68-21) OPS.826と極端に右苦手左キラーぶりを発揮した1年だった。その中でもストライクゾーン低めとど真ん中は取りこぼしなく打っていた。一方、反動か、ボールゾーンでは右投手のアウトローへ逃げる球、左投手のインローと低めに手が出て凡退してしまう傾向もあったようだ。

2.今年度の荒木分析における設定

・ストライクゾーンについて
今回は分析するにあたり、ストライクゾーンを81分割し(スポナビアプリを参考に記録)、ボールゾーンもおおまかに40分割して、位置を記録していく。

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3.OP戦・練習試合の結果分析

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(OP戦の全打席結果:スポナビアプリなどを参考に筆者作成)
新型コロナウイルスの影響で途中約2カ月の中断期間を経たオープン戦及び練習試合期間、荒木選手はまず故障明けの3月24日のOP戦に先発出場。1打席目の初球を叩いてレフト前ヒットと、2020シーズンを景気よくスタートさせた。6月の練習試合再開後は、少しスタメンと代打が交互に発生するようなシーズンさながらの起用の中、打率こそ低調なものの、日本ハム河野選手から先頭打者ホームランを打つなど、しっかり振るスタイルを継続できていた。因みに放った安打は「左安打・中安打・右安打・ホームラン」と見事なスプレッドヒッターぶり(?)を発揮、一方凡退時には低め(領域61-89)及びボールゾーンを引っ掛けて三ゴロや二ゴロが散見されたことが気になる。昨年からストライクゾーン低めに強い分、低めボールゾーンにもう少し見極める踏ん張りがきけば、おのずと自身が得意なカウントへ持っていけるはずである。やはり三振率がとりわけ高いわけでもない割に2ストライク時の成績が良くないため、1ストライクまでに決めてしまう決定力がつけば、シーズンはもっと強力な右のハードパンチャーに成長する余白を残している。

4.公式戦の結果分析

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2020年7月4日現在、荒木選手の公式戦結果は9打席8打数0安打と決して順調とは言えない滑り出しを見せてしまった。代打のポジションも昨季の右の一番手ポジションも打撃好調の西田選手に代わられ気味であり、左の雄平選手・宮本丈選手も控えるなかで、日に日にチャンスが減ってきている印象である。もちろん、いまから4打数4安打で打率が3割に乗るぐらいの打席数であり悲観的になる必要は全くないが、若い廣岡選手や渡邉大樹選手がベンチにいる以上、彼等とは違った安定感を見せていきたいところである。ここでは、今季の荒木選手の傾向を考えることで、来週以降の荒木選手への期待を提言していきたいと思う。
 上の今季打席結果を見るに、OP戦の項でも述べた通り、カウントが苦手な2ストライクまで追い込まれて三振している傾向にある。このツボに入ってしまうとどうしようもない。気になる点としては、追い込まれてからの低めの球をことごとく空振り三振している傾向である。引っ掛けてもいないことから、追い込んでから今落ちる球をそこそこの位置に投げておけばかなりの確率で打ち取ることが出来る状態になっていると考えられる。
ここからは荒木選手に投じられた全42球を分析していく。なんと今季の42球のうち、ストライクゾーンの球は21球、ボール球は21球とぴったり半分になっている。
まずはボール球から見ていこう。

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ボール球のうち、見極め率は.667、昨季の.743からすると少し手が出ている印象か。因みに今季のボール球率.667前後の選手は雄平選手(.663)、広島菊池選手(.674)、DeNAオースティン選手(.657)あたりが近く、少し上には中日大島選手やソフト松田選手、少し下には、オリジョーンズ選手や中日アルモンテ選手、西武スパンジェンバーグ選手など、振りに行く助っ人外国人選手が多くなっている。今季の調子の悪さはここらへんの見極めも一つのバロメーターとなっているかもしれない。続いてストライクゾーンに移る。

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ストライクゾーンでは、超速球派の阪神スアレス選手を除き、中盤~高めはまずカットしている印象である。ローボールヒッターらしい結果といえば結果であるが、低めの見極めが例年より芳しくない今季は、高めのストレートへのアプローチを試している印象も受ける。見ると、ストライクゾーンに入ってきた1,2球目の高めストレートは手を出してファウルにしている傾向にある。高めのストレート系・ど真ん中をまずは仕留めてヒットに出来れば、おのずと自らのペースに落とし込めるのではないだろうか。元来得意なはずの左投手のストレートを打ち損じている点において、代打という難しい状況の中、左の直球重視系ピッチャーを仕留めることを目標にまずは調整してほしい。

5.最後に

今回のレポートは極めて厳しいものとなってしまった。代打稼業の選手に与えられる打席は1打席、DHの無いセリーグでは特にその傾向は顕著である。しかし、本来どこでも守れる荒木選手は、好調ならば代打からそのまま守備につかせ、打席を複数与えたくなるような魅力的な選手である。決して厚いとは言い難いスワローズの選手層の中で、昨年のような確固たる地位を確立できるか、これからの選手生命を占う上でも意味の大きなシーズンになると言えよう。それでも気落ちすることは全くない、村上選手の前に華々しいサヨナラ満塁ホームランを打ったのは、山田哲人、そして荒木貴裕なのである。来週は昨年.500打ったナゴドと.429打ったマツダが控えている。まずは1本、本領発揮に期待したい。

参考.OP戦・練習試合の全打席結果

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参考.公式戦の全打席結果(2020年7月4日現在)

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