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君たちは寝かしつけをどう生き延びるか

世の中では仕事が終わって家に帰ったらゆっくりできるかのように考えられてる節がありますが、こと小さい子供がいる家庭では当てはまらないことは皆様ご存知の通りです。

社会学者の著した『タイムバインド』という書籍でも、現実そのような「避難港モデル」は成り立ってないことが指摘されています。(「仕事が危険な海に出ることで家庭が安全で休める港」というモデル)

そう、子どもの目が開いてるうちは家庭内はただの戦場です。

え、お風呂でリラックスして一日の疲れを癒そうですって?
いやいや、まずお風呂に入りたがらないイヤイヤ期の我が子をなだめすかして脱衣所に連れてって一緒に身体を洗い湯船に浸かり身体を拭く、この一連のプロセスのどこにも「リラックス」の「リ」の字もありません。常に大騒ぎです。(まあ、なんだかんだ楽しいんですけどね)

じゃあ子どもが寝てからゆっくりしたらいいのでは?
親なら誰もがそう考えることでしょう。実際、我々、親たちの約束の地カナンはそこにしかありません。

ところがどっこい、子どもが寝るためには寝かしつけというイベントをくぐり抜けねばなりません。これがまた一見簡単そうに見えて、親たちの約束の地への行く手を阻む恐ろしいトラップが仕掛けられているのです。

寝かしつけは出だしこそ、たまに絵本を読み聞かせたり、歌を歌ったり、お喋りしたりはしますが、基本暗い中で静かに子どもが寝静まるのをジッと待つことになります。早まって動いたり離れたりすると子どもがそれを察知、たちまち起きて泣いてあっさり振り出しに戻ることがありますから、慎重に行かねばなりません。

まあ、こんなの当然のごとく親も眠くなるに決まってるわけでして。

日中の仕事や家事育児の疲れが溜まってる上で、暗闇でただジッと息を潜めて待つ。この時点で親の生還率は5割もないんじゃないでしょうか。きっとほとんどの親御さんは子どもと一緒に寝落ちしてるでしょう。あれほどまで夢見ていた子どもが寝た後の大人の自由時間のチャンスを、まさに夢を見ながら失ってしまうのです。

仮に寝かしつけから生還し無事に子ども部屋の暗闇から抜け出せたとしましょう。しかし、ひとたび過酷な戦場を経験した兵士が平和な故郷に復員してももはや元の性格には戻れなくなってしまっているように、寝かしつけを経た後の親ももう元の彼らではなくなってしまっています。眠くて眠くて、何もやる気が出ないのです。

寝かしつけの前には子どもが寝て自由時間になったらあんなことやこんなことをするぞと思い描いていたはずなのに、寝かしつけ後には魂の火が消えてただただ虚ろな目をしたペアレンツになっているのです。とにかく眠い。

そう、寝かしつけというのは諸刃の剣で、子どもだけでなく親自身をも寝かしつける効果があるのです。だから「子どもが寝てからアレコレしよう」というのは、自分がめっちゃ眠くなるという要素を見落とした甘い算段でしかありません。なんなら、子どもより先に自分が寝るまであります。

もちろん、それでもなお根性で眠気を払いのけて、楽しみにしていた自由時間の活動に取り組むことに成功することもあります。
ただ、厄介なことに人間は1度来た眠気をやり過ごしてしまうと逆に今度は目が冴えてしばらく寝れなくなるものなんですね。今度は夜更かししすぎてしまって、次の日に寝不足状態になりがちです。結果、翌日の寝かしつけを寝ずに耐えることがより難しくなるわけで、結局はツケが翌日に回るだけということになります。

そんなわけで、どうにもこうにも、子どもが寝たあとの自由時間を待ち望んでいる親にとって、寝かしつけはなかなかの伏兵なんですね。

うちは幸いそれでも21時台と早めに寝てくれる方なんですが、お子さんによっては0時まで普通に起きてるとも聞きます。寝かしつけにかかる時間が1時間に及ぶことも普通にありますし。江草も「寝かしつけの後にnoteを書こう」などと思いつつ、もう何度意欲をくじかれてきたか。。。

もちろん、親側も寝かしつけ攻略に手をこまねいているわけではありません。定番の作戦は、いっそ寝かしつけのまま子どもと一緒に寝てしまって、朝早起きして「朝活」しようというもの。なるほど、これなら寝かしつけ直後のローなテンションからモチベをアゲアゲする手間がありません。

ただ、早朝活動は朝型の人ならいいのかもですけど、夜型人間にはどうしてもしっくり来ないところはあります。早寝のおかげでそこそこ睡眠時間量としては寝た後だとしても、なんだか朝にはやっぱりやる気が出なくってダラダラSNS見てるだけで終わってしまったりします。

それに、朝は不確定要素も大きいのが難点です。夜の寝かしつけ後は睡眠時間の序盤であるのもあって、いったん安定軌道に乗りさえすればさすがの子どもたちも眠りが深いのですが、朝はそれなりに眠った後の時間帯ということもあり案外眠りが浅いのです。「よーし朝活するぞー」とゴソゴソしていたらその気配を察知した子どもが起きてくるという事態もままあります。Oh, my gosh.

あと、絶対にその日の自由時間のうちにやりたい(やらねばならない)作業があったとしたら寝坊のリスクがある朝にそれを残しておくのは勇気が要ります。出さなきゃいけない書類の作成とか、重要なメールの返信とか。できればそういうのは寝る前に済ませていた方がすっきりしますよね(重要事項を残しておくからこそ早起きできるという考え方もありますが)。

さらに言えば、寝かしつけのタイミングで親もともに正式に寝ようというなら、その時点で家事や身支度も完了させておかねばなりません。しかし、夕刻から始まる降園(これは保育園や幼稚園に通わせてる人限定ですが)から、夕食(準備も含む)、風呂、寝かしつけに至る時間帯は、矢継ぎ早にイベントが降りかかってくる屈指のハードゾーンであり、片づけ、洗い物、洗濯、翌日の荷物の準備、歯磨き、等々、寝る前に片づけておくべきタスクが全てこなせる余裕が必ずしもあるとは限りません。寝かしつけの時点ではだいたい何かが終わっていないので、やっぱり親は寝かしつけから生還することが求められることになります。

というわけで、子どもの寝かしつけと同時に寝て、その分朝活しようというのも、それはそれでけっこう課題があるんですよね。

だからこそ、ほんと繰り返しになりますが、寝かしつけというのは強敵なわけです。

でもまあ寝落ちていく我が子の様子を観察するのは正直幸せな時間でもあります。寝息とかたまらんのですよ。とはいえ、親も自分たちの時間は欲しいから早よ寝て欲しいとも思ってしまうという、寝かしつけとはそんなジレンマに満ちた時間なのです。

なお、本稿はもちろん寝かしつけ後に書いています(投稿自体は予約で朝時間になりますが)。当然のことながら眠いです。もう寝ます。

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