【7198】アルヒ 適正株価算出

「アルヒ」を分析して、Evy式で適正株価を算出してみます。株式投資の自分メモです。

適正株価:2436 = 基準PER21*確約EPS116
実際株価:1796【20/12/24】
割安率:23%

参考

https://www.buffett-code.com/company/7198/

中期経営計画

2018年3月期 決算説明資料

2019年3月期 決算説明資料

2020年3月期 決算説明資料

2021年3月期 第2四半期 決算説明資料

2021年3月期 第2四半期 決算短信

※決算説明動画が資料以上の情報量を持っているので、迷ったら再試聴すること。

1.ビジネスモデル

+2

住宅ローン販売のフィービジネス。住宅ローンは人生で大半の人が一度買うサービス。僕は「ランドセル系」と呼んでますが、生活様式が変わらない限り需要が安定するので大好き。

第一印象は「人口減少」「持ち家信仰減少」「ローン系」と非常にネガティブでしたが、一つ一つ誤解を解いていきます。

住宅ローンの市場規模は、成長はないが急激な衰退もしていない。

過去12年間の住宅ローン新規貸出は20兆円前後で安定的
出典:2020年3月期 決算説明資料p.14

件数微減・単価微増、といったところでしょうか。まだ人口減少や賃貸派の隆盛を極端に気にするステージではないと考えます。

そして、こっちの方が重要ですが、アルヒは圧倒的なシェアアップによる成長ストーリーです。フラット35のシェアは2009年8%→2018年23%→2020年28%。10年連続シェアNo.1、拡大中。市場停滞でも若干縮小でもいいんです。住宅価格が下がってローン金額がやや下がっていってもいいんです。

「住宅ローン=市場縮小」の図式でスルーするのはもったいない成長企業です。

さらに①。大手銀行のフラット35取扱のバックオペレーション業務を受託しています、BPOビジネスです。決算説明動画では「銀行が自前でやっていた時に比べて数分の1のコスト」とコメントあり。圧倒的。地銀の住宅ローンのバックオペレーションを全部奪っていけそうなポテンシャルを感じます。

さらに②。変動金利の人気No.1商品「auじぶん銀行住宅ローン」も委託で取り扱っていて、これも絶好調に伸びています。変動金利ローンもカバー。

さらに③。中古住宅を選ぶファミリーも増えているし、フラット35はリノベ適用も条件緩和が進められていますが、これもアルヒには追い風。中古セグメントでのフラットシェアはさらに高く2018年時点で44%。

さらに④。フラット35は、1億円の上限規制がなくなります。追い風です。

さらに⑤。住宅ローン減税の面積要件が緩和されました。要するに「独り身も多くなった、そういう人も住宅買え」という政策になりました。この国はあくまで「家はローン組んで買って住め」という政策のようです。追い風です。

ネガティブな向かい風要素もあるのですが、少なくともアルヒが、さらにシェアアップする突破口は十分ある環境です。

これだけ伸びているアルヒですが、未だ、住宅ローン全体では2018年時点でシェア3%(直近は5%)の5位。トップの三菱UFJもシェア6%程度ということですから圧倒的ガリバーがいない。アルヒがじっくりと認知度を上げてシェアアップしてゆく成長ストーリーは、まだまだ継続が期待できます。

「なぜ、こんなにお客様から選ばれているの?」というのは、中期計画や決算説明資料によくまとまっているので、読み返せばOK。

アルヒは早い。「不動産屋がアルヒを選んでいる」というのがエポックな所。不動産屋にとっては、お客さんがマンション買えるのか分からないと営業になりません。住宅ローンの審査結果が早く出れば売上上がる!手続もアルヒならスムーズ。お客さんにとっても金利水準が業界トップ級だからオススメ。3方良しです。

さらに。

「債権回収サービサー」というストック要素が非常に強いフィービジネスも持っています。債権を抱えるのではなくオフバランスした後の回収関連の業務代行、あくまでフィービジネス。決算説明動画で「債権残高の0.05%程度のフィー」とのコメントあり。

さらに。

不動産系のプラットフォームビジネスにも着手。ま、ここは種まきステージ。

市場縮小を気にしなくてよい「雑魚キャラ蹴散らしシェアアップ成長ストーリー」、ストック要素、需要安定。高評価要素多数と判断しました。

2.財務指標

+2
配当:2.8%
配当性向:38%
増配傾向:上場後の歴が浅いが微増増配。配当性向30%指向系の企業。

成長しながらこの配当なら十分。

税引前利益率:28% (歴は浅いが過去も直近予想もこの高水準)
のれんを加味しても20%強。

今後、ビジネス拡大に向けて投資するので利益率低下は覚悟。ただし、キャッシュカウをベースに持ちつつの成長投資は勝ちパターンの典型。というか、この高利益率を維持してシェアアップ継続中、「成長するキャッシュカウ」というパワーワードを持ちつつの成長投資。

一人当たり税引き前利益:18百万円
従業員数:400人

◎。オペレーションコストで銀行に圧勝できるのは当然。

CF、BS。ここが一番敬遠されている所だと思われる。アルヒはBSリスクを持たないフィービジネス。

住宅ローンを専門に扱う会社ー「モーゲージバンク」の仕組みはこうだ。アルヒでオリジネート(貸付)した住宅ローン債権は、原則として住宅金融支援機構や信託銀行などに債権譲渡する。その後、住宅ローン債権を裏付け資産とする住宅ローン担保証券(モーゲージ・バックト・セキュリティ)、または信託受益権が発行され投資家に販売される。
つまり、アルヒ自身はローン貸付に伴う金融リスク(金利変動リスク・資金調達リスク・信用リスク)を ほとんど取ることなく、住宅ローンを提供できるのだ。
アルヒが融資した住宅ローンの債権は原則として債権譲渡され、媒介または代理で販売した住宅ローンの商品は貸借対照表(バランスシート)に計上されない。

これは、記事や資料よりも動画で社長の説明をしっかり聞いた方が納得できたので決算説明動画を見ると良いです。ようやく頭の悪い僕でも納得できました。

「BSリスクは取らない」のですが、企業は常に活動してますから決算書のBSには直近1.5ヶ月分程度の「譲渡前の貸付金」と「借入債務」がセットで計上されています。この金額がでかいので繁閑や業績のちょっとしたタイミング次第でBS、CFが上下します。

この貸付金と融資のための借入を取り除くと、240億ののれん以外に悪目立ちする項目はない。会社が指標としているようにD/Eレシオが悪化していなければ、とりあえず投資判断を変える数字にはならない。と判断しました。

決算書で債務がいきなり増えていたとしても、それは譲渡前債権が多いというだけ。また、アルヒのビジネスが万が一止まってしまったら債務も一気に縮小しますから、事業中断時のリスクを考えても問題は少ない。

PBR:2.2
過去平均PBR:2〜3.5
ネットD純利益比率:- 上記理由により単純な算出できない

十分な配当指向。圧倒的な高利益体質、人も少ない。ワンマン社長。エリアリンク と同じく自分の大好きな要素が多数詰まっているので+2。

BS,CFの部分は、スペック評価に含めるというよりは、テールリスクとして「金融、不動産がらみのニュースが起きた時に、真っ先にアルヒを売る」と決めておいて投資に臨む対応をとります。数値化できないので。

3.競合優位性

+2

フラットシェアトップ、10年連続No.1、シェアアップ継続中。バックオペレーション業務のスピード、コスト競争力が圧倒的。

「ゆうちょがフラット35取扱開始」というニュースが直近の下げの理由でしょうか?ゆうちょに相談する客層とアルヒに相談する客層は、対極に位置していると思うので、競合して困るのは地銀ではないでしょうか。

ま、勝負にならないと見てます。むしろ、いかにも鈍重そうなバックオペレーションでどう勝負するのか?アルヒに業務委託の話がくるレベルだと思ってます。

4.業績安定性

+2

このコロナ禍でも、住宅ローンは確実に組まれているようですし、サービサーの部分はど安定のストックビジネス。

成長期になるので、先行投資で利益はブレるでしょうが、トップラインは安定と見てます。上場以来の全期の決算説明を見ましたが、変動にひとつひとつ説明ができていたのは好印象。

5.成長KPI

+4 CAGR8%級
売上3yCAGR:13% 直近:16% 今期:4%
税引前利益3yCAGR:19% 直近:17% 今期:-3%

決算書上の数字から算出するCAGRは上記の13%にならないが、IFRS影響であって、決算説明資料の数字が実態と言える。こういうので懸念があれば毎回決算資料に戻れば、丁寧に説明があるので大丈夫。

長期的な成長を測るなら売上高

長期的な成長に期待しており、投資すべきことは結構ある会社だと思うので、目先の利益額(EPS)というより、売上成長ペースが本物かが重要と考えます。

で、2021年3月期2Q時点で、さっそく売上成長ペースが鈍化しているように見えますが、

1Qはコロナ禍で融資実行がまともにできていない。
2Qは前期が増税前の駆け込み需要があった。

と、まっとうな理由があるので、3Qから普通に戻れば、今年1~2Qの売上成長鈍化は一過性の数字だと考えます。3Qからは、QoQ8%級の売上成長に戻る。このレベルは難なく継続できる。に賭けます。

ただし。2020年3月期は、銀行代理の変動ローンを「auじぶん銀行ローン」へ切り替えした際に数ヶ月売上が止まっています。これを考えると2021年3月期の前年比実績は下駄があると考えるべきです。

よって3Q以降のQoQ+8%クリアは余裕だと思いますが、成長評価は8%程度に留めたほうが良いと考えています。成長は確実に鈍化していっている、とはいえ+8%程度は残っている。という感覚でホールドします。

6.成長期待

+3 CAGR6%級

成長期待評価は1つ下げて+6%級。シェアアップのペースは鈍化するとしても、このぐらいはフツーの成長企業としてこなせると期待する。

7.その他PER評

なし

8.基準PER

基準PER:21 = 6+2+2+2+2+4+3+0
過去平均PER:12〜18ぐらい
スペック評価+2は迷わず出せることが重要。

スペック評価オール2点ですが、見返しても不安がない。成長評価は、実績と比べるとかなりの過小評価。久々に、Evy式評価で理想的とされる会社がきました!

9.確約EPS

確約EPS:116 (会社予想から、のれん分を差し引き)
計画未達:0/2 (純利ベース)
未達レベル最大:0%

会社予想EPS136を、そのまま使います。コロナの影響がわかってきた後の修正数字ですし、自分たちの販売ペースを見た上で算出していますから、製造業と違って予定調和的に着地しやすいだろうし。

その上で、アルヒはIFRSでのれん240億円が償却されていませんので、この分だけEPSがドーピングされていると考えます。

正確な算出はできないので、ざっくりと勝手に20年償却したと仮定して、

(12億*0.6[税引])/3500万株 = EPS20

と計算して、EPS136から20引いて、116を確約EPSとします。

このEPS20は今後も毎年差し引いていきます。

10.【7198】アルヒの適正株価と割安率

適正株価:2436 = 基準PER21*確約EPS116
実際株価:1796【20/12/24】
割安率:23%

11.チャート

NG?
月足:D5 C4/
週足:D13 CB10 A19 F2-

2019年から2020年にかけて不正融資疑惑での乱高下がありますが、これを取り除くと、今の株価は「何故こんなに戻らないの?」というレベルですね。コロナの影響が小さいことは決算で既に明らかです。

ということは、未だ、不正融資疑惑を消化しきっていないということか、今後の金利や不動産の激動に備えて、この手の銘柄が徹底的に敬遠されているのか。

大量保有報告書、変更報告書が何個も出ているので、読んでみました。

12.投資判断

買い 600株 @1813 [20/12/15]

後述の通り、「テールリスクシナリオが発現したら、迷わずぶん投げる」というトレードプランだけはがっちり言い聞かせてホールドします。

13.想定シナリオ

国の住宅政策が規定路線を踏襲し、大きな変化もなく続く。僕の国策に対する長期展望は「恐ろしいほどの現状踏襲路線が、限界が来るまで続く」です。資産も人口もすべて高齢者に偏った社会。「国民に住宅ローンを背負わせて働かせる」というライフスタイルにぶら下がっているオールドエコノミー産業がどれほど大きいか?これを誰が喜んで崩すのか?うーん、絵面がない。

売上+8%級の成長が続く。これは今までの実力からすると難なくこなすと思うので、心配してないですが一応。すぐ来る3Qは前年の増税前駆け込み反動減の影響で見た目数値がよく見えるので注意。

14.リスクシナリオ

アルヒの割安は、この部分からきていると見てます。リスクシナリオがヒットした場合の影響が甚大すぎる。

不正融資問題の再発。まず結論から言ってアルヒは白だと判断します。つかフラット35全体の97%ぐらいは白です。不動産投資でこの手のグレーな話は当然ありますが全体に対する比率を無視した恐れ。

以下の記事が諸悪の発端ですが、悪意のあるミスリーディング記事。単なる「一部で発生している詐欺」であって住宅ローン全体における構造的問題じゃないでしょ、これ。

https://www.rakumachi.jp/news/column/255590

一次情報まで遡ってPDF読むと「メディアが言いたいように報道しているだけ」というのが大半。年金2000万問題、一次情報の報告書内容はめっちゃまっとうでしたよ。

株式投資のために楽待を読みまくるという奇妙な体験させてもらいましたが、この記事の意見に賛成です。不動産投資、あー怖い。

https://www.rakumachi.jp/news/practical/264999

これは、双方の第一情報源を比べれば、まともな人ならアルヒ側に着くと思います。アルヒの決算説明動画での主張を見れば納得できる。が、こういうトピックが世間を賑わせると、アルヒの株を買う人は出てこない。


金利、住宅ローン、金融危機、不動産危機。この手の社会的バッドニュース。アルヒはBSリスクを抱えていないとなってますが、一時的にも抱えているし、住宅ローン債権の証券化で問題が発生した場合、アルヒがどうなるか不明。

住宅ローン債権の証券化は引き続き順調
→RMBS市場は正常に機能、当社の借入状況も良好

コロナ禍の決算で早速上記の説明が入った。逆に読めば、ここら辺で問題が起きれば巨大なテールリスクが出るということ。で、影響レベルが不明、株式市場は、「わからない」を一番嫌う。

特に金利は、フラット35の前提が崩れてビジモデの将来が全く見えなくなる。、、、とはいえ、そもそも金利が上がり出したら、株式市場全体が激震になると思うので、これはアルヒに限らず抱えているリスクだから、言い出すとキリがない。

自分メモ

年末年始休暇のテーマとして「MACDのトレンド判断活用」を掲げているが、早速、アルヒでは最悪のタイミングで投資していることが判明。

12/15に落ちてきたと思って買ったが、週足レベルで見ればもっと待っていい。下がれば嬉しいし、上がって戻ったのを見届けてから買った方が確実。12/24時点では値を戻しているが、もう一度下がるかもしれない。ケーススタディとして後日チェックしてみる。

さいごに

これだけアルヒ推しですが、僕個人は住宅ローン否定派、ガチガチの賃貸派です。


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