9340 アソインターナショナル 企業評価と適正株価算出

独自の企業評価ロジックで、9340 アソインターナショナルの適正株価を算出しました。

自分の投資手法は、以下にまとめています。

基礎的な企業評価は、以下レポートにきれいにまとまってます。ここでは、自分の言葉に咀嚼した内容を書きます。

1.ビジネスモデル評価

+2 ◎

  • 歯科矯正技工所、シェア3割、日本企業として最大手。対して、大多数は個人商店の技工所。

  • 衰退ニッポンの鉄板ストーリー「零細自然消滅による集約成長」という大河の流れあり。日本株の王道は「海外展開」か「課題解決」。これは広義の課題解決ストーリー。日本は将来性がない、遅れてる、老人ばかり。「課題山積み」だからこそ発生している流れに乗れ。

20年の就業歯科技工士を年齢別に見ると、60歳以上が27.6%で最も多く、50 代が24.4%で続いており、50歳以上52.0%を占める等、高齢化が進んでいる。

  • 印象材(ねんど)を使った歯型採取に替わってスキャナーで歯形を採取する省力化デジタル化が増加、技術者不足ニッポンの大河の流れ。これは大手集約・利益率向上に直結、アソの利益成長を長く後押ししてゆく。

  • 美容医療・デジタル化で高利益と、それなりに良いビジネスだが、新規参入は極めて困難、歯科技工士が獣医なみにレアキャラなので、「ヒト」という専用装置が揃えられない。(6039 日本動物高度医療と同じモートパターン)

  • 日本の虫歯治療は年々減少。一方で歯医者はコンビニ並みに多い。今まで矯正治療をしていなかった歯科医院が、生き残りを賭けて参入してくる。アソインターナショナルが努力しなくても、歯科医が必死に営業して顧客を見つけてくれる。一過性ではない大河の流れ。

  • 2023年10月から、健康診断での歯科検診が報告義務化される。矯正治療を促す最大の営業機会が毎年作られることになる。”全国民相手に毎年”はでかい。

  • 今のところ、自分もマーケットも全く評価に入れていないが、海外志向ありで、”もし”成功すれば一気に超優良銘柄。手先が器用な日本人の歯科技工技術が世界に劣後しているとは考え難い、デジタル化の仕組みさえできれば可能性はある。株価の上振れ要素が一つある。

ネガティブファクター

美容整形・脱毛サロンと同様のカテゴリ銘柄。少なくともマーケットはそう見る。「マウスピース矯正詐欺」などのワードがはびこっていて、「とりあえずパス」という感覚はわかる。

が、レッドオーシャンでいかがわしい「脱毛クリニック」への投資なら即パスだが、脱毛マシンのシェアトップメーカーならアリだ。

アソの売上の中に、どのぐらい不適切な砂上の楼閣の売上が混ざっているのか?大学の講義で使用され、大学での紹介で顧客を拡大している中、ネット経由で送られた出所不明の診療書でマウスピースを作って荒稼ぎしているとは思えないが…。ここは明確に大口投資家が嫌う要素。

自分は「まっとうな商売をしている」に賭ける。脱毛業界も結局は、看護師・医師がやる「医療脱毛」に着地した。矯正治療も、変なものはいずれなくなり、結局生き残るのは「まともな歯科医(が信頼するアソ)での治療」が定着するとみる。

ごく自然な肌感覚として、美容整形の中で自然に「やってもいいよね」と受け入れられそうなものは、「脱毛」「シミ取り」「歯科矯正」だ。
「古くからある「あいつ整形してるんだってさ」的なネガティブな目線」これが、日本人にとって「やるか否か」の重要な閾値になっている。骨を削って、、、皮膚を取り換えて、、、という単語になると一気に抵抗感が出る。
「歯科矯正」は、若い時にやっておけば一生もの。健康にも資する(ここ重要)。脱毛(手間かからない時短)同様に、女性の常識感覚として受け入れ可能なはず。脱毛と違って矯正は男性も十分見込めるところも良い。

「矯正治療」は、本質的には顧客が枯渇する類の商売であり、若年層の人口減少が進む日本では、なおさら市場拡大は望めない。というのがアソの現在評価だろう、それがPERに表れている。

が!!予想に反して、売上規模は維持か微増を保てる、という見立て。数年間数字で証明すれば、もともと高利益ビジネスで参入障壁が大きいアソの評価は激変するはず。

2.競合優位性評価

+2 ◎

  • シェア3割。明確な最大手企業。鉄板の「零細自然消滅による拡大ストーリー」を作れるポジションにある。

  • 海外マウスピース競合にインビザライン。価格帯は調べる限り明確にアソが価格優位。こんなとこにも舶来主義があるのだろうか?

  • 自分の肌感覚では、あらゆる診療パターンに対応できるアソの方が、まっとうな歯科医院が採用してそう。ここは感覚しかない。注意。

  • 現在の段階では海外展開を期待値に入れていないので、国内目線では+2評価に迷いなし。

3.財務指標評価

+2 ◎

  • 営業利益率14%。実績ROE17%。予想ROE14%。上場直後でBSが増えて下がった程度。本質的には二桁余裕の高利益ビジネス。

  • ライバル含め薄利多売で量を稼ぐとは考え難く、参入障壁も分厚いので、高利益が頑強に維持されるタイプのビジネスと見る。

  • 配当方針どころか、今年の配当も言えないレベルで、ぼんやりした企業なのだが、まぁ上場直後で勝手がわからんのだろう。配当性向30%を目安とし、、、というフツーの配当と思われる。今は益利回り9%クラスなので、これで配当利回り3%。合格圏。ただし、株価が上がってしまったら凡庸なのは覚えておく。

  • パーヘッド営業利益が2百万円/人と悪いが、歯科技工士が必須の商売なので、甘く見るべき。簡単に手に入らない歯科技工士という職人集団を抱えており、無駄なおっさんがいるわけではない。ここが、最大の参入障壁。パーヘッドは問題とは言わない。

  • 借金なくて、BSは特に言及するとこなし。(正直、上場する意味ないのでは…阿曽さんの自己満足?世界展開のため?)

  • PBR1.3。歯科技工士と歯医者・歯科大学からの信頼・既にある太客の歯科医院が「見えない資産」としてあるので、PBR1.3は割安。

4.業績安定性評価

+2 ◎

  • 上場して最初の本決算で、営業利益未達。最悪の初年度のありかたで、ホルダー全員いなくなって暴落に大納得。

  • とはいえ、原価高と初年度の費用が諸々あったので仕方ない(業績予想に入れといてくれ!)

  • 「安定性評価」は、ビジネスの根っこの部分が安定しているのかをみるので、季節性や景気に左右されるものではなく、一定量発生しているものと考えている。

  • 原価の中で原材料が占める比率は2割程度。そこまで原材料・為替を気にしなくていいはず、、、だが実際には、原材料・為替の影響はPL見る限り大きい。勘違いしているのかもしれない。未曾有のインフレ影響とみればシクリカルなのではなく、今回限りと言える。

  • 美容に属するので不景気の波が一切ないという感覚は危険か(ただし不景気にこそ、こういう商売が流行るともいえる)

2022年6月期の仕入取引全体に占めるドル建て取引比率は14%、ユーロ建て取引比率は46%。当社グループは上場時点で、為替予約等の為替リスクを回避するための施策は行っておりません。

5.成長KPI評価

+1 CAGR2%級

  • 上場前から売上は停滞。利益は原材料高の分で下げて停滞。向かい風と追い風が同時に発生していて、自分は追い風が勝つと見ている。

  • ×そもそも治療した人は二度と使わないサービス。売り先が枯渇してゆく類の商売

  • ×審美目的は20代までが中心。少子化の影響を大きく受ける。

  • ○矯正治療に参入する歯科医師の増加。歯科医師も生き残りのため、保険外治療の治療進出意欲は極めて強い。

  • ○零細の自然消滅によるシェアアップ

  • ○海外拡大ワンチャンあり

マーケットは、PER一桁台と、低成長どころか右肩下りの業績となって上場ゴールを懸念していると考える。
が、自分は+2%の微増を長らく続けると見る。ネガ要素もポジ要素も、長く続く大河の流れであり、きちんと微増ができるなら、10年微増もありうると見ている。

売上は、+2%出せている。この数字を頼りにしてゆく。

6.成長期待評価

+0 CAGR0%級

  • 成長KPI評価に書いた通り、成長するのであれば長く続くはず。+1でも全くおかしくないのだが、自分の中でもビジネスモデル的に未来営業顧客がいるわけではないのが気になる。マーケットもそう感じるだろう。マーケットが成長期待を抱くことは今後もないと考え、保守的に評価。0点。

7.基準PER

基準PER 13=2+2+2+2+1+0+4

停滞微増成長の高利益企業。成長期待はないが、確実性があるタイプ。

8.確約EPS

確約EPS 70

会社予想そのままパターン。

2023年5月に値上げを実施して、それを会社も含めている。上場直後の混乱も収まって、これがノーマル年度の記録となる見立て。そして翌年度に大きく落ちてゆくファクターはないと見ている。じわじわと大河の流れが発生して微増するイメージ。微増なので100、120となってゆくイメージはない。

9.適正株価

910=PER13*EPS70

2023年9月時点で@660あたり。3割引といったところ。
何をそこまで懸念してるの?ってよりは、単純にIPOで期待したホルダーの投げ売りに追いつく買いがないだけなのだと思う。

先に座席を確保しときます。

10.チャート

本決算が前年比-10%、ただ戻すだけの来期予想、上場以来、期待を裏切り続ける結果しか出していない。これがあって、上場以来当然のダウントレンド。
ただし、その最悪を決定づける本決算を現認した後が、今のところ大底となって、そこから10%上昇して今。

なぜここであがるのか?それは、「この本決算が最悪で、ここからは(素晴らしいサプライズはないだろうが)良い話しかない」という見立てだからだと考える。自分の見立てと、マーケットの反応が一致。

もし週足が書かれていれば、逆POから一回目の反発となった構図。
が、週足平均線がまだない!これ自体が危険。IPO当時の塩漬けホルダー多数の危険あり。大損したホルダーがまだ抜けきっていない。この後ぐだぐだと底練りしても何らおかしくはない。

空売りなし。信用買残は4週間分程度と多い、しかも含み損が大きいはず。

11.想定シナリオ

マーケットの期待薄に反して、売上CAGR2%を長らく保つ。
ビジネスモデル評価と成長評価に書いた通り。人口減少であっても、しぶとく伸びた業界はたくさんある(やまみ)。

<ワンチャンレベル>
海外売上がジワジワ増えてゆく(毎年3%でも十分)

12.リスクシナリオ

創業家が6割保有。オーナーの持株比率が高すぎる企業は徹底して嫌われている。やまみと同じく、「何があっても上がらない銘柄」リスクあり。

阿曽社長(1960年生まれ63才)の逝去。跡継ぎがいないと思われる。
株価も暴落、相続での流出も出る。最悪となるため初動で撤退。

マウスピース矯正詐欺が社会問題化し、本来の需要もなくなってしまう流れができる。実際には問題がなくとも、投資家たちがアソを買わない最大の理由になってしまう。

13.2023年6月期 本決算分析

2022〜23の2年間は、売上2%の微増。
2024年の売上予想は、あくまで値上げを加味しての9%売上成長で、自然の成長は、やはり2%レベルとみる。

上場初年度の本決算をこれだけ会社予想から外すところを見ると、年度レベルでコスト調整をして、決算にお化粧するという感覚がまるでない可能性がある。オーナー社長で医療関係ゆえに、「決算の数字を見せてゆく」という感覚がない可能性大。
これは、ネガポジ両面あって、サプライズも起きやすいと見ている。

完全に妄想レベルだが、社長は初年度の決算失敗して意気消沈しているのではないだろうか。だとすると24年度は相当保守的に計画した。もしくは社内で経費を抑えて経営するのではないか。

いかにもIPOが上手ではなさそうな雰囲気、経営と縁遠い雰囲気を紹介動画やら何やらから感じるので、逆に今年の決算は蓋を開ければ良い結果のはず。

14.トレードプラン

主力株として買い。

IPOで買った人が、23年度決算と24年度計画に勝手に期待して、勝手に絶望してぶん投げた後。
しかし、ぶん投げた後結局上がった。これに自分も完全同意。冷静に見れば、モートを持った停滞高利益企業で、PER9は、あまりにも割安。

自分の意見と、マーケットの値動きが一致している。しかも、目先の決算でネガティブが待っている要素はない。前年比の見た目もよい短信が続くとみる。

1.決算を普通にこなすだけで、冷静に企業評価をした人が買いに入る。
2まだIPOホルダーが抜けてない可能性も十分あって、上がって下がってを繰り返す。
ただし、この2つの勝負は時間がたてばたつほど、1が増えて、2はいなくなる。

損切ライン

630で確実に買う人が現れている。630で数日間出来高を積み重ねた後、今回一気に上がった。このラインが割れれば、その人も含み損状態となり、投げ売られたら大変なことになる。
過去にも630程度で一度停滞している。ここはもう戻ってこないという前提。よって、630を切ってもどならければ損切。

差額-50*株数1600=80000円。
損切り価格を、最初に見て、受け入れて、このお金を支払って賭けを張るべし。


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