【8914】エリアリンク 適正株価算出

「Evy式 適正株価算出投資法」主宰のEvyです。呪術的フォーミュラなので真に受けないで下さい。

個別銘柄「エリアリンク」の適正株価を算出するケーススタディです。2020/09/23時点の数字を使用。数字は丸めて表記しています。

適正株価:1134 = 基準PER14*確約EPS81
実際株価:945 【20/09/23】
割安率:17%

※その後、20/12期3Q決算を見て適正株価を修正しています。

参考

2019年12月期 決算説明資料

2019年12月期 決算短信

2020年12月期 第2四半期 決算補足資料

2020年12月期 第2四半期 決算短信

ハローストレージ稼働状況(2020年8月),エリアリンク

企業調査レポート,FISCO,2019

1.ビジネスモデル

+2

月謝型ストックビジネス。自分の印象では必需には程遠く、試しに使って辞める人が相当量いるイメージだが、印象よりも解約率が低い。営業が言葉巧みに解約を防ぐ類とは思えないため、営業力というより「そういう特性」ということになる。モノが既に置かれている状態を能動的に解決するハードルも、低解約率の一因だろうか。

印象と数字が解離していた場合は、自分の考えを見直す。ストレージ稼働室数の推移が公表されており、長年の稼働室数の着実な積み上がりを見る限り、ストックビジネスの教科書的な存在。不動産銘柄は好きではないが+2とする。

捨てればすむのに、一応とっとくのに月3000円払い続ける人がいる、そんな人が、毎年毎年発掘されて契約していることになる。うーん、実感がわかないが、年単位での積み上がった数字が事実としてある。

顧客の分散は、個人が借りているため当然強い。これもストックビジネスとして高評価要素。法人契約は全体の2割、8割が個人。

長期には稼働率減少が続く、5年でザックリ85%から80%へ。キャンペーンをやめて稼働率が回復したという話だが、下げ止まったというレベルで、結局長期傾向としては稼働率は微減が続いている。個人的にはこの商売がそこまで強い需要を持っているとは思えず、飽和が近いと見ているため、成長性ではあまり期待していない、じりじり稼働率・営利率が微減しながら規模を目指してEPS+5%微増でOK。規模を目指せば当然の傾向なので、この程度は想定範囲内。調剤薬局やコンビニ的に、商売として完全に飽和・過当競争になっているのであれば、稼働率か営利がもっとぐちゃぐちゃしてくる。今のところ、まだそのレベルは見られない。数字を見ればいい。

投機家的な方に人気があったようでネット上の情報が錯綜している感があるが、稼働室数・稼働率というEPSを生み出す明確な根拠KPIが公表されているので、あまり気にしない方がよさそう。こういう雰囲気の銘柄は、ネットの情報より事実を重視。

なんとなく、格安SIMが出てきた頃の3メガキャリアに似ている。沖縄セルラーの契約純増数は積み上がっているのにニュースや競合の話で一喜一憂するイメージ。結局は契約数という事実が強い。

詳しく調べるとストレージにも細かい論点があるようだが、自分の所有土地でストレージをやるかマンション建てるか迷っているわけではない。個別ケースでの利回りや投資回収率や出店形式などの議論は、エリアリンクのプロの皆さんに任せているので、大枠として財務諸表で見えるパフォーマンスで納得できるなら、投資家目線としては気にしない。実際の土地持ち大家と違って、投資家は危ないと思ったら1日で株を売って終わり。だからこそ、ミクロレベルでの不動産業としての自分の力量は気にせず、大まかにビジネスとして良ければOK。

住居用不動産に比べて管理コストが安く、駅近以外でも訴求できる点は、今後の不動産情勢を考えるとポジティブ要素。

底地ビジネスは、継続性や安定性がある商売にはどうしても思えない。ただし、そもそもEPS評価の時点からカウントしていないので、ここでも評価+2を下げる要素としてカウントしない。

2.財務指標

+2 【ビジモデが大きく変わった後の評価として。継続できなければ評価減】
配当:3.3%
配当性向:30%
増配傾向:4年停滞後、20/12期減配! 配当性向30%連動公言

フローをやめてストックビジネス中心にした。減配というより仕切り直しと考えれば、20/12期単体での配当額、配当率には不満はない。が、継続実績がない。いろいろな言い訳で配当政策がぶれてきたら、評価+2は下げる。

営業利益率:9%

フロービジネスをやってたころの利益率は参考にならないので、過去との比較というより、「不動産が必要なストックビジネス」としての利益率として評価した方が良い。不動産投資の対象として見るか、株式投資の対象として見るかで、この数字の評価はかなり変わりそう。

自分としては、特に懸念も何もない。こんなんで十分。下ブレしか待ってない高利益率より、改善が期待できた方が良い。エリアリンクの場合、改善は見込めないのだが、無理のないレベルの営利という評価。

一人当たり営業利益:38百万円
従業員数:80人

林社長の方針もあって少数精鋭なのだろうが、この数字は、ビジネスの強みを裏付けるエビデンスとして超高評価。たった80人で10万個のストレージを維持管理して、営業までできるのは素晴らしい。

CF。19/12期に不動産売却で正常化。このCFが今後も続く前提。だからこそ底地は滞留させてないで欲しい。「過去」は低評価。今後なるであろう形を評価しての+2。継続できなければ評価下げる。

BS。ザックリと現金100億、借金110億、販売用の底地60億。他資産は商売道具のストレージ土地と建物。買戻損失引当金50億。借金は当座返済に迫られるものでも金利で業績を圧迫するものでもない。林社長が言い続けていた「不況への備え」は確かに十分できたBSでコロナ不況を迎えた形となったのではないだろうか。

販売用の底地が滞留してCF,BSが汚くなると、想定シナリオがずれてくる。

PBR:0.7
過去平均PBR:1.2 (株価変動が激しく参考にならない)
ネットD純利益比率:-1

この低金利下で、現金100億、借金110億は、マイナス評価する必要なし。トータルのBS力としては優秀の部類の評価。

総じて、過去のぐちゃぐちゃを無視して、ストックビジネス中心に舵を切った会社としての20/12期1〜2Qの直近だけ評価すれば+2。が、継続実績がない。これが継続するという想定での+2評価。事実で評価を下げる。

3.競合優位性

+2

最大手でシェアアップ継続、少数精鋭企業、創業者ワントップ、株主向けの情報開示積極的。個人的に評価する優位企業特性を大量に備えている。純粋に企業としての優秀性で+2評価できる。

エリアリンクはシェア16%級でトップというのは、どういう定義なのか資料見ても分からず…。キュラーズは戦略的には棲み分けられていると見るが、、、

※2020/11後日調査しました

4.業績安定性

+0 【底地の業績安定を全く信用していないため。】

ここも、過去を無視して、ストックビジネス中心に舵を切った会社としての20/12期からの評価で+1、としたいところだが、底地が利益の4割を占める以上0評価。個人的に底地の業績安定は信用していない。実績が積み上がれば+1の可能性もあるが。

5.その他PER評価

-1 

買戻損失引当金50億の決着を見るまで-1。市場の株価評価はここを意識しているだろうし、ここが決着しないと他の影響も未知数。

-1程度では影響をかなり過小評価していることになるが、ここが自分の賭けの部分。蓋を開ければ大した問題にはならないと見る。むしろ底地の業績の方が懸念要素。

6.成長期待

+1 CAGR2%級

稼働室数の微増継続の数字事実と解離しているが、個人的には、ストレージ契約数は後数年で打ち止め微増がせいぜいと見る。このサービスの需要がそこまで奥深いとは思えない。底地と合わせて、微増程度の成熟企業になってゆくと評価。

実際にはもっと期待していないのだが、林社長がじわじわと前年割れを継続するイメージがない。何がなんでも利益微増は維持するだろう。

6.成長KPI

+2 CAGR5%級【ストレージ契約数を最重要KPIと位置付ける】
売上CAGR:10% 直近:2% 今期:-16%
営利CAGR:4% 直近9% 今期:-24%

フロービジネスをしていた頃を含むCAGRは参考にしない。ストックビジネス中心に舵を切った会社としての20/12期からの評価で+2。

稼働室数の月次数字を見て、+5%級の契約数維持ができていれば、細かく評価は変えない。8月時点で、ザックリ前年比4%、4ヶ月を残してこの結果なら順調。

本来は底地と合わせて+5%成長でなければEPS成長の根拠にはならないが、底地は通年決算で見ないとなんとも言えないので、基本は契約数。

年間業績としての底地+5%は、後述の通り「底地営利は7億」と、かなり過小評価しているので、細かい数字を見なくとも、会社予想がまともなら、まず達成できるという想定。

7.基準PER

基準PER:14 = 6+2+2+2+0-1+1+2
過去平均PER:14程度だが、過去と商売が変わったので参考にしない

実績の積み上げがないが、懸念要素さえ発生さえしなければ、特段サプライズな業績向上がなくても「微増成長の優良ストックビジネス企業」としてPER14は妥当、長期ホールドできる。

8.確約EPS

確約EPS:81 
計画未達:1/6
営利予実対比最大:-7%

20/12期2Q決算で、ストレージ運用営利は年19億が見えてきた。ここのストックビジネスの特性を信じれば確約と見ていいだろう。その他のストック営利は4億。固定費は12億。ここまでの営利11億部分は岩盤営利。

ここに底地が足されるが、これは営利7億がせいぜいで、今は業績好調だが水物という考えは今後も不変。コロナでなおのこと「もし売れれば…の変動部分」は最下限を前提にすべき。

営利11+7億が確約営利、となると会社予想営利23億EPS103なので、確約EPS=103*18/23=81。以前よりストレージ運用の営利1億増えた分EPSも微増。自分が考える「確約EPSがじわじわと伸びて、適正株価がじわじわ上がる」ストーリー通り。

2019 年 12 月期は営業利益を前期比 横ばいの 28 億円と予想しているが、その中にはやはりファンドへの売却に伴う利益と、やはり一過性要因であ る自社ビル売却に伴う利益が含まれており、これらを除いた営業利益は 17 億円にとどまると予想している。
出典:企業調査レポート,FISCO,2019

FISCOのレポートでも岩盤の営業利益は19/12期時点で17億と予想。自分の見立てと大きな乖離はない。

9.【8914】エリアリンクの適正株価と割安率

適正株価:1134 = 基準PER14*確約EPS81
実際株価:945 【20/09/23】
割安率:17%

10.チャート

OK?
月足:DCD18 C1\
週足:A24 FE7 D8 CB11 A10-

11.投資判断

買い、フル投資 2100株 @822

実際は20/12期1Q頃から投資していたが、2020年9月時点でも判断変わらず。

12.想定シナリオ

何もサプライズが起きなければ、想定シナリオ通り。ネガティブサプライズの発生がなく、BS,CFがこちらのイメージ通りで20/12期を終わらせ、ストックビジネスの会社として通常化すれば、自然と一定の株価まで収束すると予想する。

具体的には
・買戻損失引当金50億の問題が、対して問題もなく収まってゆく。
・CFは、19/12期の形を継続できる。
・BSは、底地30〜40億に在庫改善。借金は、手持ち現金と同額程度。
・底地で、営利7億達成する。

これなら、自分としては合格ライン。

ストレージ稼働室数の純増+5%程度を維持。月次報告でチェック。+5%は年間トータルでの評価なので毎月右往左往する必要はなし。

13.リスクシナリオ

決算発表でのネガティブサプライズ。株価の低迷は、全員がこれを想定しているし、自分も何かあると覚悟してる。過去にMSワラント関連で一悶着起こしているようだし、なんでもありの覚悟は必要。市場参加者はリーマン時の不動産ショックへのアレルギーもあって、過去を知っている人は、この会社をずっと敬遠しそう。

逆に、この会社を20/12期から初めて見た人には、ずいぶん安く見えるのではないだろうか。自分は「20/12期からフツーのストックビジネス企業になった」に賭けて、継続実績が積み上がる前に座席に座っておく。昔、おまえが何してたかは聞かないよ。

このリスクと、今の割安率を勘案して、投資に見合うと判断。ネガティブサプライズが発生し、賭けに負けたら素直に損失を受けて撤退する。

底地が営利7億未達、来期計画時点で7億未満。長期滞留した底地の投げ売り。減損。ありえないほどレベルの低い目標にしたつもりだが…。

稼働率の減少が続き、稼働室数+5%の維持にも暗雲。成長期待PER評価は+1でよいのだが、成長KPIを+1に下げる必要がある。

AirBnB的な代替ビジネスの隆盛。影すらまだ見えていない話なので、出てきたら懸念しよう。


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