4767 テー・オー・ダブリュー(TOW) 企業分析と適正株価算出

独自の企業評価ロジックで、4767 テー・オー・ダブリュー(TOW)の適正株価を算出しました。

自分の投資手法は、以下にすべて書き出してあります。


【適正株価】420 = PER14 * EPS30


1.ビジネスモデル評価

+2 ◎

まず悪い所を先に。

✕プレゼンして、クライアントから受注もらって、毎回毎回、必死になって食い扶持を探すビジネス。ビジネス的には明確に他より一段劣る。いわゆる水商売。景気が悪くなるとしっかりと利益が確保できなくなるビジネス。

では何を高評価しているかというと、広告業界における「大河の流れ」を、自分は高く評価している。

ネットですべての娯楽が実質無料無限に取得できる時代に、「イベント」「ライブ」「催し物」の希少性は高まる一方。広告市場におけるイベントへの注力は、数年で止まらないメガトレンド、ネット社会が呼び起こしている「大河の流れ」。とみている。

人間はどんどん暇になっている。対して社会は、無限に楽しいことを提供できるテクノロジーを持った。音楽も映画も漫画も本も、あらゆる体験がいつでも無限にできるとなると、逆にガツガツと消費しなくなってしまう経験はないだろうか?

一方で、「イベント」は、その時・その場でなければ消費できない古典的なワクワク、楽しさを提供してくれる。現代で一番変わった潮流の一つではないだろうか。

(自分は本当に苦手だが)あれほど混んでいるイベントや展示会にたくさんの人が押し寄せるのは、テレビがつまらなくなりネットもコモディティ化し、イベントだけが唯一「今しかできない」という魅力を持っているからだ。

イベント・ライブは、今後も伸びる。

これは音楽市場の消費や、ライブビューイングの定着など。事例は多すぎるので省略。

さて、前段が長くなったが、TOWは、イベント企画屋だ。

さっとウェブを見ればビジネスはすぐ分かる。上記に書いた、「現代社会で一番希少な体験」を企画して売っている会社だ。

TOWは、数年では終わらない「大河の流れ」の成長市場で、ビジネスをしている。TOWの評価点のコアはここ。


マネーフローという観点でも、大変良い構図となっている。

【広告業界の市場規模推移】

電通『日本の広告費』よりデータ取得し自作

広告市場全体は7.3兆円産業。CAGR2%で微増している。
内『4マス』は2兆3000億で、2%超級の微減がずっと続いている。対して、『ネット広告』は3兆。2桁成長。

TOWが主戦場とする『イベント展示会』広告市場のコロナ前の成長率は +4% +6% +6% +8%(名目+48%) と、ざっくり6%成長市場と言って良い。

『4マス』広告市場の予算規模は、いわば風呂桶の水。2023年時点でも2兆3000億で、ざっくり『イベント展示会』の5倍といったところ。このマネーの一部が、『イベント展示会』という小さなバケツに流れ込む。
大きなマーケットがなくなるがゆえに、代替マーケットの未来が明るい。「恐竜の絶滅」ストーリー。
企業はなぜ、金のかかる『イベント展示会』に注力できるのか?企業側にとってみれば4マス広告を減らした分と比べれば、イベントなど安いものなのだ。6%成長して金が注がれることに合点がいく。
4マスは、あとまだ2兆3000憶もある=まだまだ減る。毎年2%減るだけでも460億が他に流れ込んで来る。

追い風は、これだけではない。

『イベント・展示会』市場は、2019年に5700億と急増している。これは、2019年からイベント分野を加えた金額に変更したため、単に急増しているように見えるだけ。
2020年以降もイベントは加味され続けている。が、2023年の時点でも、2019年に遠く届いていない。それほどコロナの影響が大きかった。

コロナで、『イベント展示会』市場は、2020年3500億、2021年3200億、2022年3000億と、5700億から超大幅縮小。
しかし、2023年に3800億に戻ってきた。とはいえ、まだまだ5700億に戻っていない。

「コロナ前からあった自然成長率6%」と「コロナ前への回復」を、同時に受けて成長するとみる。

TOWは、「社会の変化」「広告市場のシェアの変化」「コロナ前への回復」という複数の追い風を受けて、短期的にも長期的にも、大河の流れをもった成長根拠がある。

2.競合優位性評価

+1

業界最大手。電通・博報堂から確実に仕事をもらえて、最上流工程の次に位置している。

  • とはいえ、仕組みとして選ばれる構造をもっているわけではない!!毎回プレゼンで勝ち取る必要がある。

  • 実際に、アウトプットの実績・レベル感を見ると、どう見ても業界を代表する品質のイベントができている。

この方の分析が秀逸。書かれているように、TOWは利益率が良い。記事を読んで「ですよねぇ」と何度もうなづいた。

私は高利益率の根拠として、

20~30代が多くを占める社員構成のおかげで、給与に対してパフォーマンスの一番いいコスパ最高の若手社員を抱えているのが最大のからくりだとみている。

しかもリアルだけでなくデジタルも対応できる社員が8割(ブリッジレポートより)。

と、かなり競争力には自信がある。しかもトップ企業。

だけれど構造的な優位性がないので+1。

3.財務指標評価

+2 ◎

  • 配当性向50%を上限、配当利回り4.5%を下限として配当を確実に払う宣言企業。キャッシュをため込まず、株主還元をしっかりする企業姿勢は◎。

  • コロナ時期は配当性向50%上限を撤廃して配当を維持した。根性配当実績あり。

  • ROEも、コロナ前に復帰して15%級と「稼げるTOW」に無事戻った。

  • 電通の下請けとして薄利で苦労してそうなイメージだが、電通1次受けまでは全然利益があるようだ。正直こんなに儲かっているとはすごすぎる。

  • BSは何も問題なし。典型的なキャッシュたっぷり+キャッシュじゃぶじゃぶ系。

  • 大手企業から過去実績で信頼を勝ち得ており、電博からも信頼されている。「過去実績・電博コネクションという見えない資産」がTOWの真の資産。これでPBR1.4。現金ばかりの簿価の1.4倍なのだから、資産面からみても割高感は全くない。

4.業績安定性評価

+0 ✕

直近の計画未達はコロナでドタキャンなどもあったものなので甘く見る。
もともとは保守的な予想をしていた企業。村津社長体制は常に保守的。

とはいえ、商売の本質的性質を考えれば、完全に水物商売。企業にとって、いざとなったら一番最初に削るコスト。
過去リーマンで大きく売上を減らしている事実あり。不景気になったら確実に弱い。

5.成長KPI評価

+2 CAGR4%級

  • ビジネスモデルの見立てに書いた通り6%級の成長で+3としたいところだが、25/06は営業利益が6%成長未達なので+2とする。

6.成長期待評価

+3 CAGR6%級

  • ビジネスモデルの見立てに書いた通り。

  • これにより、スペック評価がやや悪いシクリカル株だが、基準PER(=適正株価)が高めに置ける。

7.基準PER

基準PER 14 = 2+1+2+0+2+3+4

8.確約EPS

確約EPS 30

シクリカル銘柄なので、中の下をイメージしたざっくり予想パターン。

当面これ以上の36~40といったEPSが数年で出るとは思っている。
25/06期は、コロナ特需を除けば過去最高の受注残高とワンチャン受注高。
EPS35は余裕で行けると考える。
計画時にワンチャン受注高は織り込んでいないだろうから、上振れすら可能と考える。

が、リーマンと同じ展開になるとすれば大不況が来れば、一時的にEPS20にまで下がるのは当然とみてもよい。

確約EPSとしては30からよほどのことがなければ上げるつもりはない。

シクリカル銘柄である以上、額面のEPSを採用してはいけない。
ここからは心を鬼にして、額面のEPSがどんなに良くても、EPS30を固定にしてゆく。

この手の銘柄は、好業績の真っただ中で必ず売る必要がある。
EPSを調子に乗ってあげてはいけない。必ずやりそうだから上がる前に書いておく。

9.適正株価

420 = PER14 * EPS30

唯一適正株価を上げられるとすれば、成長KPI評価。ここを+1して、450が、今イメージできる最高の適正株価。
この時に、配当利回りは、EPS36レベルだとして、36*0.5=18円 ⇒ 配当利回り4%。
450円になっても高配当株として十分に現実的。

10.チャート

空売りなし。
信用買残は半年前の株価が上がっていったときに比べて明確に減少傾向、24/08時点では、40万株で週足出来高レベル。高値で増えた信用買残ではないので問題なし。

3年弱、週足平均線が明確な停滞、2024/02にレンジ相場をブレイク。コロナ回復好決算を確認してのきれいなレンジブレイクとなった。
が、植田ショックでレンジに戻った。

2022/09~2024/02ぐらいまでレンジ相場が続いたのは、フィデリティの10%持ち株の売り断行(変更報告書にて確認)も、要因の一つだと考えている。

この長らく続いた売り圧が消えて、2024/02にレンジを突破したという見立て。そして好業績が続く。

ここから週足がダウントレンドになるのは、今後出るであろう決算を考えると信じがたい。

✕チャート的には、エントリーするにはふさわしくない場面。だが、ホールド継続。

後日、これが良かったのか要検証。

11.想定シナリオ

2025年度6月期は、計画上振れ。5%レベルかもしれないが。

超シンプルに、好決算がTOWの評価を変えるのを待つ。24/06期も好決算だったが株価は厳しかった。が、去年までは異様な売り圧があった。26/06期からは、これもなくなる。去年より状況は良化している。

12.リスクシナリオ

地震、災害、景気。いつだってイベントはなくなるリスクがある。
業績安定評価がゼロに張り付く超シクリカル株であることを絶対に忘れてはいけない。リーマン時の業績悪化は地獄絵図。EPSがいつでも半分になる可能性があると思ったほうが良い。
ただし、配当を保証していて根性配当の実績もキャッシュもあるのだから、長期的な大河の流れを確信しているなら長期保有向き。

米国不況の波が実は来ていて、だんだんとイベント系の支出が先細る。
受注残高に明確な数値となって現れたら、絶対に曲解せず素直にシナリオが崩れたと判断すること。「いやしかし」とか絶対言ってはダメ。

14.トレードプラン

当面売ることを考えないホールドに変更。

  • 低PER・高配当は、マーケットの株価先行きが不透明な中で選ばれる銘柄に属する。暴落前と違って「TOW以外に差し替えるほうがリスク大きい」のも、ホールド継続の追加理由。

  • 「大暴落株価低迷時代の数年を、TOWの配当もらいながらホールドして過ごす真冬時代」も、ありうるとイメージした。それもあってTOWが3年ぐらいホールドできるか確認した。

  • 空売り、信用買残の加熱もない。

  • eスポーツのテーマ銘柄でも注目されやすい。

利確イメージ
適正株価を上げる余地がないタイプの銘柄なので、420に近づいていったら素直に売りを意識する。が、当然モメンタムは引っ張る予定。
自分の中の上限450、さらにオーバーして500。この2つのラインに近づいたら上昇途中でも売りを意識。

損切ライン

300。

大損で終わるという最悪のシナリオ。
ひとまずここで一度切る。

その他


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