フォローしませんか?
シェア
ひたちえぼ
2022年10月15日 14:50
甘い香の匂いが汗で消え、合わない沓で踵から血が滲む頃、マホは、山の祠に辿り着いた。刺繍が入って重たい花嫁装束から手を放し、深く息を吸う。紅樹独特の胸がすく香りが、病んだ肺に満ちる。おまえには、この匂いが薬になると、姉はよく言っていたものだ。「大丈夫だよ、私は幸せだから。あなたも体を治して、どうか幸せに」 山の加護と引き換えに、ヌシに差し出す「つがい」が姉に決まった。里の衆が報せと「誠意」