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1年生:たしざん・ひきざん:もんだいつくり

教科書には「6+4の しきに なる もんだいを つくりましょう」といった例題・練習問題があります。
例題には図があって,それをつかいながら授業をおこない,同じようにして練習問題に取り組むのです。
授業での説明は,教師のガイドに従っていればよいのですが,これを自分でやろうとすると,「たしざん」以外にかなり多くの要素が関わってきます。すなわち,

         状況設定ができるか

という要素です。実際にやってみながら,それを確かめていきましょう。

リンク先を開くと,メニュー画面になります。
小学校1年生の教科書では,たし算の考え方を,はじめに「あわせていくつ」と「ふえるといくつ」に分けています。というより,量の合併の場合と増加の場合のどちらでも,たし算の計算で結果を求めることができる,ということを学ぶということです。このあと,順序数(なんばんめ)も出てきますが,もんだいつくりは,この2つの考え方を学んだ後にやります。

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以下は,「あわせていくつ」の場合です。

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教科書の例題にならって,図を使います。どれを選ぶかは児童が決めます。(決定力)ここで,「どうすればいいかわからない」子が出ることは予想されますので,はじめのうちはサポートが必要でしょう。
「さる」を選んだとします。

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3つの空欄に言葉や数をいれて文章を作ります。選択肢が用意されます。
始めの空欄を正しく選ぶには,この絵が何をあらわすのか,文字で表現できる必要があります。(語彙)

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2番目は数えればよいでしょう。3番目はどうでしょう。選択肢がなければなにもわからないかもしれません。
では選択肢があれば?
「いきました」「きました」は可能性があります。
「ありました」は「さるが5ひきある」とは言わないので除外。
残るは「います」です。「いきました」「きました」「います」のうち適するのは「います」でしょう。「行ったのか来たのか」は,この図では不明だからです。
(状況の把握と語彙)
これだけ判断ができてやっと文を完成することができます。
その次です。

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「5ひきいます」が適するでしょう。しかし,5は数えられるとして,
「はじめが『います』)だったから,今度も『います』だ」と,即座に判断できるでしょうか。即座に判断できればよいのです,しかし,ここで迷っているようだと,やはり状況の把握ができていないことになります。
その次です。

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最初のメニュー画面で「あわせていくつ」を選んだので,ここは当然「あわせて」です。これも即座にできるべきですが,迷っているようだと「なにをしようとしていたのか」がわかっていないことになります。
さて,問題文ができました。

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「はじめる」ボタンで計算を始めます。

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以上が一連の流れです。こうして見てくると,この課題に取り組むには,語彙や状況設定のための判断など,「たしざんができる」こと以外の要素がおおきな位置を占めていることがわかります。

筆者は小学校の教員ではなく,教科書準拠の教師用指導書は手元にありません。教科書は学校に教科書を販売している書店で買えますが指導書はどうでしょうか。一般の人では入手は難しいのではないでしょうか。買えたとしてもかなりの値段なので,筆者は試してもいません。
したがって,教師用指導書に,この例題についてどのように書かれているかがわからないのですが,解答の過程をここまで分析して,それに留意しながら指導するようになっているのでしょうか。

以上,このドリルの活用にあたっては,始めのうちは教師または指導する人がちゃんとサポートしながらやることが必要です。わかってきたら,すきなだけやらせればよいでしょう。そのうちに力がついてきます。
また,授業で使うにせよ,サポートしながらやっているときに,前述のように「即座にできたか」といったことも観察するとよいでしょう。それが理解度の把握につながります。単に「できた」だけでは理解しているかどうかは把握できません。


ひき算は,「のこりはいくつ」と「ちがいはいくつ」が別のファイルになっています。すすめかたは同じです。

ひき算では,「なにからなにをひくのか」という要素が入ってくるので,「絵を数える」では解決しない場面があります。

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この画面で個数を決めるためには,図ではなく「6−2のしきになる」という問題文がわかっていなければなりません。
そのあと,このようになります。

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見出し画像と同じ場面ですが,この空欄に何もいれなくても文章としては成立しますね。「6こあって2こたべた。ケーキはなんこ」と聞かれたら,「残ったケーキは」と意味を補充して考えるからです。「何個といわれてもわからない」というのは,その「意味の補充」ができないわけで,国語の読解力の問題と言えます。
このドリルでは選択肢がありますので,そこから適するものを選ぶことで,「意味の補充」ができるわけです。

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「ちがいはいくつ」はこちらです。

「ちがいはいくつ」では,2つのものを比較するので,対象物が異なることがあります。次の図は,絵を選ぶときに「ひよこ」を選んだものです。選んだひよこ以外に,かもが出ています。

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たしざん,ひきざんで,状況設定がすべて異なります。それらに対応できるかは,たし算・ひき算の「計算ができる」とは別の問題であるわけです。
そういう意味で,この課題は大切であるといえましょう。指導者はその意味をしっかりと把握し,児童の理解状況を確認しながらすすめていくべきです。

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