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「ボウキョウ」をプリントアウトして読む

 先日,「プリントアウトしてnoteを読む」を書いた。長い文章の場合,きちんと読もうと思ったらプリントアウトして読む,という話だ。
 そのとき,いや,それより前からプリントアウトして読もうと思っていた作品がある。南葦 ミトさんの「ボウキョウ」。いま,10話まで進んでいる。

いままでに,いくつかは読んだが,流し読み。しっかり頭に入っていたわけではない。1話が1万字くらいの連載小説である。いつかはちゃんと読みたい。
 意を決して,はじめから1話ずつプリントアウトして読みはじめた。面白くなければ途中でやめるつもりだったが,第5話まででA4用紙65枚になった。話の筋と展開がわかってきたので,第6話からは,プリントアウトはせず,ワープロにコピペした状態で,画面で読んだ。ちょうど一ページが入るので,スクロールではなく,ページ送りで読める。そこであらためてわかったのが,プリントアウトするとなぜ読みやすいのかということだ。スクロールだ。

 ブラウザでnoteを読んでいると,スクロールしながら読むことになる。ページ送り(正確には1画面送り)も,スクロールバーのクリックでできないことはない。しかし,「プリントアウトしてnoteを読む」で書いた通り,行間,空行の関係で,1画面に入る分量が違うから,ワープロ画面の方が画面送りの回数が少なくてすむ。視野に入る分量も違う。スクロールバーのクリックは,やはりスクロールだが,ワープロ画面でのページ送りはスクロールではない。プリントアウトすると,画面送りではなくページをめくることになる。たいした違いはなさそうだが,ブラウザでは,ずるずるとスクロールされていくので,目にかかる負担が違う。さらに,プリントアウトすると,寝転がっても読める。(実際,第1話は寝転がって読んだ)

 第6話からプリントアウトをやめたのは,ワープロ画面でも読めることのほかに,ストーリー展開に気持ちが行ってしまって,早く次を読みたい,となったからだ。noteの画面ではもどかしいというか,スクロールがわずらわしい。ワープロ画面に貼り付けて,フォントサイズを11ポイントにして,それでどんどん読む。紙とインクをここで消費しなくても済む。

 「ボウキョウ」は優れた小説だと思う。第1話,第2話に,その後の伏線がちゃんと張ってある。もっとも,伏線とわかってしまったら,伏線とはいわないのかもしれないが,「たぶんこうだろうな,あとでわかるんだろうな」と思わせる箇所が何ヶ所かあるのだ。たとえば「埼玉」。なぜ埼玉なのか,当然,それはあとの方になって明かされることになる。
 舞台設定も秀逸だ。読者は実体験ではなくとも,あのとき以降報道を見ていた自身の記憶を追って,登場人物に感情移入するようになる。

「ボウキョウ」を読んで,「長いな」と思われた方は,パソコンがあったらワープロソフトにコピペして読むことを勧める。もちろん,そのまま読んでどんどん頭に入る今世代の人はそのままで結構だ。