見出し画像

算数の「線分図」は必要か

 朝日新聞のEduA3月8日号に,こんな「お悩み相談」が載っている。(要約)

中学受験塾に通う5年生。塾の先生にアドバイスをもらってサポートしているが,線分図を書かないなど,言われた通りにやらない。算数の点が悪く,落ち込んで完全にやる気を失っている。

これに対する回答。

子どもが塾の先生を好きで信頼しているかどうかで対応を変えよう。好きならその先生に,そうでなければ他の先生を探して,ほめてもらうようにしよう。親もほめるようにしよう。

ということで,これ自体はいいと思うのだが,その途中にある

式や線分図を描かない子は,きめ細かく,気長に教え続ける必要があります。それでもなかなか点数には反映されませんが,「丁寧に書けるようになったね」などとほめ続けることで解法が身につき,結果的に点数が上がります。(原文のまま)

にひっかかった。
「気長に教え続ける」の内容が書かれていないからだ。
まず,「線分図をかかないのはなぜか」を子どもに聞くべきではないか。わからないから書かないのか,面倒だから書かないのか。

算数での「線分図」とは次のようなものだ。(5年生の教科書:学校図書)

画像1

意味がわかるだろうか。
この問題は「はり金」なので,まだいい。
次のような問題でも,この「線分図」にする。

画像2

 小学校の先生とともに,パソコンでやる練習ソフトの開発をしているとき,この線分図について「これ,こどもは理解できますか?」と聞いたことがある。右側の表も,何をやらせようとしているか,不可解である。
平面の話だから,次のような図にすればよいではないか。

画像3


それぞれ,6,9で割れば1m² あたりのキロ数がわかることがイメージできるのではないか。
平面である「畑」を線分にするということは「抽象化」をしているわけで,この「抽象化」が結構難しいのだ。

 私は,この線分図こそが,わからなくなる元凶だと思っている。
現場の小学校教師には異論もあろうが。
なお,ここの単元「単位当たりの量」は,5年生が結構苦労する単元である。
はり金ならまだしも,畑も,水も,プリンタで印刷する紙の数も,全部線分図だ。そこで,ソフトでは,次のような図にした。

画像5

画像4

練習では線分図を書かなくてもいいようにした。

画像6

線分図を書かなくても状況がイメージできれば式は立てられる。

 先ほどの「悩みごと相談」に戻ると,こどもに聞いてみるべきなのは次のようなことだ。
 ・線分図を書かないと減点されるのか
 ・線分図を書かないのはめんどうだからか
 ・線分図を書かないのはわからないからか
つまり,状況と「子どもの言い分」を聞くことである。
その上で,「減点される」なら,断固「そうか,でもおとうさんは(おかあさんは)書かなくてもいいと思うよ」と子どもの「なぜ減点なんだ」に寄り添うとか,「めんどう」なら,「一緒に書いてみようか」と面倒さを共有するとか,わからないときは,さらにどうわからないかを聞いて一緒に考えるとか,状況に応じて対応するべきなのだ。
 「子どもの言い分を聞く」ことが最優先されるべきなのに,この悩みごと相談の回答にはそのことが書かれていない。
 この回答の通りにやるだけではたぶん状況は改善されないだろう。