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プログラミング教育を考える(1) 発端

 今年から小学校で「プログラミング教育」が始まる。

 まだ始まっていないかもしれないけど,始まることになっている。
もしかすると,今年は授業時間が少なくなってしまったからパス,というところも多いかもしれない。
準備万端の学校もあれば,いまだに準備が整っていない学校,できればパスしたいと思っている学校といろいろだろう。

 私はずっと以前から,小学校でのプログラミング教育の必修には反対の立場であったが,2月に出た「小学校プログラミング教育の手引き第3版」(文科省)や,3月に出た「相模原プログラミングプラン2020」(相模原市教育委員会)を読んでも,やはり立場は変わらない。
 私は小学校でプログラミングを教える立場にはないし,孫はこれからだが子どもはもう小学生ではないし,何を言ってもどうこうなるものではない。
 したがって,「感想」をつぶやくぐらいの意味しかないのだが,それでも,考えはしっかりまとめておきたいと思う。
 特に,「なぜ,今学校でプログラミングを学ぶのか」(平井・利根川 技術評論社 2020)を読んで強くそう思う。間違っているとしか思えないからだ。この本,ツッコミどころが多すぎる。「そうかあ?」「変じゃん」「違うだろ」。
 同じ感想は「小学校プログラミング教育の手引き」についてもそうだ。初版,第2版,第3版と読んでいるが,もちろん基調は同じ。
 考えをまとめるにあたって,note を使わせてもらうことにした。考えをまとめてから書くのではなく,まとめるためのノート。「読解力」と同じ使い方だ。

 発端は,電子掲示板STSに,山梨県のいちのせさん(旧ハンドルはてっぺん)が久しぶりに書いた次の記事。

#5233 /5344 喫茶室 : stskis3
[Junji1se:いちのせ ] 2018/08/09 09:57 ( 8)
たいへんご無沙汰しております。いちのせですm(__)m
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定年退職して3年目です。
今は、日本一人口の少ない町『早川町』の教育委員会に勤めています。
毎日60km以上運転通勤しています。
 
国が進めている『プログラミング教育』がキナ臭くて、、、。
一人で考えていると堂々巡りするのでこちらにお邪魔してみました。


次のように反応した。

いちのせさん,おひさ    般若
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国が進めているプログラミング教育,私は否定的立場です。
やるのはいいが,「必修」は現場無視だし
そもそも「プログラミング的思考」なるものが意味不明。
「生きる力」も意味不明でしたが。


以下,いちのせさんと私,葵さんのやりとりが続く。


般若さん>ありがとうございます  いちのせ
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プログラミング的思考、とても納得できません。
そして、プログラミング教育の必要性も、とってつけたようです。
現場に混乱と不安を招くだけのような気がしています。
プログラミング的思考って   葵
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自分の思いを実現したりより意図した活動に近づけたりするために、どのように動きや対応した記号を組合せたり改善したりしていけばよいのかを論理的に考える。
また、~的という言葉が生まれた。「論理的思考」でいいのにねえ。

『手引』p.1に『魔法の箱』  いちのせ
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小学校プログラミング教育の手引(文科省)の1ページ
~なぜ小学校にプログラミング教育を導入するのか~
の真ん中あたりに
 
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プログラミングによって、コンピュータに自分が求める動作をさせることができるとともに、コンピュータの仕組みの一端をうかがい知ることができるので、コンピュータが「魔法の箱」ではなくなり、より主体的に活用することにつながります。
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この一文でもツッコミどころ満載ですが、、、。
たぶん、これを書いた人が小学生の頃を思い出して書いたのかもしれませんね~。
コンピュータが「魔法の箱」と呼ばれていたのはいつの頃だったでしょう。
 
ゲーム機とスマホとタブレットを全部ひっくるめて自分のおもちゃ・道具だと見なしてしまう小学生が全国にあふれていると思われる現代、時代錯誤的な言葉からスタートする『手引』っていったい。。。


続いて,「プログラミング的思考」について,「小学校プログラミング教育の手引」を引用して話が続く。


プログラミング的思考…。   いちのせ
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~小学校プログラミング教育の手引(文科省H30.3.)より抜粋引用~
 
プログラミング的思考(①~④)
意図した一連の活動をさせるために
 ① 必要な動きを分けて考える
 ② 動きに対応した命令(記号)にする
 ③ 組み合わせる
 ④ ①②③の中で試行錯誤しながら継続的に改善することで問題が解決する
 
~引用終わり~


この部分は,手引きの中の次の図をテキスト化したものである。

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本文中では,次の5段階になっている。

① コンピュータにどのような動きをさせたいのかという自らの意図を明確にする
② コンピュータにどのような動きをどのような順序でさせればよいのかを考える
③  一つ一つの動きを対応する命令(記号)に置き換える
④ これらの命令(記号)をどのように組み合わせれば自分が考える動作を実現できるかを考える
⑤ その命令(記号)の組合せをどのように改善すれば自分が考える動作により近づいていくのかを試行錯誤しながら考える

このあと,これについて①から④までと,⑤を分けて議論しよう。
①から④は,設計とアルゴリズム,コーディングの話,⑤はプログラミング全体の話である。
①から④を「プログラミングが必要か」で,⑤を「プログラミングは試行錯誤か」でまとめていく。(次々回以降)
その前に,「なぜ,今学校でプログラミングを学ぶのか」(平井・利根川 技術評論社)をばっさり斬っておこう。その方が読者の興味を引きそうだ。(次回)


注:本文中で丸数字を使っています。環境によっては文字化けするかもしれません。(さすがに今はしないかな)