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【ネタバレなし】劇団ノーミーツ「門外不出モラトリアム」が素晴らしかった

あまりに感動したので観終わったそのままの感情で走り書きしています。

劇団ノーミーツの初の長編公演「門外不出モラトリアム」。初回となる23日(土)15時の回で観てきました。とにかく一言、素晴らしかった

劇団ノーミーツのプロデューサーでもあるOut of Theater代表の広屋さん。昨年11月に私の勤める会社で主催したイベント内のトークセッションに出て頂いていて、その時お聞きしたエンタテインメントにかける熱い想いに、個人的にもめちゃくちゃ感動と刺激を貰ったことを覚えています。その後Out of Theaterが手掛ける「ミュージカル・ダイナー」にも遊びに行かせて頂きましたが、コロナの影響でそれら仕込んでいたイベントが全公演中止となったのは本当に悔やみきれない想いがあったはず。それでも、恐るべき速さでそこからZOOM演劇を立ち上げ、劇団ノーミーツとして長編公演を実施する、そのエンタメにかける熱量にまず心打たれています

▽その時のトークセッションをまとめたインタビュー

このトークセッションの中でも「お客さんが登場人物の1人になれるよう役割を与えてあげる」イマーシブ型エンターテインメントや空間づくりについて話されていますが、こうして本来やりたかった「街中」から場所が変わっても、届けたいエンタテインメントの本質をぶれさせずに、ただし今出来る最大限の形に変えてその表現を磨いているのって、本当に凄いと思うんですよ。

そんな熱量を受けて、それを実現するスタッフ・キャストにも拍手。スムーズなZOOM画面のスイッチングや、効果音や挟み込む映像のタイミングなど、短い時間で、しかも一度も顔を合わせることなく、快適な鑑賞体験を作る出せる体制を築けたのが凄い。本編鑑賞にチャット機能があったことは意外でしたが、鑑賞者同士の一体感作りや、今まさに起きていることとして臨場感を演出するだけでなく、ネタバレになるので詳細は伏せますが一部本編(?)ともリンクさせていてとにかく巻き込むのが上手い。PCの画面を見ているだけなのに、大きな劇場で皆でスタンディングオベーションをしているような感覚を起こしてくれるんです。

そんな装置によるリアリティの補完はあったとしても、それ以上に実際の関係性を感じさせる役者さんの演技も良かった。映画でも小説でも、まずキャラクターに興味を持たせることが物語を作り上げる重要なポイントになるところを、ものの数分で簡単にクリアしていく親近感の持たせ方。何より、けんじ…!見た方は分かると思いますが、彼が登場した途端のシーンスティラーぶりが素晴らしくって。そして誰よりも現在の私たちの心境を代弁するキャラクターでもあるけんじの存在が、まずは物語を動かすキーになるところにもぐっと来ました。

彼らを演出する衣装や小道具の使い方も凄く工夫されているので注目して欲しい。映画でもそれらはキャラクターを表現するひとつの方法なんですが、見せられる要素がほぼ上半身のみと限られている分、見える部分の衣装や映り込む小道具などでそれぞれの個性をキチンと見せているからこそ、これらのキャラクターへの没入感が生まれている気がします。「あー、こいつならそのZOOM背景選びそうだよね」感が凄い(笑)。

あとは、まい役の田島芽瑠さんが劇中でインスタのストーリーをアップするというシーンがあるんですが、リアルにインスタストーリーにあげているのが良かった!これは恐らくNETFLIXが「13の理由」で劇中キャラクターのSNSアカウントを作って運用していたところから始まった一連のSNS連動プロモーションの応用だと思うんですが、他と違うのは、これが今まさに生で上映されている作品の劇中だということ。他にも、めぐる役の主演・夏海さんが実際にテレビ電話を受けてその様子を横から撮るショットとテレビ電話画面をそのまま見せるショットがWで展開される表現も良かったな。今までに他であった演出でも、それを今まさにリアルにやっていることによる臨場感は唯一無二の体験です。

いろいろ言いましたが…最終的には物語に泣きました。「会えないまま過ぎていった大学4年間」という設定。その中で、私たち一人ひとりが抱える現実世界での寂しさや葛藤と向き合った物語。出来るだけネタバレを避けて多くの人に見て欲しいのでここでは詳細は控えますが、とある映画が大好きな私にとって、ありえた別の世界線を考えること、それを通して見つけるものを考えるこの物語は、ぐさぐさに刺さりました。



▽以下、全公演終了後の加筆▽


この作品が奇跡的だなと思うのは、「JOKER」があの時のアメリカの空気にぴったり合って大ヒットしたように、この“今”というタイミングの空気をキャッチしたのが大きいなと思っています。

4月でもなく。
6月でもなく。
5月23日、24日。

偶然にも、東京も緊急事態宣言解除(の可能性)前夜となったこの週末。自粛への疲れと、解除へのほのかな希望がある今だからこその物語。狙って出来ることではないけれど、これから宣言解除後にどうなっていくのかわからないZOOM演劇が、それでも立ちあがってからもの凄いスピードで完成されていき、一つの集大成的作品を残したことの刹那的な輝きに、コンテンツ制作をいっちょ噛みしたことのある人間としては感動せざるをえませんでした。

幸せな5人のスクリーンショット。感動をありがとうございました!

#門外不出モラトリアム

▽公式HP

▽予告編


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