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UADの「MANLEY® Variable Mu Limiter Compressor」がすごくボーカル向き

 こんにちは、イーヴィルな斉藤(@evilsaitoh)です。
 今回は買ってからずっと話していなかったバリミューの話でも。
(マスタリングコンプって感想書きにくくないっすか?)

1 Manley® Variable Mu Limiter Compressorとは

こんなの。設定が複雑そうに見えるけど簡単。

 マスタリングコンプです。
※2MIXを通して一体感を出すのが目的のコンプ

 乱暴に言えば「LA-2Aをマスタリングコンプにしたら色々変わってこうなりました」みたいな、オプトコンプみを感じます。Grace designのm102を濃密にしたみたいな。
 もちろん、LA-2Aよりもリリースがシャキっとしていたり、ぬるっとした効きとはまた違うんですが、乱暴に言っているので勘弁願いま~す。

前科三犯!

 んで、ManleyってVOXBOX(チャンネルストリップ)もそうなんですが、意外とクセ強っていうか、使うと「MANLEYっぽい」音になるんですよね。
 なんだろ、「さらさらする」感じ。清流系の音で下品にならないというか。ブリブリのシンセベースと合わせたらどうなるんだろう。


2 いいからトラッキングだ!

籠球黙示録アカギ

 どこかで見かけた表現ですが、バスケの球をドリブルした時のようなドムドムする速い低域を感じます
 男性ボーカルってモニターの低域でリズム取っていることもあって、自分の低域が見えるか否かが歌いやすさに直結するんですが、バリミューは低域の歯切れがいいのでモニターしやすいです。
(一方で、低域は少し減っているように聞こえるので、太さ全振りしたい!という方には向かない上品な音でもあります)

 また、ミックスでは低域によって高域がマスキングされない特徴もあり、そこら辺は流石マスタリングコンプと呼ばれるだけありますね。
(ほとんどのコンプは低域によってポンピングするので、2MIXを通すとヨレたり貧相になったりでマスタリングコンプ足り得ないのです)

周波数バランス&位相

 私の今使っている設定では、300Hzあたりから減っていて50Hzあたりでは最大5.5dBほど落ちています。
 MANLEYを「さらさらする」と言いましたが、実際、低域減ってるんですね。今知りました(無知の知)。
 とはいえ、今回みたいな減り方はレアケースで、コンプは正確に数値出ませんので信じるか否かは君次第だ!
(これは元々EQを測るソフトなので)


3 設定方法

今回の設定。 

 まず、真ん中の黒い部分しかいじらないので、アップにします。 

設定する部分

 このうち、右側にあるOUTPUTやRECOVERYは左側を設定すれば自動で同じ設定になるので、いじるのは片方でいいです。

 んで、左上から説明すると、
①RECOVERY…リリース
②OUTPUT…アウトプットの音量
③DUAL INPUT…インプットの音量
④THRESHOLD…スレッショルド(どれくらいの音量からコンプをかけるか)
⑤ATTACK…アタック
⑥MIX…コンプかかった音とかけない音を混ぜるノブ
※レシオがありませんが、COMPRESSモード時で約1.5:0、LIMITモード時で4:1~20:1の可変レシオのようです。

 んで、今回はなぜこんな設定にしたのかというと、ボーカルを前に出すためです。

①RECOVERY…ボーカルを前に出すために最速
②OUTPUT&③DUAL INPUT…良きところに。アウトプットはコンプかける前と同じような音量になるように設定。
④THRESHOLD…良きところに。今回は歌ってる中で一番小さい声が引っかからないように設定した。
⑤ATTACK…ボーカルを前に出すために最遅
⑥MIX…いじってない


 コンプレッサーの掛け方は以前の記事が詳しいです。


4 終わりに

実機。中に何本も真空管が入っている。

 単純なマスタリングコンプとしても高名ではありますが、マスタリングに使うとシャンとするというか、コンクールに送るならこれくらい上品な音のコンプ使った方がよさそうだなーと思うほどの音です。

 一方で、ミキシング最終段で強くかけるとポンピング一歩前でジェルの中を泳ぐような浮遊感がある音になってLo-Fi HIPHOPに合ったりします。俺は好き。

 今回はボーカルに使えるような音にしましたが、この機種自体は声を前に出すのはさほど得意ではないように感じます。
 これはCOMPRESSモード時のレシオが1.5:1で相当低いからで、LIMITモードにすれば前に出ます。

 LIMITモード時の音も好みではありますが、この低いレシオでさらさらとした音がバリミューの良さなので、私はCOMPRESSモードで録音→後段に1176を挿して前に出してあげる、などの処置をする方がおすすめではあります。
(ミックスの段でどれだけ前に出すかをいじれた方が楽、というのもあります)

 ボーカルへのモニターへの返しならデジタルコンプみたいな歌いづらさがなくてかなり高印象ですね。
 ただ、DSPの負荷は高め(Apollo Twinで約7%)なので、トラック全部に挿すのは厳しいですね。


補遺:LIMITモード

赤い枠のところでCOMPRESSとLIMITを切り替えできる。

 上で
・COMPRESSモード時で約1.5:0
・LIMITモード時で4:1~20:1の可変レシオ
 と説明しましたが、こちらで使った時の印象も述べるべきでしょう。

設定。スレッショルドのみいじった。
  • 声が前に出てくる能力は並。
    アタックもリリースもどちらも最速でも遅め&可変レシオのため深くリダクションしないとレシオが増えないからですかね。

  • 低域は多くなるようだが、速いので気にならない。

  • ボーカルの口が大きくなったような、ボワっとした感じが出るが情報量が減らない印象。

  • 音楽…というかナレーションとかASMRとかに向いている個性を持っていますね。

LIMITモード時。低域が3.5dBくらい増えている

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