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Soundtoysの「EchoBoy」がボーカルの立体感に寄与しまくる

 こんにちは。イーヴィルな斉藤(@evilsaitoh)です。

 今回はSoundtoys「EchoBoy」について。
 要するにディレイなんですが、昨年だか一昨年のブラックフライデーに購入してて、確か9,000円くらいだったと思います。
 定価だと30,000円もします。DAWにも標準でついているディレイに!? さんまんえん!!??

 Soundtoysは、Microshift(ステレオイメージャ?)が有名ですが、他のRadiator、Decapitator(ドライブ系)などでも暖かく(自然にハイ落ちしてくれて)非常によく劣化してくれるので好きです。

※「劣化してくれる」というのは悪い意味ではなく、割と音を汚すのはジャンル関わらず普通のことだったりします。

1 ディレイは「空間系」と「太さ」両方の性質を併せ持つ♥

 ボーカルエフェクターの中では、ディレイは影が薄い。

 上級者は当然のように使っていますが、ディレイをただの空間系エフェクトだと思っている向きが多いように思います。
 もちろんがっちり聞こえるような『効果』としてのディレイも使用するでしょうが、ボーカルを太くするためのエフェクターとしても使用できます。

「いや、言うてもディレイって空間系じゃん」と思うかも知れません。その通りです。
 RolandのRE-201などのテープディレイに代表するように、センドで送ってあげると昔っぽい空間を演出できますよね。

Roland RE-201 リバーブも内蔵してますけどね

2 ダブラーの存在

 んで、世の中にはダブラーというものがあります。これはごく短いディレイを使っているもの。
 テープを使ってボーカルをダブらせる効果を狙ったのはビートルズが最初とのことですが、それを効果を狙ってか、①ディレイ+モジュレーション=ダブラーという認識が一般的です。
 後は左右を違うディレイタイムにした「ハース効果」を狙ったものもあります(覚えなくてもいいです)。

Waves 『Doubler』 20年前のDTMキッズはこぞってWavesを買い漁った。

 ただ、今の時代ではダブラーは少し古くさい。
 いや、全然使うんですけど、ディレイタイムが長いと一気に昭和っぽくなります。
 狙いがあるならいいんですけど、もっと先入観を持たないような音で太さを出したい。
 あるいは②モジュレーションをかけたフランジャーっぽさがなおさら古くささを助長している気がします。

3 ディレイでダブリングする

 まとめます。
①ディレイ+モジュレーション=ダブラー
②モジュレーションをかけた音は古くささを助長する
 
ならば、ディレイでダブラーを作ればいい。

soundtoys「EchoBoy」

 どうすればいいのかというと、

  • MIX…エフェクトを掛けた音をどれだけ出力するかの設定です。
    →今回はセンドで使用するのでWet全振り。普通にインサートで使うなら50%くらいでいいんじゃないですか。知らんけど。

  • ECHO TIME…音が跳ね返ってくる時間です。
    →長ければエコー、短ければ太さが出るので、短めにします。今回はBPM140の1/32でかなり短くしています。耳で聞いて良けりゃ1/64でもなんでもOKです。

  • FEEDBACK…ディレイ音が返ってくる数(強さ)です。
    →左に振り切ります。EchoBoyは左に振り切っても少し返ってきて、フィードバックが多いといつまでも鳴っていて飽和します。

  • ローカット&ハイカット…ディレイにローカットなどを適用できます。
    →ディレイ音がそのまま返ってくると曲の邪魔をします。声の被せ(コーラス)はよく低域・高域をカットしますが、ディレイをダブラーの代わりに(被せの代わり)にかけているので、同じようにします。

  • TAP TEMPO…BPMを決めます。ECHO TIMEとの兼ね合いです。
    →FL STUDIOの場合、自動でDAWと同期してくれます。

  • SATURATION…ディレイ音に歪みを加えます。
    →「声が引っ込みすぎる、でもフィードバック上げると飽和感が目立つ」という時にサチュレーションをかけると短いフィードバックでも目立ちます。

  • 他の機能
    好きに使ってください(俺はあんま使わないです)

4 音の傾向

 使ってもらえばわかるんですけど、「空間系の音」ではなく「単にボーカルがにじんで馴染む」んですよね。

 ソロで聞かず、2ミックスの中に入れてみると、
・ディレイが多い→馴染むけどだんだん遠くなっていく
・ディレイが少ない→目立つけどだんだん浮いてくる

 のがわかると思います。
(センドに入れる量で調節するのが楽です)

 また、EchoBoyはデフォルトで音が左右に広がるような音になっているため、よくある「中央の中域がいっぱいになって音割れする」みたいなことが起こりにくいのがいいですね。

 いやまぁ、これ自体はまったく新しい方法ではなく、ギターの分野では「ショートディレイを使えばダブリングされるぜ!」ってのは普通に知られていて(思えばギタリストよりも空間系に詳しい人を知らないかもしれません)、ボーカルの周波数帯はギターの帯域に近いので、それを参考にしているわけですね。

 スラップバック・ディレイ(100ms~200msのフィードバックを絞ったディレイをかける)もボーカルには相性がいいですが、こちらは空間系な音というか、パフュームっぽさがあるテクノ系の音楽、あるいはロックで広さを出すような音になりがちです。強くかけたらカラオケみたいになります。
 昔Sound&Recording誌に「ボーカルに187msのディレイかけるとええで!」って記事が出たことで有名ですね。
(ただ、これも少し古めに聞こえるようになってきました。音楽は水物ですね)

5 普通のディレイとEchoBoyの違いはあるか?

 ディレイに求めるもの次第です。

 例えば、
・試しにやってみたい!
・ボーカルのステレオイメージはあまり広げたくない!
・もっと機械的なディレイが欲しい!

 という場合は、EchoBoyでなくてもいいと思います。

 例えば私が普段ハードユースしているFL STUDIOの付属ディレイはとてもシンプル。

FL STUDIO付属のディレイ。無料体験版をDLしてVSTだけ使うことも可。

 ハッキリ言って、これだけでも満足度は高いです。
(ただし、TEMPOが60BPM、STEPSが1notesまでしか指定できないのでどちらかというとスラップバックディレイになります)

 じゃあどんな人にEchoBoyを薦められるかと言うと、「難しいこと考えないでボーカルを良い感じにミックスしちゃいたい人」なんですよね。
 なんというか、「ミックスの行程の一つ」として捉えている人に向いています。
(どこまでもこだわりたい!というのであればBoz Imperial Delayを薦めます。俺は挫折しました)

 というのも、「センドで送るからMIXは最大!フィードバックは少ない方がいいからゼロ!ロー、ハイカットは徐々に消したいからこれくらい!」と頭の中の論理的な部分でセットすれば、感性に任せるのはテンポくらいしかありません。
 脳の感性の部分は早めに集中力がなくなるので、ほとんどを論理でやった方が楽です。
 それでいて、テープディレイ特有のラフさ、音の減衰が良い感じにしてくれるのでほとんどの場合で「これで行こうか!」となります。

 合わなきゃそもそもディレイという選択肢が間違っていたとすぐわかるので、そういう意味でも信頼できるディレイを持っておくのは楽です。

 というわけですが、今は良さそうなディレイもたくさんあるので、まずは手持ちのディレイで試してみるのもアリです。
 オススメを挙げるなら私が扱いやすかったのはWaves H-Delayとかでしょうか。ド定番だけどね!

 終わります。


 

 

 

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