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【レビュー】Neve 33609はボーカルの位置を定めるのに最良なコンプなのでは説(その他C-Maxなど)


 世にはブラックフライデーなるものがサガットステージの仏のように横たわっていたわけですが、皆様は素敵な買い物ができましたでしょうか?

もう仏が主役だろ、くらいの横たわりっぷり

 私はいつものことながらUAD(Universal Audioのプラグイン)を眺めていたわけですが、今回は「全体的に安くなってるけどクーポンは出ない」みたいな感じだったので特に買うことはなく。
 ですが最終日にこれを見つけました。

プラグイン2つで99ドル(15,000円)

 こりゃ安い、ってなもんで購入を決めました。
 いや15,000円が安いかどうかは一考の余地があると思いますが、UADさんが誠意を見せてくれたなら財布を出さないのは無作法というもの(?)
 まぁ導入をだらだらしても仕方ないのでさっさとレビューします。


1 Neve Dynamics Collection

 これはNeveの
・2254
・33609
 という2つのコンプレッサーがセットになっています。

 で、今回メインで語りたいのは「33609」の方。

①Neve 33609について

33609。俺の墓に一緒に入れてくれ

 Neve 33609は「ボーカルの位置決め」ができるコンプだと感じました。
 いや、俺がボーカルでしか試していないのでそう思っただけですが、ドラムのパンチを出すのにも良いらしいですね。

「Voの位置決め? なにそれ」と感じる人もいるかもしれませんが、私のコンプレッサー観は「コンプは音の前後を決めるもの」だと思っていて、特に前に出てくる音はコンプで作ることができます。


 コンプレッサーの理解はこちらの記事で。


 コンプによって「前に出しやすさ」が決まっていて、例えば1176などは「音質が変わることを容認できれば爆速で音を前に出せるコンプ」です。

1176。ATK1&REL7で誰でも前に出せる

 んで、33609ですが、挿した瞬間に「あ、これ声が大きかろうが小さかろうがカッチリ前に定位してくれるじゃん」ってわかります。
 いや、デフォルトの設定はちょっと声が大きくなるセッティングになっているのでちょっと卑怯なんですが(人間は大きい音を良い音だと勘違いする生き物なので)、コンプレッションを-2dBくらい、ゲインを+2dBくらいにするとアラ不思議! 声が前後にうろうろしない!

具体的にはこのように設定。スレッショルドとゲインのみいじった。

 これは不思議なことで、レシオが1.5と低レシオでかつスレッショルドも-2dB程度なのでぶっ潰しているわけではなく、素直な出音のまま声がスン…とセンターに収まってくれます。そして音が細くなるならまだわかるんですが、むしろ太くなるという…不思議だなぁ。
(パンチは出ますが、APIのスッカーン!としたパンチではなく原音で想像できうる範囲のパンチです)

 他のコンプでやろうとしたら、例えば前述の1176ならそれなりに潰さなければ声が前後にうろうろすることになり、たくさん潰すとブレス(息吸う音)も大きくなって耳障りになったりするものですが、これは非常に低レシオ&低リダクションでできるので自然な音のまま。

 試しにダイナミクスが大きくなりがちなバラードを歌ってみましたが、小さい声のときに奥まることもなく、大きい声の時に近く感じることもなく、一定の距離にいてくれます。
 声が近すぎると感じたらゲインを下げれば一歩下がってくれますしね。
 うーん、謎技術。やっぱNeveってパネェわ。


②Neve 2254

2254。WavesのV-Compとかはこっちが元ネタらしいですね。

 こっちはあまりいじれていないのですが、少しだけ(33609が良くて購入しようとしたらこっちもセットでついてくるのに気付いた)。
 浮遊感のある普通のコンプ…に感じました。
 ちょっと例えが適当かわかりませんが、Pulsar Muのようなふわふわした効きが特徴というか(Muはニュルニュルって感じだけど)。

 ちょっとこの形の音量メーターに慣れていないのもあるので今の時点で何かを語るのは恐れ多いですが、ボーカルの自然なダイナミクスを生かすようなテクニックがある歌手に使うならこっちの方がボーカルを魅力的に仕上げられる(でも他のコンプでも代用可)と思います。
 押して、引いて、の波のようなボーカルに使うなら、33609だと距離が固定化されていてつまらない。もっと秘密を囁くような距離感のボーカルから激動のサビがある楽曲を扱いたい! というならこちらですね。
 もっとも、有名なコンプなので他の機種に参考にされているからか目新しさは特に感じませんでした。いずれ評価します。


2 C-Suite C-Max Limiter

C-Suite C-Max Limiter。シンプル。

 2つプラグインが選べるので、もう一つはリミッターを購入しました。
 あまりレビューがなくて日本語のマニュアルもないというイエローモンキーをナメた企業姿勢に心ばかりのFuck Youを突きつけたいところですが、俺は寛大なのでPDFをセコセコ日本語化しました🖕

 要するに、
①GAINでインプット量を決める
②CEILINGで音量の上限(dBFS)を決める
③AGGRで……AGGRって何!? 初耳なんですけどォ!

 調べてみるとAggression(攻撃性)のようで、0だと透明なリミッターとして、9にすると荒々しくなるそうです。

英語のマニュアルを翻訳したもの。

 私はリミッターに関しては「余計なことをするな」という立ち位置を取るタイプなので、透明な0設定を使うことになるでしょう。

 音については、似た設定で他のリミッターと比較して試してみました。
A.O.M - Invisible Limiter G2…素直。過大な入力でも歪みにくい方だが、今回比較した中では一番歪みがわかりやすい。
NUGEN Audio - ISL 2…今までの主力リミッター。歪みがわかりにくい。どちらかというとサイドの音が飽和するとき太くなるので「今過大な入力が入ったんだな」とわかる。
C-Max…ずっと自然。飽和感もメーター見てたらわかるけど耳ではわからないと思う。歪まない。


3 終わりに

 KREVAが33609を使っているツイートを見かけて一人で興奮したのでこっちにも貼っておく。どっちもレジェンド。

 33609はボーカルモニターにかけるのもありで、そのままだと声が暴れてモニターしにくい、という時にいいでしょうね。
 いや、その前にマイキングとかマイクの選定とかプリアンプとかに気をつけろよ、というのはもっともなんですけど、個人だと持てる機材にも限りがあるので、モニターにだけかけるとか、あるいは最終ミックスの見通しが立っているなら録りの段階で掛けてもいいと思います。そんな変な音にならないし。

 2254は現時点では使うかどうかはわかりませんが、C-Maxの方はさっそくゲーム実況の方に使いました。
 YouTubeで流れる音なんかにみんな気を遣っていないんでしょうけど、俺が気になるからやっているというか。リミッター選びはこれでしばらくやめられるかな、というくらいC-Maxを気に入っています。


補遺:UAD公式のオススメチャート

 UADのHPは日本語対応になっていないページも多く、その中でも公式が「ボーカルに使うならこれを買った方がいいぜ!」とオススメしている表があるのでご紹介します。
 これ地味に良い表だと思うのでいつも紹介してる。

https://help.uaudio.com/hc/en-us/articles/115005654826-Which-UAD-Plug-Ins-Should-I-Use-

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