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短歌

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暇なとき好きになった短歌
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記事一覧

ふるさとの山が夜ごとに刷り出だすガリ版刷りの旧きほしぞら

 鈴木加成太『うすがみの銀河』

暇瑞希
3週間前
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オットセイと罵りあへる夢を見し朝ひつそりと目方をはかる

 石川美南『砂の降る教室』

夢の感触が残ったまま乗る体重計が冷たい。

暇瑞希
1か月前

ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた

友達の遺品の眼鏡に付いていた指紋を癖で拭いてしまった

 岡野大嗣『サイレンと犀』

あぁ取り返しがつかない。

暇瑞希
1か月前

布団より片手を出して苦しみを表現しておれば母に踏まれつ

 花山周子『屋上の人屋上の鳥』

暇瑞希
1か月前

白い息人は吐きいる永遠の青ぞらいっぱいの無色の孔雀

 花山周子『風とマルス』

暇瑞希
1か月前

電話したいと思うときには朝の四時うらがえしても朝の四時なり

 花山周子『屋上の人屋上の鳥』

暇瑞希
1か月前
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美術館を巡りめぐって落ちゆけるわが内臓は深海にある  花山周子『屋上の人屋上の鳥』 美大生だった筆者にとって、作品と対峙する時間は静謐で神聖なものであると同時に、小さな絶望が育まれる時間でもある。

この空の青の青さにやってきた屋上の人屋上の鳥

 花山周子『屋上の人屋上の鳥』

暇瑞希
1か月前
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目を閉じていつも見ていた風景に傷のごとくに蟻の這いくる

 花山周子『屋上の人屋上の鳥』

暇瑞希
1か月前
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祖父の内にありしシベリアも燃えてゆく鉄扉の向かう火の音たてて

 澤村斉美『Gallery』

暇瑞希
1か月前
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名づけ得ぬまま過ぎ去りし感情は昨日食いたる馬に似るかも

 澤村斉美『Gallery』

暇瑞希
1か月前
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喪主として立つ日のあらむ弟と一つの皿にいちごを分ける

 澤村斉美『夏鴉』

暇瑞希
1か月前

ああ鬼がもうすぐここに来るここに来る地底、脚、腸、胃を抜けて

 石川美南『砂の降る教室』

暇瑞希
1か月前

ガスコンロの焔は青き輪をなして十指をここにしずめよという  内山晶太『窓、その他』 危険なのにどこか甘やかな衝動を前にして、くらくらしながらもぎりぎり踏みとどまる。