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現実にはいない人達と夢の中、川で泳いだ話。

多分小学生ぐらいだったろう。
人の記憶って曖昧なものだけど、この夢のことははっきりと覚えている。

私はおそらく近所の川だろう所で泳いでいた。
そこには大人と子供が合わせて十人ぐらいいた。
周りは鬱蒼と草が生茂る中、その川は浅瀬が続く水の綺麗な川だった。

私は家族とは来ていない。
ひとりで川で遊んでいる。
子供用のプラスチックのバケツで水をすくったり、川底の石を弄んだりしていた。

周りはほとんど親子連れだった。
不思議なことに私はその人たちとは顔見知りだった。
みんな優しく私を受け入れてくれ、夢のように美しい時間が過ぎていった。

体を水に浮かべて下流に流れては戻り、流れては戻りという遊びを
私は繰り返していた。
下流は真っ暗で何も見えず、その上には橋がかかっていた。

一緒に遊んでた大人が言った。
『あの橋の向こう側に行ってはいけないよ。』

私はその言葉を守り、近くまで流されては行くが、
決して橋の下をくぐって向こう側へは行かなかった。

そうしてるうちに
『そろそろ帰ろう』
と誰かが言い、そこで多分目が覚めたのだと思う。
目覚めるとあの優しい人たちの顔を一人も思い出せなくなっていた。

あまりにも優しくて楽しい時間を私は忘れられなくなり、
夢で見た場所へ行ってみた。

あの場所だと思える場所があった。
そこはやっぱり鬱蒼と草が生茂り、その草むらの下の方から水の音がゴウゴウと聞こえてきた。

『やっぱりあったんだ。』

同じ場所が現実にも存在したことに私は嬉しくなり、
川へ降りる道を探したが、草むらに遮られ見つける事は出来なかった。

その後も諦めきれずその場所へ何回か足を運んだが、川へ降りる事は出来なかった。

あの美しい夢を思い出すたび私はなぜかとても懐かしくて泣きたくなる。
みんなが優しくて、みんなが私を受け入れ愛してくれる場所。

あそこは天国だったのだろうか?
それとも私の願望が作り出したものだったのだろうか?




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