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【感想】私は確信する

2018年 フランス・ベルギー

監督 アントワーヌ・ランボー
出演 マリナ・フォイス
   オリビエ・グルメ
   ローラン・リュカ

あらすじ

失踪した妻を殺した容疑で裁判にかけられたジャック・ヴィギェ。ジャックの娘と知り合いであるノラは、彼の無実を証明するため、敏腕弁護士であるデュポンに弁護を依頼する。
デュポンに協力を促され、彼の仕事を手伝うことになったノラ。通話記録の書き起こしをしているうちに、証人たちの証言が矛盾していることに気づく。ノラは真相解明のため、『正義』を信じて奔走するが……。
フランスで実際にあった「ヴィギェ事件」をもとに、司法のあり方へと一石を投じるサスペンス映画。

感想

この映画、背景になった事件とか監督が映画にすることになった経緯とか、その辺を掘り下げるとかなり興味深い話があるんだけど、今回はあくまで映画としてどうだったのかだけ感想を述べます。知りたい人はググれ。

おフランス映画で法廷サスペンス、組み合わせだけ見るとかなり退屈だろうなと思って期待せずに見たんですが、もうびっくりするほどエキサイティングな映画でした。

画的には、法廷→ノラの調査パート→法廷……の繰り返しで地味なはずなんだけど、どうしてこんなに緊迫感があるのか。正直、分析できる自信はないんですが、一つだけ言えるのは、展開が超スピーディだということ。新しい事実がポンポン出てきて、裁判がぐるぐる回る。フランス版の『逆転裁判』を見てるようなイメージ。

自分で言っておきながら、逆転裁判の例えはかなりしっくりきました。調査パートと裁判パートが交互に繰り返されるストーリー。被告人を有罪にするために、証人が暗躍していた結果、それがばれて逆に容疑者になる展開。ほら、完璧に逆裁じゃん!

ただ、この映画はあくまでも実話ベースなので、めちゃくちゃ怪しい証人が有罪になることはありません。むしろ、そういうふうに犯人だと決めつけること自体を批判している映画になってます。

被告人であるジャックも、メディアで大々的に殺人者だと報じられ、証拠も、ましてや死体すらないのに殺人の容疑で逮捕されていますから。タイトルは原題も『私は確信する』なんですけど、これって見たものをそのまま鵜呑みにすることによって有罪だと『確信』しているという皮肉的なタイトルなんだろうなって思います。

主人公のノラも、実はその状態に陥っているという構図にしたのも面白かった。初めの頃は、正義と信じて尽力するヒーローみたいなんですが、ジャックではなく証人のデュランデが犯人だと『確信』して徐々に暴走していく。子供も仕事もほったらかし。だけど、視聴者は主人公にどっぷり感情移入しているから、中々その事実には気づけない。最終盤の弁護士の言葉によってノラと一緒に我々もハッと目が覚めるんです。私たちも見えているものだけで勝手に『確信』していたのだと。この物語構成が見事としか言いようがないです。

素晴らしい映画なので特に貶すところはないんですが、注意するとすれば、これはしっかりフランスの映画なんだということ。妻に夫公認の愛人がいたり、シングルマザーの貞操観念だったり、あんまり注釈なく映画でサラッと流れるのですが、我々お堅い日本人の価値観からすれば違和感を覚えてしまうかも。流石は愛情の国フランス。受け入れましょう。

まとめると、逆転裁判っぽい展開が面白いが、その面白さに踊らされて誤った『確信』をしていないか疑いましょう、という映画。事実は小説よりも奇なり。

以上、閉廷。お疲れ様でした。

視聴:アマプラ

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