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【感想】見えざる手のある風景

2023年 アメリカ
監督 コリー・フィンリー
出演 アサンテ・ブラック
   ティファニー・ハディッシュ

あらすじ

主人公のアダムくんは絵が描くことが好きな学生で、今日も庭でお絵描き中。空を見上げてよし描こうと意気込んだ瞬間、視界を横切っていくのは大きなUFOだった。
「ちっ、またかよ」と悪態をつくアダム。何を隠そうこの世界は、異星人とのファーストコンタクトが起こり、彼らがいるのが当たり前になっているのだ。
宇宙人との関係性をシニカルに描いた社会風刺ムービー。

感想

楽しむためにはある程度の教養を求められる映画、だと思う。主人公が『アダム』でタイトルに『見えざる手』と入っていることから、ピンとくる人がいるかもしれないが、有り体に言ってしまえば本作は資本主義に対する皮肉的映画である。

見えざる手について詳しく知りたければ、ググればいくらでも出てくるが、この映画を見る上で知っておくべきことは、それはすなわち神とでもいうべき存在で、市場経済をなんかいい感じに調整してくれる不可視の存在であるということ。それを可視化するためにこの映画では宇宙人という姿で表している。

とにかく簡単に言ってしまえば、独善的に地球人を管理しようとする宇宙人=ファッキン資本主義という構図だ。資本主義が行き過ぎれば、強大な資本家たちによる管理社会になってしまい、その苦しさから下層民が生み出したエンターテイメントも、結局は食い物にされちゃうんだぜ、ってのが大体のあらまし。それさえ理解すれば、映画の大筋は掴むことができると思う。

ほいじゃあ映画としてはどうなのって話だけど、正直言ってストーリーにあまり魅力はなかった。少なくとも好みではない。風刺! 皮肉! ってところに全振りしまくった結果として、やけに散らかってしまっていた印象でした。

初めの恋愛リアリティショーをやってた頃はまだ分かりやすかったと思う。金持ちに娯楽を提供してるって流れも独創的で面白かったし、主演二人の初々しいイチャコラも見ていて微笑ましかった。本当の恋愛じゃない! と宇宙人に訴えられるシーンはワクワクも最高潮で、なるほど、ここから二人して資本主義に刃向かっていく流れになるのかな、なんて思っていた。

だけどそこからは新しい展開がポンポン出てくるんだけど、結局は全て資本主義の皮肉に使われるばかりでストーリーの繋がり的に面白いとは言えない。何よりヒロインがほとんど映画から姿を消すので、前半の雰囲気が好きだった私からすれば盛り下がる一方だった。なんか裏で新しいパートナー見つけて恋愛番組やってるし。ネトラレは滅びろ。あと最後何食わぬ顔で出てきたのもモヤモヤするポイントだった。

確かに風刺的作品として見れば素晴らしい出来だと感じる人が多いのかもしれないが、自論としてまず映画とはエンタメであると思っている私としては、いまいち満足できなかった映画でした。宇宙人の造形や社会構造なんかはすごく練られてて面白かったので、もう少し万人向けの内容に舵を切っていれば良いバランスの映画になったのかも、なんて偉そうに批評してみたり。

そんなわけでまとめです。社会風刺としては独自の方法で切り込んでいて斬新でしたが、風刺画を見て楽しめるのは知識人だけ。宇宙人を出すなら猿でも分かる映画にしてほしい。そんな映画でした。でも最後のタイトル回収は割と好きよ。

以上、明日はいよいよ大晦日です。お疲れ様でした。

視聴:アマプラ

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