くふうハヤテ 竹内奎人投手の医師国家試験合格が心から嬉しく感じられます

本日2024年3月15日に第118回医師国家試験の合格発表が行われました。
私の直接知っている後輩の中にも今年国試受験の人もいましたし、今年度医学部を卒業される著名人の方のニュースも報道されています。

そうした中で私が最も嬉しかったのは、今季よりNPB二軍に参入した“くふうハヤテベンチャーズ静岡”の竹内奎人投手が医師国家試験に合格されたというニュースです。

私自身は竹内投手とは何の面識も無く、メディアを通じての情報で存じ上げるのみでしたが是非とも合格されて欲しいと願っておりました。

まずは医師国家試験(国試)について
私が受けたのは第112回の国試でしたが、僅か6年の間でも年々求められる知識量は増えていますし、より実臨床の現場を意識した、受験生に考えさせる問題がより出題されているという印象があります。
それでありながら近年は一般・臨床問題での合格基準点も上がっているという事で、医学生全体の知識や問題演習のレベルが格段に向上している事が伺われます。(恐らくはmedu4やQ-Assistといった映像講義の進化や、医学生全体が早期より国家試験対策を始めるようになった事も大きいのでしょう。)
そうした中で見事国家試験合格を果たされた事、本当に尊敬致します。(その思いは、今回受けられた全国の他の国試受験生の皆さんに対しても同様です)

次に、野球選手としての竹内投手について
実は私は以前から『医学部医学科出身のプロ野球選手が誕生する事』を夢見ていましたが、同時に実際には難しいだろうなとも思っていました。
まず、医学部医学科は6年制なので、現役で大学合格しストレートで卒業したとしても一番早くて24歳でのプロ入りとなります。
また形の上では医学部生が野球の大学リーグに参加する事も恐らく不可能ではない筈ですが試験や臨床実習がある中で並行していくのは並大抵ではないですし、かと言って東医体や西医体といった、全国の医学部だけが参加する大会もありますが、そこで活躍した場合でも医学部以外の学生も含めた大学生との比較で選手としてどれだけの位置にいるのかが明確に判断しにくいため、NPBのスカウトの目もなかなか向かないのではないか。
そう考えていたため、可能性は理論上ゼロではないけれど、今後数十年経っても実際プロ入りする選手が果たして実際出てくるだろうか……と考えていました。

ですが竹内投手の事を昨年のドラフト会議の少し前に知って衝撃を受けました。(高校・大学野球やドラフト情報に詳しい方であればもっと前から御存知だったかも知れません)
12球団からの指名は無かったものの、まずドラフト候補になるレベルまで登り詰められた事が凄まじいと感じますしその後、ハヤテ223(現在のくふうハヤテベンチャーズ静岡)のトライアウトを受け、NPB入りを引き続き目指して行かれる事も応援したいと思いました。

『医師を養成するのには税金が投入されているのだから、医学部を卒業したのに医師として働かないのは社会に貢献していない。』だとか『同じだけの税金を投入して医学生を教育するなら、より若く、より長い年数(主に実臨床で)働ける人を医学部に合格させるべきだ。』という声はこれまでにも散見されました。
それは医療関係者で無い方が言う場合もあれば、時として医師をはじめとした医療従事者自身がそのように言う場合もあるでしょう。
勿論それは個々人の考え方です。

ただ、あくまで私自身の考えを書かせて頂くなら、医学部出身で医師免許を持っていても医師として(公衆衛生や医学研究も含めて)勤務せず、全く別の分野で働く方がいたって全然良い事だと思います。
また、年齢を重ねてから再受験で入学される方がいるのも少しも悪い事でも狡くも無いし、医師と(文学、音楽、芸能など)他の活動・仕事を並行して二足の草鞋を履く人がいても全く責められるような事でも無いと考えるのです。

裏を返せば、今の私自身は勤務医として働いていますが、だからといってそうではない医学部卒業生と比べて自分が偉いだなんて事は全く思いません。

一人一人の医師、医学生が自らのやりたい事として医療に専念し続けたいと思う事それ自体は一つの崇高な考えですし当然医療現場にはプラスになることでしょう。
ですが大学で医学を学んだ経験を有する人が他の分野で活動される事も社会全体にとって意義のある事だと私は考えますし、医師は医療において重要な役割を果たす職業ではありますが決して単なる社会の歯車や手駒では無い。というのが私の意見です。
それは違うだろう!と考える方もきっといらっしゃるかと思いますが、重ねて申し上げますがあくまでも私の思いという事で御理解頂けると幸いです。

話を竹内投手に戻しますと、今回、くふうハヤテへの入団(ちょうど本日のオリックス戦で投手として登板されました)と医師国家試験合格を両方成し遂げられた事が心より喜ばしいと感じられますし、私ごときが言うのも僭越なのですがこれからの御活躍も全力で応援していきたいと思います。

最後に、この度の第118回医師国家試験に合格された受験生の方、本当におめでとうございます。これまでの試験とはまた違うプレッシャーがあった事と思いますが、見事に努力を結実されましたね。

そして惜しくも合格は成らなかった方も、医学部のカリキュラムを乗り越えて、この医師国家試験の受験資格を手にする所まで来られた皆さんの力をもってすれば、次回必ずや良い結果が得られる事と信じております。

全ての第118回医師国家試験受験生の皆さん、本当にお疲れ様でした。

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