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CXO・CDO超会議「声がかかるデザイナー」の共通点は? #教えてデザイン

時代の変化とともに、デザイナーに求められるスキルも変わっています。そんななか、「声がかかるデザイナー」になるにはどうしたらいいのでしょうか。

悩めるデザイナーのため、CXO・CDOたちが自社の事例をもとに解決の糸口を示すイベント「CXO・CDO超会議 #教えてデザイン 」。今回は、マネーフォワード 執行役員 CDOの伊藤セルジオ大輔さん、マネーフォワード ホームカンパニー カンパニーCXOの久冨伸彦さんをゲストにお迎えし、note CXO 深津貴之さん、note CDO 宇野雄さんとともにお話をおうかがいしました。

マネーフォワード、noteともにCXO・CDOのポジションを社内に置いていますが、その役割は異なります。2社それぞれのCXO・CDOの視点から、いまの時代のデザイナーに求められることなどについて存分に語っていただきました。

CXO・CDOを置いている意味は

質問1「noteとマネーフォワードがCXO・CDOを置いている意味は?」

セルジオ CXO・CDOの定義は各社によって違うと思います。マネーフォワードはいま、BtoB、BtoCと合わせて40〜50のサービスを展開しています。そのなかで僕が全社のCDO、久冨さんがホームカンパニーのCXOという形で役割を分担しています。

伊藤セルジオ大輔さん
株式会社マネーフォワード 執行役員 CDO

久冨 僕はホームカンパニーのCXOとして、BtoC事業のなかのサービスに入り込んでユーザー体験を整えたり改善したりといったことに注力しています。セルジオさんとのみ分けは明確にできていますね。

久冨 伸彦さん
株式会社マネーフォワード ホームカンパニー カンパニーCXO / デザイン部部長

宇野 noteはあえて役割分担をしていません。深津さんと僕とで役割が重なっている部分と重なっていない部分があることをお互い認識していて、その両方を生かしたいと。

一方、深津さんと僕とは当然キャリアやバックグラウンドが違います。僕はずっとインハウスで過ごしてきたので、プロダクトを持った数はそこまで多くないけれど、そのぶん深く関わってきました。

深津 僕の場合はnote以外の仕事やクライアントもあり、触れているサービスや業種が多いのが武器なので、やはり横断的な施策やナレッジベースの部分の提供をすることが多いです。広く全体に関わることが多いぶん、一つひとつのフォーカスが薄くなるところが出てくるので、宇野さんにもう少し濃い部分を担っていただいています。

宇野さんをCDOとしてお招きしたのも、医者のセカンドオピニオンのように、複数の角度から投資をしたほうが打率が上がるという考え方に基づいています。ですので、いまのところは完全分業は考えていません。少し特殊な形だと思います。

セルジオ でも、二枚看板というのは本当に強いですよね。

宇野 そうですね、強くしたいんですよ。noteというプロダクトを2人で一緒に見るというところが肝かなと思っています。

優秀なデザイナーの条件とは

質問2「優秀なデザイナーの条件は?」

深津 これは、まず「デザイン」の定義について考えたほうがいいかもしれませんね。みなさんにとってのデザインの定義と、優秀なデザイナーの条件を教えてください。

セルジオ マネーフォワードは、デザインというものを広義にとらえています。「本質的な価値を見出して届ける」ことを重視しているので、プロダクトをつくるときも、ユーザーの声を聞くところから、コンセプトを導き出して設計し、最後の仕上げのところまで見ることをデザイナーの役割として求めています。

また、マネーフォワードのバリューとして「ユーザーフォーカス」があるので、ユーザーフォーカスを体現する役割としてデザイナーを定義しています。ですので、デザイナーはかなり広い領域に向き合うことを求められていますね。

マネーフォワードの場合、スモールチームでプロダクトをつくっていくことを大切にしているので、それこそ社内にスタートアップがたくさんあるようなイメージです。各チームにデザイナーが最低1人入って、その1人がマルチにやっていくというのがベースになっています。

宇野 形のないものや見えないものを、見えるようにする、さわれるようにする、ひとが知覚するようにする、そういうトランスレートがデザインだと僕は定義しています。それをやるひとを全員デザイナーだと言うこともできますが、noteではアウトプットまで導くひとをデザイナーと考えています。

定義としてはセルジオさんがおっしゃったように広い範囲で、リサーチから何から何まで全部やっていただくんですが、それはいろいろなひとの力を借りていいと思っています。ただ、最終的にアウトプットまで連れていってくれるひとがデザイナーだと。

宇野 雄さん
note株式会社 CDO

セルジオ アウトプットに関しては、いままでのデザイナーは抽象的なコンセプトみたいなものを具体的な見える形にしていく、「抽象から具体」のところが強かったと思います。でも最近の傾向として、たとえばユーザーのさまざまな声からコンセプトを導き出すみたいな「具体から抽象」の力を求められるようになった気がしていて。

そこがいままでと少し変わってきていると思うので、デザイナーとしてのキャリアの重ね方も、いままでの抽象から具体だけじゃなくて、具体から抽象をどう導くかというところが結構問われてくると思います。

久冨 「デザインとは?」と聞かれたときに一番最初に思い出すのは、大学のときに川崎和男教授に教えられた「デザインとは思いやりだ」という言葉です。やっぱりひとのことを理解して、そのひとを思いやって何ができるかということを考え、手法はなんでもいいけれどそのひとに対して何かしら提供してあげるということなんだろうなと。

あとは、セルジオさんからもありましたが、マネーフォワードではデザイナーの働き方が広範囲に渡るので、ほかの職種の方とうまくコミュニケーションをとることが必要です。いろいろな職種の方の言葉に合わせながらコミュニケーションをとれるひとが優秀なデザイナーなのかなと思います。

深津 僕の定義では、課題のなかに存在するカオスの量を最小化することがデザインであるととらえています。アンノウンなものをノウンにする、予測不能なものを予測可能にする。あるいはアンコントローラブルなものをコントローラブルにする。そのための仕組みやフレームを設計して施工するのがデザイナーで、デザインとはそのフレームを定義すること。

定義することの次に解決がきますが、それをグラフィックで解決するひとがグラフィックデザイナー、プロダクトで解決するひとがプロダクトデザイナーです。ただ、解決のパートに関しては適切な手段で解決すればいいので、たとえば自分がグラフィックデザイナーでグラフィックで解決できるならそれをグラフィックで落とせばいいけれど、グラフィックよりもプロダクトとして解決するほうが適切ならば、その課題をプロダクトデザイナーにパスすることが必要になる。そこまでを含めてよいデザイナーの仕事なのかなと考えます。

モデレーター:深津 貴之さん
note株式会社 CXO

デザイナーの増加にともなう課題とその乗り越え方

質問3「デザイナーが増えたことで課題になったことと、その乗り越え方は?」

セルジオ 僕が2019年にマネーフォワードに関わりはじめたころは、デザイナーの人数は10数人でした。それほど大人数ではありませんでしたが、それでも互いが何をやっているのかわからなくなったり、ナレッジの循環が起きないという状況がありました。

そこで、相互理解を促すような場をつくろうと、デザイン組織の年表をつくるワークショップをやりました。何年にだれが入ったとか、何をつくったということを年表に書き込んでいくんです。そうすると新しいメンバーも過去のヒストリーを知ることができるので、もともといるメンバーとの目線が合います。人数が増えてきて情報のギャップに悩んでいる場合は、年表をつくるのはおすすめです。割とすぐにできるので。

深津 年表はおもしろいですね。noteの場合、一番象徴的だったのは、宇野さんをCDOに迎えたことです。僕はCXOですけど、自分の会社やクライアントをほかに持っていて、二足のわらじでやっているので、プロジェクトやメンバーの数が増えてくると僕がボトルネックになりかねないということがあって。そこにガンガン無双で回せる宇野さんがCDOとして入ってくれたことで、僕の弱点の部分をカバーしていただいているんです。

このように層の厚み、層の多様性を増やすことは結構意識しています。デザインチームもひとが増えてくると、あるスキルに特化して厚みを出すひとが増えてくると思います。

セルジオ スキルの多様化は進みますよね。マネーフォワードではいま、ラダーを分けるということをやっています。プロダクトのデザイン、コミュニケーションのデザイン、組織のデザインなどの各部門でそれぞれがどういった役割を担っていくのかを明文化しています。

久冨 デザイナーが増えるなかで、評価制度もフェーズごとに試行錯誤しながら変えていっています。そのとき最適なものはなんだろうとつねに見直しながらつくっています。

セルジオ 弊社の場合は、「ミッション」「ビジョン」などの組織カルチャーを浸透する役割をデザイナーが担っていたりもします。

深津 「ミッション」「ビジョン」「バリュー」をつくると楽なんですよね。北極星を目指して走れば多少遠回りになってもだいたいいつか着くのと同じように、全体の指針をつくればなんとなく機能するし、オペレーションのコストも減る。ひとが増えれば増えるほど、難しいことを説明しても全員に伝わらなくなるので、全体の指針を示すことは大事です。

セルジオ おっしゃる通りです。具体的な課題はたくさんあるので、それを解決することももちろん大切ですが、やっぱり根っこの部分をしっかりとみんなが握れているのかというところはかなり重視しています。組織カルチャーの浸透にデザイナーが関わっているのは、まさにそういった理由です。

宇野 なるほど。それを仕事の1つとしてきちんと定義しているのは強いですね。なんとなくやっているパターンが多いと思うんですよ。「これはデザイナーの仕事です」と宣言できていない会社さんが多い気がして。

セルジオ 宣言しちゃったもん勝ちかもしれないですね。

デザイナー採用について

セルジオ マネーフォワードは「マネー」の会社だと思われがちですが、「フォワード」の会社でもあります。この社会を前に進めていきたいという気持ちでやっています。そのためにデザインが役立てることはたくさんあると思います。

マネーフォワードでは新卒・中途ともに、デザイナーを絶賛採用中です。ご興味ある方は、マネーフォワード採用サイトからご応募ください。

深津 本日は「声がかかるデザイナー」の共通点というテーマでお送りしました。時代の変化とともに、デザイナーにも抽象レイヤーのモデリング、統括といった横断的なスキルが必要になってきています。そのためには、デザインをデザインとして語るだけでなく、ビジネスの言葉としてバリューを示したり定量化したり、あるいはエンジニアの言葉としてプレゼンテーションをするといったような、デザインの価値をほかの言葉に翻訳するということが非常に大事だと再確認しました。

noteでは、これからnoteを一緒に盛り上げてくれるデザイナーを募集しています。noteの仕事に「興味がある」「話を聞いてみたい」という方は、「noteカジュアル面談エントリー」からご連絡ください。ご応募お待ちしています。

登壇者プロフィール

伊藤セルジオ大輔さん
株式会社マネーフォワード 執行役員 CDO

デザイン事務所の代表を経て、2020年にマネーフォワードのCDOに就任。以来、経営にデザインを取り入れる、デザイン組織の強化、プロダクトデザイン品質の向上、全社ブランディングなどに従事。
note / Twitter

久冨 伸彦さん
株式会社マネーフォワード
ホームカンパニー カンパニーCXO / デザイン部部長

チームラボ、ヤフーを経て、2019年にマネーフォワードに転職。新規事業のデザインを担当後、デザイン部部長・カンパニーCXOに就任し、toC事業のユーザー体験設計、チームマネジメントなどに従事。
note / Twitter

宇野 雄さん
note株式会社 CDO

制作会社やソーシャルゲーム会社勤務の後、ヤフー株式会社へ入社。Yahoo!ニュースやYahoo!検索などのデザイン部長を歴任し、その後クックパッド株式会社でVP of Design/デザイン戦略本部長を務める。2022年2月よりnote株式会社 CDOに就任。東京都デジタルサービスフェローの他、数社でデザイン顧問/フェローも請け負う。著書に『はじめてのUIデザイン(PEAKS)』『フラットデザインで考える 新しいUIデザインのセオリー(技術評論社)』など。
note / Twitter

深津 貴之さん
note株式会社 CXO

インタラクション・デザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブユニットTHE GUILDを設立。noteのCXOなどを務める。執筆、講演などでも精力的に活動。
note / Twitter

▼アーカイブ動画は以下よりご視聴いただけます

text by 渡邊敏恵


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