見出し画像

失敗しない地域取材の方法|経験者が語る経験0からのイロハ

「地域への取材記事の書き方がわからない」
「どんな取材道具を揃えればいいかわからない」
「そもそも取材の流れがわからない」

地方創生、地域活性化などの目的のため地域取材が必要になってきます。しかし地域取材に初めて挑戦しようと思っている方は、だいたい上記のお悩みを抱えます。私も初めてのときは同様でした。

この記事ではそんな方を対象に、「準備編」「道具編」「取材中編」「取材後編」「マインド編」の順にできるだけ簡潔に紹介しています。

それぞれの内容は以下になっています。
・準備編:取材前にしておくべき準備
・道具編:取材に必要な道具
・取材中編:取材中の対応
・取材後編:取材後の対応
・マインド編:取材に臨む心構え

また本記事は、一般的な取材にも役立つ汎用性の高い内容になっています。 が、あくまで「取材初心者」向けです。ビギナー取材者が最低限やるべき事柄のみ書かれていることに注意してください。
※もっとエキスパートになると、カメラレンズの選定や前乗りして現地調査など、より綿密になるケースも多々あります

この記事では以下の用語を短く略しています。
取材依頼者(記事を載せる媒体)=依頼者
取材対象者(取材を受ける人)=対象者
取材者(取材をする人)=これは略さず取材者

※ちなみに出版業界では取材をする人のことを「インタビュアー」、取材を受ける人のことを「インタビュイー」と呼びます。


地域取材への準備編

ここでは地域取材をするために、あらかじめ準備しておく12項目を順序立てて紹介しています。

1. 依頼者の要望を把握する

まず依頼者がどういった記事を求めているのかという要望を聞き出します。依頼者とは、Webメディアや雑誌、新聞など、いわゆる媒体のこと。メディアであったり、まれに自治体であったりします。

聞くことは「テーマ」「目的と狙い」「取材相手」「文字数」「スケジュール感」「読者層」「トンマナ」など。追加で要望があるかも必ず聞きましょう。
※トンマナとは、デザインやスタイル、文言など媒体ごとに決められたルールのこと

2. 対象者の人選をする

対象者の人選は「依頼者が行なう場合」「取材者が行なう場合」の2パターンがあります。前者は依頼者に任せっきりになりますが、後者は自分で対象者を見つけなくてはいけません。

「依頼者の要望(テーマ)に沿った人」+「自分が取材してみたい人」+「読者が興味を持ちそうな人」の3つが重なる人を吟味した上で人選しましょう。

3. 取材日を対象者と調整する

日程の調整は、依頼者と対象者がやり取りしている場合もありますが、ここでは私たち取材者が行う状況を想定しています。地域取材の場合、対象者の多くは現地在住者です。そのため午前中取材の場合、前日入りを考えた上での取材日と想定取材時間を対象者とすり合わせしましょう。

4. スケジュール感を知らせる

取材日の調整が終わったら、記事公開までのスケジュール感を対象者とシェアします。

以下に例を示しておきます。
・取材日
・執筆期間(対象者から素材の受け取りも含める)
・先方チェック期間(対象者の記事確認)
・依頼者への提出日(入稿日)
・記事公開日(決まっていれば)

5. 対象者の情報を把握

対象者が「何をやっている人か」「どんな人か」といった情報を把握しておきます。取材を受けていた場合は過去記事を読み、書籍を出していた場合は購入して読んでおきます。

また、その人の職業や活動内容も知っておく必要があります。詳しくは取材で聞くので、著書がなければWebベースの情報のみでOKです。

6. テーマを決める

あらかじめテーマを決めない取材者もいます。しかし初心者は取材中、迷走する可能性が高いので、元々テーマが決まっている場合を除き、ある程度テーマ決めしてから臨むことをおすすめします。

ちなみに経験を積んだ取材者がテーマ決めしない理由は、取材時の臨場感を大切にしているためです。その場合、聞いた内容によって、どういった切り口のテーマがベストか取材後に見定めます。

7. 質問項目を決める

初心者こそはじめは質問する項目を細かく決めます。質問項目をあらかじめ対象者に知らせるかどうかは取材者次第ですが、初心者のうちは知らせておいた方が無難です。

お伝えすると、たまに対象者から「時間足りますか?」「それはテーマと合っていますか?」などの疑問を投げかけてくれることもあり、取材時の迷走防止、時間切れ防止につながります。

8. 撮る写真の構図とカット数を決める

撮りたい写真と構図を決め、それぞれカット数(写真の枚数)を決めます。カメラに慣れていない場合は、それぞれ複数枚撮っておいたほうが良いでしょう。

以下に撮るべきものの例をあげておきます。
・話している対象者(正面、斜め、真横、良い笑顔、アイキャッチ画像)
・取材者と対象者(対談形式の場合)
・外観(お店の場合)
・内観(お店の場合)
・メニュー表(お店の場合)
・道具(お店や道具を使って仕事をする人の場合)
・仕事中の写真(その場での撮影が難しい場合は後でいただく場合もあり)
・その他、過去の写真やその場での撮影が難しい写真は後でいただきます

9. 時間配分を決める

質問項目と撮影するカット数から時間配分を決めます。ここから逆算して、かかる取材時間を想定します。対象者に時間がない場合は質問項目なりカット数なりを削ります。

取材時間は1時間から1時間半が相場です。それ以上長いと対象者・取材者ともに集中力が途切れがちになります。

10. 対象者へ取材内容を伝える

ここまで準備が終わると、対象者に以下を伝えます。
・取材日(再確認)
・取材時間
・必要な用具
・服装
・取材の流れ
・質問項目
・撮影内容(カット数、ほしい画)

と言っても、ここは取材ごとに合わせて臨機応変に伝える内容と伝えない内容を決めましょう。

11. 取材前日は早く寝る

取材時間は絶対に遅刻厳禁。対象者の時間はお金より大事と考えましょう。特に午前中に予定されている取材は特に前日、意識して早く寝るようにします。

12. 当日は1時間前行動をする

取材当日は、予定より1時間前に取材場所の最寄り駅に着き、現場から近いカフェで「テーマや目的・狙い、質問項目、撮影内容」を再確認します。そして、5分前に取材場所に着くようにしましょう。

1時間前行動の理由は、もし公共交通機関が遅延した場合に備えてです。最悪、電車が止まり、にっちもさっちもいかなくなったら、迷わずタクシーを使いましょう。

5分前に現地に着く理由は、あまり早く着くと飲食店の場合、開店準備や営業の邪魔になるからです。

地域取材するための道具編

ここでは地域取材をするために、あらかじめ用意しておく道具を7つ紹介しています。

1. ICレコーダー

静かな室内だとiPhoneのボイスメモで事足ります。ただし、騒音がある場所や屋外は専用のICレコーダーが必要になってきます。私はiPhoneとレコーダーを二台用意して望んでいます。どちらか一台は、対象者の近くに置くと良いでしょう。

店内で営業外の場合は、BGMを切っていただくことをお願いすることも忘れずに。

2. メモ帳&ペン

記事に使えそうなところだけを走り書きするためだけに用意します。取材中は基本メモは取らず、すべてレコーダー頼りにして、取材中は会話に集中しましょう。

3. TPOに合わせた清潔な服装

TPOに合わせて、スーツやジャケパン、カジュアルかを選びます。たとえば、地域の役所関係や企業が対象ならスーツがいいでしょうし、飲食店ならジャケパンかカジュアルでもいいでしょう。気をつけたいのが、派手な服装や清潔感の欠けた服装、仕事に向かないアクセサリー、香水は相手に不快な思いをさせる可能性があるので慎みます。

4. 一眼レフ or ミラーレス一眼

現在のiPhoneの能力だと、下手な人が一眼レフで写すより、よっぽど良い写真が撮れます。それでも、一眼レフかミラーレス一眼を持っていくだけで信頼度が上がります。やはり、iPhoneはしょぼく見られるので。

とりあえず安い一眼を買って、首から吊り下げ、撮影時に「念のためiPhoneでも撮ります!」と言えばいいです。

本格的に一眼で撮るなら「絞り優先モード」のやり方だけでも覚えましょう。夜間に撮るなら「シャッター優先モード」も覚えるとなお可です。1週間ほど意識してカメラを触っていれば覚えられます。

夜間屋外での撮影では、三脚や専用レンズ、ストロボが必要になるケースもあるので、その都度調べて用意してください。

5. ハンカチ&ティッシュ

カフェでの取材の場合、飲み物をこぼしたときにすぐに拭けるようにするためです。

6. マスク

対象者が気にする場合があるので、マスクは念のため用意しておきましょう。たとえば相手がマスクを付けていたら、こちらも付けた方が無難です。

7. 名刺

ライター用の名刺を作っておきましょう。取材相手が飲食店でも出される場合があるので、持っていないと少し気まずい場面になってしまいます。今ならネットで格安で作れるので持っておくべきでしょう。

私が長年、名刺作成をお願いしているのはマヒトデザインさん。自由にデザインできますし、なにより安いですのでおすすめです。

地域取材中編

ここでは地域取材中にするべき5項目を順序立てて紹介しています。

1. 元気よくあいさつする

人の印象は出会った瞬間、決まります。対象者と会った瞬間、開口一番で「おはようございます!本日はよろしくお願いいたします!」と元気よくあいさつしましょう。

2. アイスブレイクを入れる

いきなり質問すると対象者が構えてしまいます。まずは世間話を5分ほど挟んで緊張を解きほぐしましょう。

3. 取材中は質問内容から外れすぎないようにする

質問内容から外れすぎると時間が足りなくなります。質問内容から外れすぎたら、勇気をもって話をさえぎり、元通りに方向転換しましょう。

4. おもしろい話は深掘りする

ここは記事になりそうだな、と思う話はどんどん深掘ります。特に注意すべきは抽象的な話をされたとき。そんなときは「たとえば?」と質問して具体例を出してもらったりと、できるだけ抽象→具体にする工夫が必要です。

5. 撮影のとき笑顔を引き出す

撮影はインタビューが開始し、最低10分経ってからにします。いきなり撮影から始めると、どうしても緊張が顔に浮かんでしまうので。

あと撮影のときはなるべく笑顔を撮りたいもの。コツは飲食店の場合、「いつも美味しいパスタをありがとうございます!」と言いながら撮ること。「いつも、ありがとうございます!」ととっさに言われると、人の顔は自然とほころぶ傾向にあります。

また1枚1枚確認してもらい、「もっとこうした方がいいのではないか」などを対象者と一緒に考えます。

地域取材後編

ここでは地域取材後にするべき5項目を順序立てて紹介しています。

1. お礼を伝える

取材が終わり、対象者と別れるときにお礼を伝えるのはもちろん、帰宅したらすぐにお礼のメールを送ります。

2. 取材内容を簡単にまとめる

取材後、熱が冷めないうちに記憶にある取材内容を文字に起こし、簡単にまとめます。

たとえば以下の内容などおすすめ。
・話全体の流れ
・おもしろかった話
・対象者の感情が出た話
・自分自身が前のめりになった話
・予想していなかったおもしろかった話
・上記のことから考えられる記事の切り口、テーマ

まとめ作業は録音内容を文字起こしする前にします。できれば取材が終わった直後に近場のカフェに寄って行うのがベストです。

3. 早めに文字起こしして、テーマ・構成を考える

取材した直後が一番熱くなっています。しかし時間の経過とともに、熱は冷めていきます。ですので、早めに録音したものを文字起こしして、一番良いテーマ・構成を考えます。

あとはテーマ・構成に沿って記事にするだけなので、締め切りに間に合うように記事を書きます。できれば、ここも熱があるうちに早めにするのがベターですが。

4. 先方チェックでは記事のテーマ・目的・狙いを伝える

記事が完成したら、対象者に確認してもらう必要があります。その際、記事をポンと渡すだけではなく、記事の「テーマ・目的・狙い」も同時に伝えます。そうすることによって、対象者と取材者の食い違いも減らせます。

また、「いついつまでにご確認お願いします」と再度お伝えしましょう。そうしないと「いつでもいいや」と思われる場合があります。

5. 写真はなるべく編集する

写真は撮ったものをそのまま使うのではなく、対象者がより輝いて見えるように補正するのがベストです。

多くのカメラマンが愛用しているのは、AdobeのLightroomという編集ソフトです。YouTubeにたくさん使い方・編集方法がUPされているので参考にしてみてください。
※ちなみにプロカメラマンはLightroomとPhotoshopを利用していると聞きました

調整項目は以下の通り。
・明るさ
・彩度
・ホワイトバランス
・コントラスト
・露出

僕の場合、記事の先頭にくるアイキャッチはコントラストをはっきりさせ、記事内の画像の色味は統一させています。

5. 校正・推敲はいつも以上に丁寧に

取材記事の校正・推敲は、それ以外の記事以上に回数を重ねます。なぜなら、対象者・依頼者あっての記事なので、責任が重大だからです。私は最低5回、声に出して読むことにしています。

それと一番注意すべきは「固有名詞の間違い」です。特に人名の間違いは万死に値するほど失礼です。

たとえば「斉藤・齋藤・斎藤」など多くのパターンがある名前の場合、一回一回キーボードから入力すると間違いやすくなります。入力ミスを防止するには、最も信頼できるWeb上のソースか、メモアプリに貼った正しい名前から毎回コピー&ペーストします。

地域取材するためのマインド編

ここでは地域取材をするために、取材時に意識しておくマインドを3つ紹介しています。

1. 自分が書きたい内容だけを書かない

ちゃんとテーマに沿った記事を書きましょう。自己満足のために好きなように書いてはいけません。初心者がやりがちなのは、テーマが頭からすっと抜けた状態で書いてしまうこと。こういった記事は依頼者や対象者へ提出後に大幅な修正を喰らいます。

だからといって、文字起こしした取材内容をそのまま記事にするのも避けましょう。順番や言い回しを変えたりして、読者により伝わる構成にしなければいけません。したがって、「編集能力」も取材者には必要ということです。

2. 四方よしを意識する

完成した記事は、「読者・依頼者・対象者・取材者」の四者が満足するものでなくてはいけません。最悪、取材者が満足していなかったとしても、他の三者には満足してもらうことを常に意識しておくべきです。

3. 対象者の将来を意識する

自分の好きなことを書く記事と取材記事はまったく違います。取材記事は対象者の人生を大きく変える可能性をはらんでいます。

その上で記事内容に、対象者をおとしめる部分はないかを考えて書かなければいけません。

一番は“取材を楽しむ”を大切に

今回紹介した内容は、僕自身が初心者なりに取材から学んだこと、もっとこうすればよかったな、と思うところをまとめた備忘録です。

本記事で紹介した内容に共通して言えるのは、取材は記事公開までのすべての段階において万全を尽くすものということ。

でも、ここで勘違いしてほしくないのは、取材自体は苦しいものではなく、楽しいものです。取材者が楽しんでインタビューをしていれば、自然とその雰囲気は対象者に伝播し、その場は明るくなり、話は盛り上がります。そして、想定外のおもしろい話が聞けることも。

ですので思う存分、対象者との会話を楽しむ気持ちで取材に挑む意識が最も大切です。今回はそのための「取材者がやるべきこと」を書いてみました。旅行を目いっぱい楽しむためにする計画や予約、荷物のパッキングと同じ感覚ですね!

少しでもみなさまの参考になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?