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おめでとうございました

父帰宅。
仕事が終わってから電話した。

おかえりー。
優しい末の娘がなんで電話したかわかる??

すぐに察して、父は言った。
あー…すみませんね…
お誕生日おめでとうございました(笑)

私たち家族が初めての恐慌を迎えていた時間の中に、
私の誕生日があった。
家族全員が忘れていても仕方ないなと思っていたから、
誰よりも狼狽していた母から連絡が来た時には少し驚いたくらいだった。

父からの連絡はなかった。
その事を気にしてほしくなかったから、私から切り出してお互いに声を出して笑えて良かった。
病院ご飯から脱した喜びを語る父の声がどこまでも穏やかで、ここ数日乱高下していた私の気持ちも凪いでいく。
おかえりなさい、の次の言葉も、その次の言葉も、何も迷うこともなかった。
ただ、いまある優しい時間が嬉しかった。

退院おめでとうございました。
パパ、おかえりなさい。

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