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なつがはじまる

 夏が来た。つくばの夏は、湿っていて、とても蒸し暑い。都市全体がサウナのような感じだ。
 7月に入り、暑さに耐えかねて、ようやくエアコンの電源をオンにした。文明の利器がもたらした快は凄まじく、たちまちわたしはエアコンの虜になった。
 就活を始めた。それもまだ、お試し程度ではある。当然、すべて、エントリーシートで落とされた。添削もしてもらったのに……
 うつ病はほぼ完全に治った。薬を飲み、人と会い、ご飯を食べる。人間として当然の営みが戻りつつある。
 夏なので海に来た。大洗はいつでもわたしを歓迎してくれる。たわいもない話をしながら車を走らせる。ご来光を拝む。花火をする。
 夏がやってきた。不快な夏だ。それでも、楽しむための手段はそこかしこに転がっている。うまく拾って、最高の夏にする。
 文字が書けなくなった。正確には、語彙を紡いで、文章を成すことができなくなった。わたしはしあわせになった。何かを失うことで、前進した。
 友達との何気ない日々。大学に通い、バイトで疲弊し、寝て、気晴らしに走る日々。
 夏はすごい速さで過ぎ去っていき、また最後の花火が落ちる。真夏のピークは、いつになったら去るのだろうか?(498字)


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