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10分で理解するDeFiブームのこれまでとこれから

どうもこんにちは。はじめましての方ははじめまして。ヨーロピアンです。

前回のエントリを書いたのが5月なので… えっもう4ヶ月経過!?
プライベートが忙しくて結構な時間が経ってしまいました。自分はブロガーではなくトレーダーなので絶好の相場を逃せず毎日相場に張り付いていた、というのもあるんですが……言い訳ですね、すいません。

今回はDeFiブームの総括!です。「DeFiってよく聞くけど結局何なの?」「儲かった話は聞くけど調べるのめんどくさい」って人向けです。
正直Twitter含めネットに溢れてる情報は嘘っぱち、、、とまで言わなくても多分に不正確な記述が含まれているので、いざ調べようと思っても結構大変だと思います。
後述しますが、DeFiはそこそこ技術リテラシーを要求します。そのため情報の真偽を判断する物差しを持っていない方のほうが多いと思いますし、当然恥じることでもないです。


では早速始めていきましょう。

そもそもDeFiとはなんなのか

Decentralized Finance(分散型金融)です。数年前からクリプトを追っている方はDEX(Decentralized Exchange)という言葉は聞いたことあると思いますし、例えばKyber(2018)などの古いプロジェクトは知っているかもしれません。あれもDeFiの仲間です。

分散型といっても主体としての運営・チームが存在していないケースは稀で、要するにEthereumやEOSなどのスマートコントラクトで動作するアプリケーションで金融っぽいことができればほぼなんでもDeFiと呼ばれています。ゆえに定義は非常に曖昧ですが、ユーザは自分自身で秘密鍵を管理し、アプリケーションにトランザクション(指示のようなもの)を送り資産を操作する、これは最低限満たすべき条件です。あなたの資産を誰か他人が預かるようであればそれはDeFiではありません。

イールドファーミング

SNSやニュースサイトから情報を得ている方は、この言葉も聞いたことがあると思います。Yield farming、つまり「利回りを育む」ってことですね。これは今年生まれた新しい言葉です。ブームと新しい言葉は常にセット、新鮮みがなくては人は動かせないからです。

言葉こそ新しいですがやっている内容は数年前からあるもので、dAppに資産をロックして運用するだけです。Compound(レンディングアプリケーション)などが代表的で、アプリケーションを通じてトークンを貸し出すことで利回りを得ることができます。

ブームの火付け役となったのはUniswapで、これはいわゆる在庫自動調整型のDEXです。日本の取引所では「販売所」などと呼ばれている相対取引形式でユーザは売買することができ、どうしても中央集権的な取引所に体験で劣るオーダーブック方式の旧来型DEXに対して非常に扱いやすく、急速に成長しました。

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このUniswapに在庫を差し出すことで、売買手数料から収入を得ることができます。(在庫の変動による差損リスクはあります)
代表的なペア、例えばETH-USDTなどでは現在1日に数十万ドルの手数料が発生しており、かなり大規模なキャッシュフローが生まれています。

トークンの配布による利回りの加速

このイールドファーミングが爆発的に加熱した理由の一つに、「ガバナンストークンの配布」があります。というか、これが始まった後にイールドファーミングというネーミングがついた気がします。

いくつかのプロジェクトが、そのプロジェクトの独自トークンを配布し始めました。
配布時点で特に使い道を決めていないトークンはとりあえず投票券として機能させることが多く、たくさん保有している人はプロジェクトの方向性を決めることができます。クリプトらしく分散的意思決定のプロセスを取ろうとしたわけですね。
当然その配布先はdAppに資産をロックしている「ユーザーたち」となりました。他に配布先などあろうはずがないので、合理的な帰結ですが。

そしてそれらのトークンは、UniswapなどのDEXやいくつかの中央集権取引所に上場されました。取引所に上場さえすれば当然値段がつきます。値段がつくと何が起こるでしょうか?

理論上の利回りが発生します。

例えばとあるトークンが100ドルロックすると1日あたり10枚配布されるとして、1枚あたり現在の時価で2ドルだったとしましょう。年間を通せば3650枚が入手できる計算なので、7300ドルの価値に相当しますね。
そしてあろうことか、100ドルロックして7300ドルが手に入るためにAPY(年利)7300%!と表示してしまうプロジェクトが数多く存在します。

もちろんこんなものはその瞬間の時価に基づく計算でありAPYで表現するのはチャンチャラおかしいわけですが、仮に1ヶ月継続できれば60%の利回りが得られることには違いありません。

知人のお堅いファンドマネージャーは言いました。「金利は女子高生である」と……。

パワーワードです。冷静に考えると意味は分かりませんし何ならちょっと気持ち悪いですが、勢いと言いたいことは伝わってきます。

緩和的姿勢を崩さない各国の中央銀行によってもたらされた世界的な過剰流動性。実に長い間、低金利・低利回りの環境に置かれた我々。いつしか、かつて存在した「高利回り」の幻想を追い求めるようになってしまったのでしょう。
現代人は利回り・金利という言葉に非常に弱く、さながら目の前にご馳走を置かれた欠食児童のようです。「年利300%!」などと言われると思考能力が極端に下がり、判断能力が鈍るんでしょうね。

何故ガバナンストークンに値段がつくのか

それらのdAppには既にキャッシュフローが生まれています。これらの収益の一部をトークン保有者に配布しようという提案がなされたらどうでしょうか?トークンホルダーに反対する人は多くないでしょう。

そうすればトークンにはキャッシュフローが生まれます。アプリケーションの運営にまつわる意思決定が可能で、さらに収益の一部が分配されるのであればそれは株式会社の株に非常に近い存在になります。つまりガバナンストークンであり、セキュリティトークンです。

当然、マーケットで取引されている以上はその適正価値と時価の乖離はそれなりに発生していると思いますが、それはさておき全くの無価値でないことはこれで簡単に説明がつけられると思います。

イールドファーミングは滅茶苦茶に儲かった

つまり乱暴な表現をするなら、イールドファーミングの正体は有望なITベンチャー企業がユーザに対して株式を無料配布しているようなものだと言えます。メルカリに出品したら(期間限定で)メルカリの株がもらえる世界だとしたら、そりゃ飛びつきますし、タダ同然で手に入れた株を売って儲かるのは当たり前です。本来ならば100%が開発者と初期投資家の懐に落ちるはずの利益がただのユーザーにホイホイ配られるわけですから、旧来の常識で考えれば何もかもがおかしな世界です。

僕の観測範囲ですら、実際にイールドファーミングを開始してから1ヶ月で数百万円、下手をすると1000万円以上の利益を出した人もいました。いくらなんでも儲かりすぎだろうと思うかも知れませんが、これは需給が関係しています。実際のところイールドファーミングに参加する人はほとんどいませんでした。これを読んでいる皆さんも「イールドファーミングは儲かるらしい」「DeFiってのは今すごいらしい」というのは知りつつも、metamaskをインストールして実際にCurve.fiやyearn.financeにアクセスし、自らの資産をコントラクトにロックしてトークンを受け取るまでの一連のアクションは起こさなかったんじゃないでしょうか。

理由は様々だと思いますが、結局は「簡単じゃない」からだと思います。まずは調べ物をしなくてはならないし、そもそも自分で資産を管理するのはハードルが高い。操作ミスで財産を失ってしまうかも知れない恐怖がある。
一方で、取引所で買うのは簡単です。買いたい人はたくさんいるのに対し、売ることができる人は少ないのです。

こうして、イールドファーミングでは行動を起こした少数の人たちがプライマリの利益を独占していたことになります。直近で最も大きな話題になったUniswapのトークンは1アドレスにつき最低でも400UNIが配布されており、時価で25万円相当でした。一度でもUniswapを利用してさえいれば気前よくこれだけのトークンが配られたため、いくつものアドレスを使っていればそれだけ100万円以上の利益を得ることは容易かったのです。この場合は大した原資も必要ありません。

これもまたクリプトの利益ですが、これは単なるトレードとはまた別の文脈で得られる利益です。
僕は以前別のエントリで「旧来型の金融知識がある人が強い世界になってきた」と書きましたが、少なくともこの半年のクリプトでは技術リテラシーが高い人が無双する世界であったと言えます。もちろん、僕もかなりの恩恵を受ける側の人間でした。(僕の本業はソフトウェア技術者です)

これは僕が参加しているクローズドコミュニティでの定例放送で使われたスライドの一部引用画像ですが、上記の構図は非常に分かりやすいと評判でした。(「裏インターネット」は技術的障壁を乗り越えてトークンを取得し、取引所で売却する側の人々を指しています)

DeFiブームの正体はアルトコインブーム

誤解を恐れないのであれば、こう言えなくもないです。雑なくくりですが。イールドファーミングによってDeFiアプリケーションに預けられる資産総額(TVL)は増加し続け、そのたびに驚きをもって報じられてきました。こうして、人々はガバナンストークンにはますます価値があるように感じました。

そんな中で、このイールドファーミングの仕組みだけを取り出したような徒花が誕生します。

YAM(通称・芋)およびSUSHI(通称・寿司)です。

前者は単なる「コントラクトに資産をロックするとYAMトークンがもらえる」だけの機能しかなく、肝心のアプリケーションとしての価値が欠落していました。
要するに、「複雑なアプリケーションを触ることで価値あるトークンがもらえる」だったのが、「複雑な手順をクリアするとゴミがもらえる」に変化しています。第三者によるコード監査すら受けておらず、バグによって半ば強制退場しました。(現在は新バージョンが開発されています)

後者はOSSであるUniswapを丸々コピーし、トークン配布機能をつけただけのものでした。これは個人の感想ですが、やはりゴミです。

YAMとSUSHIに共通していたのは、これらのトークンをもらうためにこれらのトークンそのものをロックする機能が提供されていたことでした。つまりSUSHIをもらうためにSUSHIをロックする、ねずみ算式の増殖のような構図です。

こうすることで、流動性が締め上げられてトークンは急騰します。急騰すれば見かけ上のAPYも上がるためにさらに人を集める……といった仕掛けですね。

SUSHIについてはもう少しストーリーがありますが、ここで語る気にはならないのでHohetoさんのエントリを貼っておきます。非常に分かりやすい良エントリでした。

さてこのあたりで理解力の高い方からは、じゃあゴミに値段がつくのは何故なんだ説明がつかないじゃないか、という突っ込みが入ると思います。

それはもちろん、買う人がいるからですゴミだろうとなんだろうと取引所に上場して値段がついてさえいればノールックで購入する人はいます。あるいはゴミであると分かった上で、ケインズの「砂上の楼閣」理論に基づいて行動する人もいます。

こうした状態の背景として、FTXが象徴的な取引所でした。今回のブームではある種のアノマリーとして、FTXに上場した銘柄を即座に買っておけば結果的に儲かる、といった状況が実に長い間続いていました。FTX自体が凄腕のトレーダー(通称アフロ)によって立ち上げられた取引所であり、彼らはDeFiに対する感度が業界トップクラスに高く、いくつかのプロジェクトに出資も行っていました。
よって彼らが先んじて上場させた銘柄は後にBinanceなど大型取引所に時間差で上場することが多く、これらをFTX上場時点で買っておくことで利益を得られるという構造になっていました。

もちろん、そもそもそれだけ価格を押し上げる力が相場にあったことも重要です。こうした事情もあり、DeFiブームは取引所でトークンを購入する人たちにも波及していきました。セカンダリでも十分に儲かる余地があり、儲かればその資金を元に別のトークンに投資します。資金の好循環です。
こうして人々は徐々にトークンの中身には気を配らなくなり、他のプロジェクトにまぎれて上場されたSUSHIも例に違わず上場後に高騰しました。当然ながらその後は急落の運命を辿りますが。

ところで僕の目では今回のブームでの日本人勢は皆で情報共有しつつかなり上手く立ち回ったように見えていて、平均的に皆が良い利益を生んでいるようでした。DEGさんが非常に良いタイミングで用意してくださったコミュニティの影響もありそう。この場を借りて感謝します。

第一次DeFiブームはそろそろ終焉か

相場にはある程度サイクルがあります。様々な指標を見ている限りでは、個人的には現在のブームは一旦落ち着くのではないかと思っています。
最大級のプロジェクトであるUniswapがとうとうトークンを配布を開始したという事実や、OKexのファーミング代行開始が気になるポイントですね。

前述した通り、イールドファーミングは一定の技術的参入障壁によって高い利回りを維持してきました。しかしOKexの顧客が取引所を通じてこれらにアクセス可能になれば、その優位性は失われます。需給が変化することにより、利回りは常識的な範囲にまで低下するのではないでしょうか。

おそらくですが、他の取引所も追随する可能性が高いです。特にFTXあたりはすぐにでも始めそうです。本当にやめてほしい……。

今後も高い利回りを見込むためにはこれらの取引所が対応する前にできるだけ早く調査を済ませ、いち早く行動することになると思います。そうなるとWPとAuditレポートを読み込み、コミュニティの様子を眺め、できればコードに目を通す……と、より高い技術リテラシーが求められてしまいますね。とはいえ元々、DeFiを冠しているからと盲目的に資産をロックするのは危険な行為でした。例えばRenVMやyearnなど少なからず中央集権的な要素を持ったプロジェクトでは意図せず資産を失う可能性を孕んでいますが、他のプロジェクトとの違いを正しく理解できている人はそこまで多くないと思います。結局のところ自分の資産は自分で守るしかなく、マーケットにおいては知こそが武力ですので、学びをサボることはできません。

クリプトはとにかく相場のサイクルが速いので、仮に現在のブームが落ち着いたとしても、第二次ブームがそう遠くないうちに訪れるでしょう。その時に最大限の利益を享受するためにも、できるだけリサーチをしておきたいと思います。

まだまだ相場は終わりません。皆さんに良い投資機会が訪れることを祈っています!

それでは、今回はこんなところで。

(文中に明確な誤りや誤字脱字などありましたら、Twitterで指摘していただけると助かります。また、もし気に入ったらシェアしていただけると嬉しいです。)

FTX


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