ヨーロッパ的なるもの:小話20 各国人の性格‐似ているようで違う、違うようで似ている
【各国人の性格】
ヨーロッパ人と一言で言っても様々です。ヨーロッパ各国は風土も文化も大きく異なります。それだけではなく、各国人の性格も大きく違うという実感を持っている人も多いでしょう。スウェーデンの大学の心理学者の論文が目に止まったので、筆者の体験を交えながら一部を紹介してみましょう。
これは世界22ヶ国の人々の性格を調べたものです。ヨーロッパ9ヵ国、北米2ヵ国、中南米1ヵ国、アジア7ヵ国、太平洋州2ヵ国、アフリカ1ヵ国の計22ヵ国です。ヨーロッパは、英国、アイルランド、オランダ、フランス、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ルーマニアが含まれています。人の性格を30項目に細分化し、各項目に関する質問に基づいて、その性格の度合いを数値化しました。ここでは主にヨーロッパ人の性格に絞り、時折、世界の他の地域と比較しながら紹介します。
まずは、自分を「心配性」と思う度合い。一番心配性なのは英国人で、アイルランド人が続きます。これを「落込み易さ」でも見ると、英国人とアイルランド人に、フィンランド人が加わります。この3ヶ国の落込み易さは、世界の他の地域に比べても高い値となっています。英国人は実は根暗傾向。一概には言えませんが、それを感じることは確かにあります。英国ではコロナパンデミックの後、多くの人々が仕事に戻っていません。その割合はヨーロッパの中でダントツで、経済に大きな影響を与えていると問題になっています。
ところが、どんちゃん騒ぎが好きなどの「羽目の外しやすさ」。面白いことに、英国人とアイルランド人が高い数値です。上の結果と一見矛盾するかのように見えるのが興味深い。落込みやすいのに、はじけてしまう。ヨーロッパでは、英国のサッカーファン、フーリガンは悪名が高く嫌われています。また、英国の若者はあまりに羽目を外すので、オランダのアムステルダム市政府から目の敵にされています。
「孤独を好む傾向」。大きなパーティーで沢山の人と話すよりも、一人でいるのが好き。これはフィンランド人に多いようです。ヘルシンキやトゥルクでミーティングをしたことがありますが、皆、静かでおとなしい印象を持ちました。
自己主張の強さ。ルーマニア人とドイツ人の数値が高くなります。英国人、アイルランド人ではこの数値は低く、謙虚さの度合いは高くなります。「英国人はシャイ」だとはアメリカ人が良く言うことです。
他人への思いやり、人を気遣う気持ちの強さ。アイルランド人の数値が一番高い。アイルランドと同じくケルト人が住む、英国の北ウェールズに行った時のこと。田舎で、一日に数本しかないバスに乗り遅れてしまいました。仕方ないので、連れと二人で車道の横を歩き始めました。別の路線のバス停までは何キロもあります。車もほとんど通りません。夕方です。すると追い抜いた一台の車が、前で止まりました。「どこへ行くんだ?」と声をかけてきます。事情を説明すると「乗れ」。「その方向へ行くから、バス停の途中まで送ってやる」。心が感謝の涙で溺れました。
「想像力の豊かさ」。物事を生き生きと想像できる、ファンタジーが好き、白昼夢が好き。ドイツが低めでフィンランドがもっとも高い。現実主義者のドイツ人。夢を見ている暇があったら行動しよう。当然、いつも動き回っていたり、隙間時間にも何かを埋めたりする「活動力」は、ドイツ人、オランダ人の数値が高くなっています。一方、ノルウェー人、スウェーデン人、フィンランド人は低い。彼らは、せかせかと何かをしているよりも、ほっこりが好き。この調査対象国にデンマークは入っていませんが、ヒュッゲをこよなく愛するデンマーク人のこと。調べれば必ず仲間入りするでしょう。
「アートが好き」な度合い。これは万人の想像通り、フランス人です。これはヨーロッパ人の間でも飛びぬけています。「変化や知らないことが好き、従来通りや決まりきったやり方が嫌い」。これは総体的にヨーロッパ人がアジア人よりも高い数値になっていますが、なかでもフランス人の数値が高い。英国、アイルランドはヨーロッパの中ではやや保守的かというところ。
「難しい本を読むのが好きであったり、哲学的や論理的な議論、抽象思考を好む傾向」。この結果も、ヨーロッパ人の数値が世界の他の地域よりくっきり高くなっています。フランス人のビジネスブローカーに会った時のこと。会議室に入るなり、ヨーロッパの会議室によくある白板代わりの大きな紙に、いきなり偏微分の記号を書き、君のビジネスではここの変数は何になるかと来ました。日本で言えば文系のはずのブローカーが、偏微分記号で攻めて来る。他の大企業でも、当方の描くビジネス戦略に、論理的な質問多数。精緻にロジックを組み立てておかないと、説得できません。まるで口頭試問を受けているようです。ヨーロッパでは論理思考が重視されます。
「似ているようで違う、違うようで似ている」ヨーロッパ人の一端を感じて頂けたでしょうか。
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