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ヨーロッパ的なるもの:小話13 前向き駐車は珍しくない

【前向き駐車は珍しくない】
 車の駐車場の話です。ヨーロッパで駐車場に車を止める時、頭から駐車スペースに突っ込んで停める、いわゆる前向き駐車は珍しくないと思います。と言うか国や場所によっては主流と言えるかもしれません。少なくとも英国では、前向き駐車する人の方が多いような気がします。
 
 駐車場に入って、空きスペースを見つけたらそのまま頭から突っ込んで終わり。多少ゆがんでいても気にせずさっさと降りていく。何故でしょう? 後ろ向き駐車だと、後続車を待たせることになるので、英国人は他人への気遣いが大きい? 確かに駐車方法と心理学のような研究はあるようですが、実際にその場にいると、とてもそんな気はしません。要するに自分にとって手っ取り早いから。狭いスペースにバックで入れるなんて面倒くさい。出る時は、バックでも大きなスペースがあるから出やすい。
 
 特にスーパーマーケットや空港の駐車場は、大半が前向き駐車のような気がします。空港なら面倒くささに加えて、送ってきたり迎えに来て、急いでいるから。またスーパーマーケットなら、帰りに荷物を積み込み易いから。空港で迎えた人の荷物も積み込み易いでしょう。前向き駐車をする人が多い英国では、2017年から運転免許の試験に前向き駐車の項目が追加されました。
 
 アムステルダムは運河沿いに駐車スペースがあります。ところがアムステルダムの運河には、歩行者や車の転落防止用の大きな柵やガードレールはありません。これはヨーロッパでは珍しくなく、例えばパリのセーヌ沿いの歩道にも、柵などありません。ヨーロッパの町は基本的には、人には判断力があると言う前提で出来ています。
 
 その運河沿いの駐車スペースで、運河に対して斜めに駐車するところには、運河の端に高さ僅か20センチほどのバーはあります。ここに停める場合は、ほぼ前向き駐車です。さすがにバックだと距離を見誤って、低いバーを乗り越えて運河に落ちるかもと思うからでしょう。ところが、運河に平行に停める場合はそのバーすらありません。駐車スペースから、いきなり運河。それにもかかわらず運河の端から30センチくらいのところに停めている。かなり腹が座っている上に、運転も上手いと思います。
 
 運転が上手いと言えば、ヨーロッパの町はスペースが無いので、道路脇にずらっと縦列駐車するのが一般的ですが、ここに停めるのも上手。車一台分ちょっとしかないスペースを見つけるや否や、男女を問わずあっという間にバックで手際よく停めてしまいます。
 
 駐車場に車を停める時、向きもさることながら、料金をどう払うかも気になります。英国の公園や郊外の町の屋外駐車場では、ほぼゲートなどはありません。監視員も見当たらず、ただ広いスペースがあるだけです。勝手に駐車しても構わないような雰囲気は漂っていますが、無料でない場合は、どこかに券売機があります。それで前払いで時間分の駐車券を買い、ダッシュボードに提示しておきます。ごくたまに監視員が回って来て、掲示が無かったり時間オーバーになっていると、罰金を取られることになります。
 
 こういう駐車場では面白い経験をすることがあります。入場した時に、見知らぬ人がやって来て、自分の駐車券を使えと差し出してくるのです。2時間分買ったけれど、まだ30分余っている。もったいない。他の人に分けてあげよう。英国人は個人主義ですが、それは孤立主義ではなく、他人と分かち合おうと言う気持ちも強い。見ず知らずの外国人にも持って来てくれます。最初は、他人の券を使っては違反では?と思いましたが、考えて見れば駐車券に車のナンバーは書いていないし、それは駐車の権利書なので、残った権利を譲られたのなら、問題ないようです。最初は驚きましたが、その内に筆者も真似するようになりました。ただ、田舎で見知らぬ東洋人が寄って行くと、相手のドライバーは最初怪訝な顔をし、それから破顔一笑でサンキュ―となるという、互いに緊張の一瞬が生じますがー。

写真集紹介:
【ヨーロッパ的なるもの:アルバム1 街角と博物館で見るクラシックカー(その1)】
ドイツ、イタリア、英国の博物館や路上で見かけた車の写真集(有料)です。歴史的意味のある車、著者が美しいと感じた車を集めています。

著作紹介:ネオロンドンの足音(アマゾン)
 


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