読書弱者の日々是見えへん

『読書バリアフリーの世界』(三和書籍)という本に埼玉福祉会のことが紹介されていて、ちょっと懐かしく思いました。というのも、谷崎の『細雪』は、図書館にあった埼玉福祉会発行の大活字本で読んでいるからです(6分冊)。当時は今ほどは目が悪くなかったのですが、それでも
――へぇー大活字本なんてあるのか、何てありがたい!
と手に取りました。あまり自覚がなかったのですが、もうかなり読むという行為に困難を覚えていたのでしょうね。この本がなければ、『細雪』を読了したかどうか怪しいものです。
 この頃は埼玉在住だったので、埼玉福祉会? 県の外郭団体か何か? ぐらいにしか考えませんでしたが、『読書バリアフリーの世界』を読んで、大活字本発行の先駆者的存在であることを知りました。
 
 私は左右の目の視力が1桁違う不同視でかつ度数のほうもかなり問題があるらしく、本読み・新聞読みには苦労しています(悪いことにかなりの映画好きでもあります)。
 近年は、図書館や書店のラックから本を探すのになかなか難儀するようになりました。左右方向はまだいいのですが、上下方向はからきしダメ。ラックにめいっぱい近づいて、狭い範囲をなめるように見ていかないと背表紙が読めません。はたから見たら書架に喧嘩を売っている人みたいに見えるかも。ノートに定規を使わずに線を引くのも、横方向は問題ないものの、上から下へは意図した箇所から大幅に逸れます。
 読書そのものでは、文庫や新書に標準的なポイント数の活字だと、「ハ行」に「゜」なんだか「゛」なんだか分からないことがしょっちゅうです。新刊本ならその広告に、本文のポイント数を記載してくれないかな、と思います。小さい場合は電子本のほうを買うという選択ができるので(リアル書店にはあまり行かないので、買う前に手に取るという機会がないのです)。
 でも「ハ行」が「゜」か「゛」かは拡大鏡*を使えば見えるのでまだいいほうです。悩ましいのは、旁(つくり)の一部が「日」または「目」になっている漢字。拡大しても錯覚をうむだけで分からないことが多く、”平行棒憎し”状態。どちらであっても、その漢字の音の見当がつかないとか意味が分からないということはあまりないのですが、お初の漢字は(ボケ防止に)書いてみることにしているので、なるべくなら「日」または「目」のどちらであるかを正しく覚えたい。
 先日はついに、拡大してもどうなっているのか分からないという漢字に遭遇しました。「鏤」という字ですが、その旁、ポイント数がかなり大きいはずの漢和辞典の見出しに拡大鏡を使っても、「女」よりも上の部分、どういうパーツの組み合わせなのか、縦棒が貫いているのか否か判読できない。画数の大きい漢字は難易度が高いのです。電子本ならそのまま拡大機能で見えたでしょうが、印刷物だったので、拡大鏡で見えなければお手上げです。結局ネット上の漢和辞典サイトで30ポイント以上の大きさで見せてくれているところがあって、やっと分かりました。
 新聞は一つの記事が数段に渡るものなので読みにくく、日々、新聞を読むという行為を後回しにしたがっているのを自覚しています。勢い、小さい記事から読んでます。撮りだめしてある映画のビデオも、無意識のうちに眼精疲労を連想するのか、ビデオの時代が終わってしまったのに観るという行為から尻込みしているような面が。去年はリバイバルで劇場まで行って見た映画の、録画ビデオが家にあった!という体験を2回もしました・・・・・・。
 今日から、こんな視覚面の困難や工夫をメインに、日々の雑感その他を綴っていこうと思います。

*オーム電機の「LEDハンドルーペ137」を愛用しています。直径137ミリと大きいのと、縁がないところが気に入っています。



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