3)わがままウサギとお坊さま(前編)【わがままウサギとお坊さま】

3)わがままウサギとお坊さま(前編)

魂となったお坊さまは、半時(はんとき:約1時間)ほど、わがままウサギが化けて出るという山を探しました。
そしてようやくそのわがままウサギを見つけました。
わがままウサギもお坊さまに気づいたようです。

(わがままウサギ)「坊さんが何しに来たんだ?」
(魂となったお坊さま)「君を探してたのだよ。 君が動物たちを困らせているウサギだね?」
(わがままウサギ)「坊さん、オレの声が聞こえるのか?!」
(魂となったお坊さま)「ああ 聞こえるよ。 私は君に会うために、体を置いて魂だけになってここに来たのだよ」
お坊さまは、動物たちが困っている事をわがままウサギに話しました。

わがままウサギは言いました。
(わがままウサギ)「オレは好き勝手に生きてきた。 それが一番楽しいに決まってる! 我慢なんてまっぴらだ! だから、死んでからも好き勝手にするんだよ!」
お坊さまはほんの少しの間、顔を歪ませたあと、穏やかに言いました。
(魂となったお坊さま)「では、今、君は幸せかな? 好き勝手にしていても、今、君が毎晩のように動物たちの前に怖い顔で化けて出て、何かを言っているのは、君の本当の心が満たされていないからだ。 つまり、楽しそうに生きている動物たちが羨ましくて化けて出ているのだよ。 違うかな?」

わがままウサギはハッとした顔でお坊さまを見ると、心を見透かされたのが悔しくて、次第に顔が歪んでいきました。
(わがままウサギ)「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
わがままウサギは怒りながら言いました。
魂となったお坊さまは、シカが、わがままウサギに裏切られて悲しんでいる事を話しました。
(魂となったお坊さま)「信頼できる友人の言葉に耳を傾けて、ほんの少し我慢をする心、その術(すべ)を持つことだよ。 君はもう生き返れないけれど、今ここで《程よく我慢する心》を学べば、今までよりも良い来世を送れるのだよ」
魂となったお坊さまは、穏やかにわがままウサギを諭し(さとし)ました。

しかし、わがままウサギはそれでも気にくわなくて、魂となったお坊さまを困らせる事を思いつきました。
(わがままウサギ)「じゃあ、坊さんもずーっとここに居るんだな! オレがその《程よく我慢する心》を得られるまで!!」
魂となったお坊さまは言いました。
(魂となったお坊さま)「それは出来ない。 私は夜が明ける前に自分の体に帰らなければならないからね」
けれど、わがままウサギは、それを聞いて尚の事、悪意を膨らませ、なんと、魂となったお坊さまに襲い掛かったのです。

しかし、わがままウサギが魂となったお坊さまに襲い掛かった瞬間、不思議な事が起りました。

(次のお話に続く)

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