第11話 少食小噺 夢の森食堂~前日編~
これは、クウ星のとある街にある、少食さん向けの会員制隠れ家カフェのお話。
5月下旬のある昼過ぎ。 カフェの入り口には貼り紙が貼ってありました。
“本日、ご予約のお客様のみの営業です”
会員制カフェで、さらに予約のクゥ星人のみ……。
外から見えるのは、テーブル席のテーブルの上に、小柄なクゥ星人が座布団に座り、身振り手振りで何やら語っている姿。
どうやら今日はこの噺家の特別講演のようです。
カフェの中ではローミニさんやサッゴさんをはじめ、常連のクゥ星人達がその噺に聞き入っていました。
特にサッゴさんは初めての経験に朝からワクワクしていたようです。
──えー……時間もアレなんでね、じゃー早速始めたいと思います。
えー……これは1年くらい前の事なんだが、ある仕事終わりにちぃっと大食いの同僚が珍しく声を掛けてきたんだ。
「べーちゃん、明後日の休み空いてるかい?」
自分はこう見えてインドア派なもんだから、どう応えるか一瞬悩んだんだが、ここは素直に答えたんだ。
「特になーんもねぇよ。 ずーっと家で寝てるつもりさ」
「じゃあ丁度良かった! どうだい? 一緒にコルイザワまでドライブに行かないか?」
「コルイザワ? あの観光地のかい? どうしてこの俺と……まさか俺の事好いてるのかい?」
「んな訳あるかよ! そうじゃねぇさ。 あそこに“食べ歩きロード”って道があってな、色んな店が食べ歩きメニューを出してるんだよ。 全部食いてぇけど、流石にちょっと多いんでな、2人で分けて食えば全部の店をまわれると思ってよ。 べーちゃん少食だろ? 丁度良いと思ったんだよ」
「ふ、二人で分けて食うのかい……ますますカップルみてぇじゃねぇか……」
「まぁ、そう言わずによぉ。 現地まで運転してやるから……このとーり! ……あ、ただ食い物代は毎回毎回3分の1ずつ出して貰うぜ」
「毎回毎回って細けぇな!」
ま、しょうがない。 こんな機会でもなければ外に行く事もないからな。 運転してくれるってーならむしろラッキーか。
「分かったよ! んじゃ明後日よろしくな」
「おお! ありがとなべーちゃん!」
こうして俺と同僚の2人は2日後にコルイザワに食べ歩きに行く事になったんだ。
(続く)
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