4)わがままウサギとお坊さま(後編)【わがままウサギとお坊さま】

4)わがままウサギとお坊さま(後編)

わがままウサギが、魂となったお坊さまにお坊さまに襲い掛かかった時、先ほどネズミの魂からもらった《悟りの宝珠》が光り出し、なんとその光の中から菩薩(ぼさつ)さまが現れたのです。

魂となったお坊さまは、菩薩さまに手を合わせました。
一方わがままウサギは、その光にもだえ苦しみだしました。
(わがままウサギ)「か、体が透明になって……ああ 目がよく見えない……自慢の耳も聞こえなくなっていく……!」

(菩薩さま)「ウサギよ……そなたに必要なのは、心の目と心の耳。 その心の目と心の耳で、多くの者の心に触れなさい。 それで悟りが1つでも多く開けるまで、こうしてここに漂い続けるのです」

そう言うと菩薩さまは消えていきました。

魂となったお坊さまは、菩薩さまが消えていくのを見届けると、お坊さまも自分の体のあるお寺に帰って行きました。

お寺に戻り、お坊さまがゆっくり目を開けると、交代でお坊さまの体を見守っていた動物たち(キツネ・シカ・サル・フクロウ)が全員集まってきました。

お坊さまはこれまでの事を動物たちに話しました。

  • わがままウサギの魂に会いに行く途中、立派な心を持ったネズミの魂に出会い、《悟りの宝珠》を貰った事

  • わがままウサギに会って、対話をするも、自分勝手な心が抑えられず、魂となったお坊さまに襲い掛かろうといた事

  • その時、宝珠から菩薩さまが現れて、わがままウサギに試練を与えた事

一通り話すと、サルがいいました。
(サル)「じゃあ、もう化けて出てこないんだな! やったー」
(お坊さま)「正しくは、ウサギはそこに居ても姿は見えず、ウサギの声も聞こえないし、ウサギ自身も周りが見えず、声も聞こえなくなってしまった、と言う事だよ」
すると、シカが真っ先に言いました。
(シカ)「じゃ、じゃあ……そこに居るけど、何も出来なくなっちゃったの? かわいそう……」
お坊さまは答えました。
(お坊さま)「シカは優しいね。 でも、菩薩さまは、〔心の目と心の耳で多くの者の心に触れなさい〕とウサギに語られた。 皆がウサギを弔う(とむらう)思いは、ウサギの心の目と心の耳に届くという事だよ。 それこそがウサギにとって悟りや成仏へと繋がっていく。 だから、折に触れてウサギを思ってやりなさい。 私もそうしよう」

動物たちは、とりわけシカは、それ以降、お坊さまの言われたとおり、折に触れてウサギに話しかけるようになりました。

その後、ウサギが悟りを開けたかは分かりません。
けれど、動物たちが暮らしていた山では、20年後、時折優しい風が吹くようになったそうな。

(おしまい)

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