【わがままウサギとお坊さま】
これは、私:得雨れんによる創作のお話です。
1)お寺に来た動物たちの困りごと
むかしむかし、ある村に、不思議な力を持つお坊さまがいました。
ある朝、お坊さまは朝のお勤めを終えると、庭先に動物たちがこちらを向いて、何か言いたげにじっと佇んでいるのが見えました。
お坊さまは縁側に座り、動物たちの話を聞くことにしました。
(お坊さま)「おやおや大勢でどうしたのかな?」
お坊さまが話しかけると、最初にキツネが話し始めました。
(キツネ)「ああ、お坊さま。 お坊さまは僕たちと会話が出来ると聞いてここに来たんです。 僕たちは今、とても困っているんです。 どうかお知恵とお力を貸してくださいませんか?」
キツネは礼儀正しく、落ち着いた口調で話しました。
その横には、シカやサル、フクロウが、うんうんと頷いてそこにいました。
(お坊さま)「ほうほう。 色んな動物が困っているとはいったい、どんな困りごとかな?」
そのまま落ち着いたキツネが話しました。
(キツネ)「わがままなウサギが、行ってはいけない《炎の泉》に行って、死んでしまったのです。 それからというもの、そのウサギが毎夜のように怒ったような顔でお化けとなって出てくるのです。 それだけでも怖いのに、そのウサギが何と言っているのか聞き取れないのです」
(お坊さま)「なんと。 それで皆が困っていると……」
そう言うと隣にいたシカは、泣きながら何か言おうとしましたが、涙で声になりませんでした。
お坊さまは先にサルの話を聞きました。 サルはたいそう怒っていました。
(サル)「自分のわがままで《炎の泉》に行って死んだのに、何で怒って化けて出てくるんだ!!」
サルはその場でドスンドスンと飛び跳ねて更に怒りを示しました。
フクロウも続けて言いました。
(フクロウ)「まったくだ! 夜に化けて出てこられたら、皆は眠れないし、私だって夜の散歩を楽しめない! あのウサギ、死んでまでも自分の事しか考えてない!」
お坊さまは「わかった わかった」と皆をなだめると、しばらく考え込んでいました。
すると、泣き止んだシカがゆっくり話しだしました。
(シカ)「あたしは、何度も何度も、ウサギどんを止めたんです。。 そしたらウサギどんは「わかったよ~」って笑顔で言って分かってくれて……あたしは安心して家に帰ったの。。 でも、結局ウサギどんは、あたしのお願いを真剣には聞いてくれてなかったの。。 悲しいよぉ」
お坊さまはシカの気持ちを思うと胸が痛くなりました。
(次のお話に続く)
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