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存在しない日記 2021.3.13

これは架空の人物による、架空の出来事の日記である。空想の日記。妄想とも言う。つまりこれは存在しない日記。

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2021年3月13日

たまたま近くを通ったので、日枝神社に立ち寄る。平日の昼間の神社というは閑散たしたものだろうと、いつも思うのだが、いざ行ってみるとそれなりに人がいる。何より意外なのはスーツ姿の男性が結構いることだ。仕事の合間なのだろうか、熱心にお祈りをしているように見受けられる。正月の人が大勢いる時期に比べるとなんでもない平日の方が熱心な人が多い。

もっとも、はたから見れば私自身もそう見えているのだろう。

仕事で訪れる場所で、目的地までの間に神社があり時間があればほぼ立ち寄っているだろう。一時期は御朱印を集めてみたものの、計画的にいけるわけでもなく、毎日御朱印帳を持ち歩くのは億劫でいつの間にかやめてしまった。

日枝神社に着いたのは11時くらいだろうか。境内には私ともう一人男性がいるのみだった。とても私に似ている人だった。私の方が後から境内に入ったため、その人は本殿に向かって頭を下げていた。しばらくしてこちらを振り返ったときには顔立ちまでどこか似ているものだから、顔に出てしまったかもしれない。その人はあまり気にしているそぶりはなかったが。

本殿の奥に祀られる神様は鏡だ。おそらくは太陽を表しているのだろう。天照大神の依代ということなのだろうか。

その鏡を前に自分そっくりな人物を対面すると、なんだかとても不思議な気持ちになってしまった。その鏡は自分を映し出す鏡のように思え、その人はまさしく自分ではないのだろうかと。

夜、風呂を沸かした際に浴室のドアを閉め忘れて、洗面所の鏡が曇って私の顔を曇らせて写した。そこに写っているのが自分なのか、別の存在なのか少しだけ疑わしくなった。

春はどうも落ち着かない。こんなことを考えるのも浮き足立っているせいかもしれない。昼食に野田岩で贅沢な思いをしたせいか、晩飯はあまり食べる気がしなかった。東の尾花、西の野田岩。いずれは尾花も訪ねてみたいと思いながら随分と時間が経ってしまった。

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