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LLMはどんなビジネスに使われているか実例を調べる
ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の可能性はすごいということで大ブームになっているので、実際のところビジネスの現場でどんな風に使われているのかちょっと調べてみました。
Q&A、チャットボット、社内ドキュメントの検索といった用途はすでに広がっているイメージはあるのですが、それ以外の広がりを探してみた感じです。
広告文の提案
LINEヤフーが、リンク先のページを解析して広告文をAIで提案する機能を提供(2024年3月)
広告管理ツールではレスポンシブ検索広告のアセット(タイトル・説明文)のテキストを生成AIが提案するクリエイティブ作成支援機能があります。広告に設定する最終リンク先URLを入力すると、入力したURLのウェブサイトの情報をもとに生成 AI がタイトル・説明文を提案します。提案されたタイトル・説明文の確認と調整のみで簡単に広告が作成できるため、広告作成の手間や時間が削減できます。
ヤフーにはクリックされやすい、効果の高いコピーライティングのデータが豊富にあるはずですから、リンクしたいページの内容に合わせた広告文を提案してくれるのはとても相性が良さそうです。私はデジタル広告は全然仕事で関わっていないので使うことはなさそうではあるのですが、AIのいい使い方という気がします。ヤフーとしても、広告がよりたくさんクリックされたらプラットフォーム利用料が入るわけですから、ある意味「販促」でもあるのでしょう。
ゲームシナリオ作成時、「キャラクターらしさ」を保てているかの推定
このプロジェクトは,開発現場からの「セリフに対する発話キャラクターの設定ミスを予防したい」という要望を受けて開発中もの。
(※中略※)
そこで,セリフからキャラクターらしさを推定し,「らしさ」が低いキャラに割り当てられた時にアラートが出せるようにするシステムを目指して開発が進んでいる。
こちらでもSentense BERTを使用するが,さきほどとは違い,ゲームに登場するキャラクターらしさを捉えられるように,セリフの学習を行う。具体的には,基準となるキャラのセリフ,そのキャラの別のセリフ,別のキャラのセリフという3つのセットを用意し,同じキャラのセリフはベクトルの座標が近くに,違うキャラのセリフは遠くなるような学習をさせるという。
その学習から,各キャラクターの平均ベクトル(キャラクターベクトル)を算出し,セリフのベクトルと,キャラクターベクトルの類似度による「キャラクターらしさ」順に発話者を推定する仕組みだ。
これは実用の前の研究段階という印象ですが。ゲームは大きなチームで制作し、チームは経験豊富なメンバーからジュニアメンバーまで色々でしょうから、経験と注意力でなんとかしていた部分をAIにサポートしてもらうのは良さそうです。
「そのキャラクターらしさ」というものは究極的には作家の中にしか存在しないものですから、メインライターやディレクターの監修作業の負荷は高かったのではないかと思います。
ただ、チームで製作していると人事異動や転職もありますから、同じ人が監修をし続けるというのが不可能になることもあるでしょう。そういうときにはチーム全体がキャラクターの振る舞いについて共通認識を持つ必要がありますが、そこをAIにサポートしてもらうという考え方は面白いです。結局はチームの力量依存ではあるのでしょうが、チームの力量をより速く高めるための道具、という感じでしょうか。
顧客対応の通話内容をAIで要約して記録
https://jpn.nec.com/press/202405/20240527_01.html
現在、三井住友海上の事故対応業務では、一貫性のあるサービスを提供するため、お客さまを含めた事故関係者との通話内容を担当者が経過記録として書き起こし、損害サービスシステム「BRIDGE※1」に登録しています。
一方で、当該作業には多くの時間を割いており、お客さまに寄り添った迅速かつ丁寧な対応や、事故対応以外の防災・減災取組等の新たな価値提供に向けて、業務の省力化による時間創出が課題となっていました。
今般、NECの音声認識技術と生成AIによる文章要約技術を活用した経過記録業務の自動化の実証で有効性が確認できたため、一部の保険金お支払センターで利用を開始しました。
事例を調べていて多かったのが、カスタマーサポートや保険など、音声対応業務をAIで効率化していくというもの。中でもこの三井住友海上火災保険の事例は、損害保険というミスが許されない業務において、大企業が「実証で有効性が確認できた」と言っている面白いものでした。
似た事例だと、ビーウィズというコンタクトセンター事業を行っている会社の決算説明会でも、通話内容の要約について言及がありました。
コールセンターにおける通話内容の要約の必要性について、ご説明します。スライド上段をご覧ください。
コンタクトセンターのオペレーターは、お客さまとの通話後、応対内容をシステムに入力します。この作業をコンタクトセンター業界では「後処理時間」と呼びます。スライドの例では通話時間が7分、後処理時間が3分となっており、標準的な事例です。
この例から、後処理時間の長さに驚かれることが多いのですが、コンタクトセンターは、次にお客さまから電話をいただいた時にスムーズに対応できるよう、応対内容を詳細に残す必要があります。そのため、後処理時間が長くなる傾向にあります。
今回のリリースは、この「後処理を行うシステム」に、生成AIの要約機能を搭載しました。これによって、スライド下段をご覧のとおり、人の手では3分程度の後処理時間がかかるところ、わずか0.5分で対応が可能となっています。
メルカリでの出品した商品への改善提案機能
![](https://assets.st-note.com/img/1718205253213-q0T9iSdFZO.png?width=800)
こちらは経済産業省の「デジタル時代の人材制作に関する検討会」に掲載されていた資料から。メルカリにどのようにLLMが導入されているかの話です。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/016.html
こちらもLINEヤフーの広告文の生成に近いものではあります。タイトルや商品説明を書くのが苦手だったり面倒だったりする人も多いわけですが、タイトルや商品説明こそが買われやすさに繋がります。人が面倒だと思うところをLLMでサポートしてくれるということでしょう。メルカリとしても取り引きがより活発になればプラットフォーム利用料が増えるわけですから、投資効率が良さそうな使い方という印象です。
人事システムにおける目標設定/人事評価アドバイス機能のサポート
まず「タレントパレット」です。すべてのソリューションにおいて、生成AIの機能はすでに多数搭載を始めている状態です。その中でもおもしろそうなものをピックアップしました。
「目標設定/人事評価アドバイス機能」は、「タレントパレット」を活用している多くの企業が使用している人事評価についてアドバイスする機能です。
一般社員が今期の目標を登録すると、その目標に対して「きちんと5W1Hが書かれているか?」「具体性があるか?」「また個人の目標が組織目標にきちんと沿っているか?」などを生成AIが診断・アドバイスしてくれる機能です。
評価者にも、評価面談時にメンバーや社員が「どのように前回と異なる目標を立てているか?」ということや、面談で確認すべきポイントをアドバイスしてくれます。
「AI検索機能」は、例えば新しいプロジェクトや組織を作る時に、「このような感じの人を探したい」というようなニーズが出てきます。スライド右側にあるように「営業経験が3年以上あり、英語が得意な革新性の高い中堅社員」という文章で検索をかけると、それにマッチする社員が抽出されて、マッチした理由まで提示してくれます。
プラスアルファ・コンサルティングという会社の「タレントパレット」というサービスにおける事例です。こちらも同社の決算説明会資料から。
私自身も会社員だから半期毎に評価システムに目標を書き込んだり上司から評価が書き込まれたりしています。あれ、結構面倒なので、ついつい適当に書いてしまいがち。私は評価をする側にもなったことがあるのですが、雑に書かれたメンバーの目標設定にイラッとしたりしたこともあります🤣
人事評価のように、部署の状況やメンバーの立場によっても変わってしまい一律のシステムで対応しにくいものには、自然言語AIの良さが活かせるような気がします。
雑感
私自身はAIと友達になれるのがすごく楽しいので、ついついエンターテインメントコンテンツとしてLLMを活用する方向で考えてしまいがちなのですが。
実際に今回紹介した実用例を見ていると、むしろ、「その人とその状況にしか通用しないもの提供する」という事例が目に付きます。
エンタメ、メディア、コンテンツなどと呼ばれるものは、基本的にはキャラクターやシナリオといったものを、たくさんの人に楽しんでいただくように設計されています。例えば「AI○○君」というキャラクターを公開した場合、実際のLLMとのやりとりはユーザー毎に異なるものだったとしても、ユーザーは「AI○○君がこんな回答をしてきたw」とシェアしたりするでしょう。あくまでも「AI○○君」という概念は同じものとして全ユーザーに共有されていて、その表層の振る舞いの違いを楽しむというイメージでしょうか。
そして、AIキャラクター×コンテンツという領域では、ウハウハに儲かっているという話はまだ聞こえてきません。個別事例ではあるのかもしれませんが、エンタメ業界において新しいコンテンツの有り様として定着している印象はまだないです(私が不勉強なだけかもしれませんが)
一方で、今回紹介したような、顧客一人一人の発する自然言語への対応を効率化するというアプローチは、エンタメのような「たくさんの人に楽しんでもらう」考えとは真逆な気がします。実際にLLMの活用として実用に入ったのはこちらのアプローチだったのか、という印象があります。
もちろん、1年後にはまるで景色が変わっている可能性もあります。それこそが発展する技術の面白いところ。これからも、実用事例のウォッチはしていきたいところです。
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