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#1 始まりの異変『マイクラクエスト物語』

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一歩を踏み出したその先に

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よぉし! マップの上半分が埋まってきた。
スポーン地点の近くに村がいくつかあったし、今回のマイクラは好調な出だしだなぁ。

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近くに氷の柱があるバイオームもある!
ついてるついてる~♪

…んん、でもなんだか寒くなってきた。着こんでいるのに、こんなに寒いなんて。。 焚火をおこさなきゃ。

え…、あれ、でも、なんでゲームしているだけなのに、こんなに寒さを感じるのかな? お…おかしい…な。。

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ふっと、Eurekaの視界が真っ暗になった。

あ…体が…動かない。

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一瞬、一匹のドラゴンの苦しむ姿が心に突き刺さった。

今のは…エンダードラゴン…?

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誰もいないエンドの世界。
マイクラでおなじみのエンダーマンの姿もない、空っぽのエンドの世界が見えた。

どうしてこんなイメージが頭に…心に流れ込んでくるのだろう。
遠のく意識の中、エンダードラゴンの悲痛の声がEurekaの心をひどく揺さぶった。

エンダードラゴンが救いを求めている。。。?

#1-1 いつもの日常

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ん…んん…

あたたかな日差しにEurekaは目をこする。

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朝だ。

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眠い目を擦りながら、Eurekaは体を起こす。
毎日過ごしている、いつもの自分の部屋。

しゃれっ気もない屋根裏部屋の一室がEurekaの自室だった。

「あれ~? 昨日マイクラしながら寝ちゃったのかな~?」

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表に出ると、いつものように父親が呑気にギターを奏で、牧場や農場で働く従業員に元気を分けていた。

「おはよう」

朝の挨拶を交わし、Eurekaは動物たちの様子を確認しにいく。

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一番人懐こい羊のドールが、いつものように挨拶をしにきた。

「おはよう、ドール」

この子の毛刈りをしなくちゃなと、ふわふわでもこもこの頭を撫でる。

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すると、従業員のリリィが頼み事をしてきた。

なんでも、伯爵が来客用のパンプキンパイを作るため、うちのカボチャを欲しいと言っているようで、いま誰も手が離せないため、Eurekaに一番いいカボチャを伯爵のもとへ届けに行ってほしいそうだ。

「来客ってだれだろう」

伯爵と言えば、代々Eurekaの一族とも交流のある由緒ある貴族様で、色々な事業を拡げ、Eurekaが住む地域以外にもその恩恵を与えている素晴らしい御方だ。

そんな伯爵がもてなすほどの来客にEurekaは興味を抱いた。

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「これがいいかな」

Eurekaはカボチャをいくつか抱えて、伯爵家へと向かった。

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見えてきた。あれが伯爵の住む館だ。
いつ見ても立派で、溜息が出てしまう。

Eurekaは伯爵家に勤めるメイドや庭師たちに挨拶しながら、広い玄関の前に立った。

「ごめんください。Eurekaです。カボチャを届けに参りました」

#1-2 思いがけない異変

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いつもより暗めな館内に違和感を覚えたEureka。

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玄関から出てきたのは、いつもの元気のいいローラではなく、弓を構えたスケルトンだった。

スケルトンは迷いなくEurekaに矢を放ってくる。

Eurekaは驚いてカボチャを落としてしまった。

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Eurekaはゾンビや蜘蛛にも囲まれてしまい、逃げようにも逃げられない状況へと追い込まれた。

「そんな…、一体何が起こっているの!?」

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執拗に追いかけてくるゾンビやスケルトンを吹っ切り、Eurekaはなんとか、とある一室に逃げ込んだ。いつもは明るい室内は暗く、明るい声が響き渡っていた伯爵家は人外のモンスターのうめき声しか聞こえなくなっていた。

「みんな…どこへ行ったの!? 何が起きているの!?」

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メイド長と思われる格好をしたゾンビが1階を徘徊していた。

ひょっとして、この館内にいる人すべて、モンスターに姿を変えてしまったということ?

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Eurekaはしっかりと戸締りをして息をひそめた。
外を徘徊するモンスターたちの気配に絶体絶命を予感した。

「音を立てちゃだめ…。朝になるまでここで隠れてやりすごすんだ…!」

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朝日が見えると、Eurekaは一目散に伯爵家を後にした。

何が起きているのかわからないが、とにかく実家に帰らなくては…という一心で長い道のりをただ走った。

家族は大丈夫なのだろうか?

暗いところや夜にモンスターが湧くなんて、まるでマイクラの世界そのものじゃないか。

#1-3 ここは「いつもの」世界じゃない

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帰宅したEurekaは普段通りに過ごしているみんなを見て驚いた。

父親は相変わらずギターを弾き、祖父はいつものようにテラスでのんびりと過ごしていた。

「おじいちゃん、昨日…」

強張るEurekaを見て、祖父は優しく微笑みかけた。

「どうしたんだい? そんなに顔をこわばらせて…」
「昨日…伯爵様のところへカボチャを届けに行ったんだけど…。みんながいなくて、館中にゾンビとか、スケルトンとか、ううん、それこそクリーパーや魔女までいて、まるでモンスター屋敷になっていたよ!」

それを聞いて、祖父はきょとんとした。

「何を言っているんだい。あそこはもともと、モンスターの伯爵様じゃったろ?」

え!? Eurekaは脳天を金づちで叩かれたような衝撃を受けた。

「おじいちゃん、何を言っているの?」
「Eurekaこそ、何を言っているんだい。あそこの伯爵様がここら一帯を治めてくれているから、わしらはここでのんびりと牧場や農業ができているんじゃないか」

Eurekaは空想家なところがあるからなぁ…、と祖父は「ほほほほ」と優しく笑った。

空想家…って、それはどっちよ!?

混乱する頭で、Eurekaはいつもの光景に目を向けた。

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いつも村人や旅人が涼んでいる木の下に、陽の光を避けるスケルトンとゾンビの姿がそこにはあった。

「どういうこと…? わたしは…どこにいるというの?」

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心の中に小さく、誰もいないエンドの世界が蘇った。

すごく切なく寂しい気持ちに襲われ、Eurekaはそっと自分の胸に手を当てる。

わかることは、現実の世界がマイクラの世界のようになってしまったということ。昨日までしていたゲームの世界に、Eurekaは足を踏み入れてしまったのだ。


つづく

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