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第一章4節「建国」

夢小説『スタウロライト 十字石の追憶』

 かつて「旧大陸」は独裁政権に支配されていたが、天変地異を機に反乱が勃発し、政権は崩壊した。大陸は四つの「」に分裂し、それぞれ別々の国家に統治され、内戦が続いている。天変地異によって生じた未知のエネルギーは、この世界の物理法則を歪め、科学と神話が交錯する新時代に突入した。4島の一つである「東島」に迷い込んだ主人公「」は、そこで自分を救ってくれた仲間達と出逢い、彼女らと共に生きる事となった…。

※この作品には、自然災害などの描写が含まれます。

第一章4節「建国」

 この世界は、内なる世界の外側にあり、外なる世界の内側にある。。想像されし創造者は、その内部にある創造者を想像し、想像せし創造者も、その外部にある創造者に想像されたのである。。内外の世界を合一し得る者は、永遠の至福を認識する。私は一者であり、一者はあなたであり、あなたは私である。あなたは一者であり、一者は私であり、私はあなたである。

ミコトの日記

 あの天変地異と、それに続く内戦の結果、旧大陸を支配していた独裁政権「人民共和国」は、急速に崩壊へと向かった。他方、人民共和国への反乱を率いた英傑達は、各地に新国家を建国していった。


東島 東部平原

東島 東部平原

「…予は今ここに、新しき帝国の開闢かいびゃくを宣言します!」

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 瑞々しい素肌の上に、薄紫色のフリルを揺らし、金剛石ダイヤモンドのネックレスを輝かせながら、黄金色の王冠を戴き、玉座から世界に建国を宣する、長身の女性。この時より、東島の「東部帝国」に元首として君臨する事となった、キラヒメ女帝の麗しき姿である。外見の第一印象は、色気のある「お姫様」だが、一旦緩急あれば、戦闘で識属性を使いこなす数少ない人間と言われ、さすがは一国の君主である。彼女の御言葉と共に、私達の祖国である東部帝国の歴史が始まった。他方、北側の内陸部には、別の反乱軍によって「東部民主共和国」が建国され、広大な東部地方は、二つの国に分断された。これらの、東島の国々を総称して「東方連合」と呼ぶ。


西島

 同じ頃、温暖な西島では…。

「たった今、キラヒメ様が東島の首都を制圧し、帝位に就いたってニュースが入ったよ! 貧しい弱肉強食の時代は終わり、これからは少女の時代! 応援してくれたファンの皆、これからも私を…スミレちゃんを宜しくねっ!」

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 西島では、美少女アイドルのスミレが「西方帝国」を築き、その初代首相に就任した。グラビア雑誌などに載っていそうな、菫色のアイドル衣装を着飾ったリーダーの登場は、東島のキラヒメと共に、百花繚乱の新時代を象徴する出来事であった。外交的にも、スミレはキラヒメと仲が良く、西島と東部帝国は、東西で協力し合う共同の国家(二重帝国)を運営する事になった。


南島

 東島と西島の歴史が、新時代への希望を胸に始まったのとは対照的に、絶望へと至る不安の暗雲に覆われていたのが…南島であった。

「…一人でも多く、山地に逃げて! 今ならまだ間に合うわ! 次の津波が来る前に、早く!」

 4島の中で最も面積が狭く、温かい海に囲まれた南島は、自然に恵まれた海洋国家となるはずだった。しかし…あの天変地異では、その豊かな地形が逆にあだとなった。旧大陸分裂に伴う巨大な地震津波が、独立したばかりの南島を襲ったのである。島の南半分が水没・全壊し、僅かな希望だった東島との連絡橋も崩落し、南島は海中に孤立してしまった。その先に、島民達を待ち受けているのは…。

「これで私達は、本当に独りぼっちになってしまった。これから始まるのは…凄惨な内乱に、海賊の跋扈ばっこ。きっと地獄のような日々が、私達を待ち受けている…ならば、私は…!」

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 後に「南方共同体」の最高司令官を務める若き女傑、イシモト将軍は、爆風の中で黒い長髪を棚引かせながら、その紅き瞳に映る、眼前の剣と銃を手に取った。

「私は全てを失った、ゼロの存在…でも、だからこそ、何をも恐れずに突き進める。私は今日、この島を護る狩人となりましょう…!」


東島 南東半島

東島 南東半島

「お母様…!」

「母さん!」

 こうして大陸の各地で新時代が始まる頃、東島の南東海岸では、一つの命が終わろうとしていた。

「…悪魔による旧大陸の支配は、ようやく終わった。だが、これは序曲…今後、大いなる混沌が、この世界を覆うであろう。それでも、あなた方ならば…!」

 臨終に際してもなお、冷静沈着に娘達を諭す彼女こそが、ヒジリ・イサミ・メグミの母、ミコトである。独裁政権による迫害の中で、旧大陸を生き延びながら、決死の覚悟で3人の娘を産んだ。ミコトの祖先は、遙かなる神国の出身で、古代の預言者とも、中世の魔女とも伝承されている。受難の時代にあって禁欲主義的ストイックな純潔を貫いたミコトに、男性との交わりは無かったはずである。しかし、夢の中で一者に「あなたの子は世を救うであろう」と告げられた頃には、ヒジリ・イサミを受胎していた。その数年後には、最期の力でメグミを産み落とした。こうして、地上での人間としての天命を全うしたミコトは、その生涯に幕を閉じようとしていた。

「…唯一の心残りは、メグミに充分な愛を注ぐ時間が無かった事。ヒジリ・イサミ、どうかメグミを大切に育てて欲しい。私にできなかった事を、あなた方の手で…!」

「はい、もちろんです!」

「母さんがやり残した事は、私とヒジリ達で受け継ぐわ!」

「…ありがとう。間も無く私の肉体は、この星に、大地の土へとお還しする事になろう。私に限った事ではないが。だが、これは永遠の別れではない。全ての始まりにして、終わりのへと至る道…それは、あなた方の自我に、そう認識グノーシスにこそ約されている…」

 日没と共に、一つの生命が終わる。そして…ミコトが導いた未来は、ヒジリ・イサミ・メグミ達に託された。


 それから時が過ぎる中で、旧大陸の分裂が進み、四つの島国が形成されていった。そして、私達の知っている「世界地図」が描かれた。4島の中で最も面積が広い東島(東方連合)は、島内に複数の地方があり、国家も複数存在し、北から順に「同盟」「民主共和国」「帝国」「幕府」などが挙げられる。

東島(東方連合)を構成する地方と国々
東島(東方連合)を構成する地方と国々

 こうして、旧大陸の分裂後に出来た国家を全て数えると、北島・南島・西島の3か国と、東島(東方連合)の4か国がある。このうち、東島の「東部帝国」は西島(西方帝国)と連合しているので、合わせて一国として数える。すると、この世界には六つの国家があるという事になる。そして、それらの国々は異なる政治文化を持ち、各々の国旗(イメージカラーなど)を定めて今に至る。

世界の諸地域にある国家とその特徴
世界の諸地域にある国家とその特徴

東部台地 貝塚村

東部台地 貝塚村

 そして、現在。

「…これが、私達の母…ミコトお母様の遺影だよ」

 仏壇に十字架を置いたような、和洋折衷の不思議な祭具が安置されている。メグミに促されて覗くと、そこには…ヒジリの信仰、イサミの希望、そしてメグミの愛を兼ね備えたような、強く優しい顔が写されていた。その瞳は、まるで今も生きているかのように、像の前の私を鋭く見返している。

 ある日の自宅。メグミが私に、今は亡きミコトという人物の事を話してくれた。話を聴く限り、普通の人間ではないようだ。そして、そんなミコトの子として生まれ育ったヒジリ・イサミ・メグミも、きっと…。

「私は、母様や姉様達には届かないかも知れないけど、それでも…あなたと一緒に、少しでも天下のお役に立ちたい。そして…天国の母様に、神様に喜んで頂けるような、幸せな世界で、あなたと共に生きたいと願っているよ!」

 そう言ってメグミは合掌し、祭具に祈りを捧げる。彼女が信じた未来を、私達が守らねばならない…そう感じる一日だった。そんな事を思っていたら、もう遅い時間。今日もメグミと一緒の寝室で、お揃いの寝具に包まれて、私達は眼を瞑った。

「…はっきり言っておく。私は世の終わりまで、あなた方と共にある…」


第一章4話 解説

ミコト ヒジリ・イサミ・メグミの母。偉大なる預言者とも、忌まわしき魔女とも言われる、遠国の一族の末裔。優れた宗教哲学者で、その神秘的な思想と教団は、旧大陸の独裁政権に警戒され迫害を受けた。奇跡を起こす力を持っていたらしく、いわゆる「識」属性を習得していた可能性もある。宇宙の根源である「一者」という概念存在を認識する事で、永遠の生命を実証せんとしていた。

自己紹介

 東京大森・蒲田(東京都 大田区)から、デジタルアートセンター(DAC)横浜に通っているアキラと申します。大学などで探究した学びを、ライトノベルやアニメ風ゲームで表現する「地球学(地理学文芸)作家」とでも言うべき活動をライフワークにしています。

 小学生の時、友達と一緒に家庭用ゲーム機で遊ぶ「ゲーム同好会」を主催していました。中学校では社会科・理科が好きで、科学部長を務めました。高校時代には世界史・倫理や地理・地学を熱心に学び、地学部長などを務め、また萌え系サブカルチャーへの興味を深めました。

 やがて「この世界(地球・宇宙)の美しさを学び、それを他者に表現したい」というアイデンティティーを固めた私は、大学に入り、文系・理系の壁を越えて「地球」を探究できる地理学を主に学び、サークル活動にも積極的に携わりました。しかし、自閉症や強迫神経症との闘病に苦しみ、私自身の努力不足と、それでも「もっと学びたい」という気持ちもあって、留年・転校を繰り返す事になりました。

 累計3校もの大学を渡り歩く中で、難しい論文を書き続ける「学者系」よりも、芸術的な作品を創る「作家系」の学業に取り組みたいと思うようになりました。そして三つ目の大学において、これまで探究してきた歴史地理学や天文地学の智識を、ライトノベルや動画という文芸作品の形式で表現した「卒業制作」を創り、遂に2021(令和三)年、念願の大学卒業を叶え、その証に「共生科学士」という学位を授かる事ができました!

 就労支援事業所での職業訓練を志望し、2023(令和五)年1月から、ここDAC横浜に通わせて頂く事となりました。自分の好きな特技、即ち文筆を中心とする仕事に取り組みながら就職を目指しております。いずれ「DACに入ったお蔭で、このような形で他者・社会の役に立つ事ができた。その経験に基づき、自分は今、充実した自立生活を送っている」と、胸を張って答えられるようにならねばと思います。宜しくお願い申し上げます。

2023(令和五)年4月10日(月曜)
アキラ(デジタルアートセンター横浜) 


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